各種ヒータに対し,APRの定格電流を選定する際の計算方法を教えてください
ヒータは温度特性から分類すると,(1)合金系およびカーボン系等(2)純金属系(3)炭化けい素系の3 つに大別できます。この3つに分けて計算例を紹介します。
1) 合金系およびカーボン系等
合金系およびカーボン系等は、温度変化に伴う抵抗値変化分が10%以下と小さいため、すべてのAPRが適用できます。
図Aに3φAPRを使用した代表例を紹介します。

図A に示す回路で負荷電流Imax〈最大値〉を計算すると次のようになります。

ただし,
- A:ヒータ1 本当りの定格容量〔W〕
- B:ヒータの一相分総数〔本〕
- C:三相分
- D:ヒータ一相に加える電圧〔V〕
- E:線電流換算値
- F:電源電圧変動+10%換算値
- G:ヒータの抵抗値の温度変化分+10%換算値
- H:ヒータの製作誤差+10%換算値 ※ 1
この計算結果より,APR の選定は3 φ 200V,250A となります。
この回路で重要なことは定格入力電圧時に,APR 出力電圧を160V〈80V × 2〉におさえることです。
※ 1 ヒータの製作誤差はJIS C2520-1975〈電熱線および帯……ニクロム,鉄クロム〉に規定されている「線の導体抵抗許容差」によると,ヒータの線径もしくは帯の幅により± 5%~± 12%の許容範囲となっています。
2)純金属系
純金属系は,温度変化に伴う抵抗値変化分が数倍~十数倍と大きく,一般にはAPR-V シリーズの制御方式A 形およびB 形を使用してCLR 制御もしくはACR 制御を行います。図B にCLR 制御を使用した代表例を紹介します。

図B に示す回路で,まず変圧器の二次電流を求めます。

ただし,
- A:ヒータ1 本当りの定格容量〔W〕
- B:ヒータの総数〔本〕
- C:ヒータの定格電圧〔V〕
次に変圧器一次電流I1 をもとめます。

ただし,
- D:変圧器二次電流I2
- E:変圧比の逆数
この結果により,APR の選定は1 φ,200V,100A となります。CLR 設定値は83A に設定します。CLR 制御〈もしくはACR 制御〉による特長として,合金系およびカーボン系の計算例のように電源電圧変動,ヒータの温度変化による抵抗変化分およびヒータの製作誤差を考慮する必要のないことです。
3)炭化けい素系
炭化けい素は,温度変化に伴う抵抗値変化分が3 倍くらいあり,経年変化に伴う抵抗値の増加が3 ~ 4 倍〈初期値に比べ〉になります。炭化けい素の場合,APR-V シリーズで制御方法T 形、A 形、D 形を使用する方法があります。
(1)制御方式T 形を使用した例
図C は負荷変圧器なしで直接ヒータを制御する例です。

炭化けい素の温度特性は図D に示すように初期特性①が経年変化により②のように変化します。初期特性①よりImax 値を計算すると次のようになります。


ただし,
- A:ヒータ一本当りの定格容量〔W〕
- B:ヒータの総数〔本〕
- C:ヒータに加える電圧〔V〕
- D:電源電圧変動+10%換算値
- E:ヒータの抵抗値の温度変化分+10%換算値 ※ 1
- F:ヒータの製作誤差+15%換算値
※ 1 ヒータの定格温度1000℃時の抵抗率と数百℃時の抵抗率〈最小値〉との倍率
この計算結果より,APR の選定は1 φ,200V,350A となります。この回路でAPR の出力電圧調整値は初期時に100V〈定格入力電圧時〉に設定し,経年変化が進むにつれ設定値を上げていきます。たとえば初期値の3 倍に経年変化したとき,設定値は100V × 3 ≒ 173V となります。

ただし,
- P:定格電力
- E1:初期時の出力電圧
- E3:3 倍経年変化時の出力電圧
- R1:初期時の抵抗値
- R3:3 倍経年変化時の抵抗値
(2)制御方式A 形を使用した例
図C にCLR 制御を付加すると負荷電流I0 は次のようになります。

ただし,
- A:ヒータ一本当りの定格容量〔W〕
- B:ヒータの総数〔本〕
- C:ヒータに加える電圧〔V〕
この計算結果より,APR の選定は1 φ,200V,250A となります。CLR 設定値は200A に設定します。経年変化が進むにつれ,設定値を下げていきます。
たとえば初期値の3 倍に経年変化したとき,設定値は200A/ 3 ≒ 115A となります。

ただし,
- P:定格電力
- I1 :初期時の負荷電流
- I3 :3 倍経年変化時の負荷電流
- R1:初期時の抵抗値
- R3:3 倍経年変化時の抵抗値
(3)制御方式D 形を使用した例
(2)項と同様となりますが、ただし経年変化に伴う設定値変更は不要となります。