鋳造工場の基礎知識
電気加熱の種類とメリット

電気加熱とは

電気加熱のイメージ

電気加熱は電気エネルギーを利用して物体を加熱する方法です。この電気エネルギーを熱に変換して利用する、 いわゆる電気加熱技術は、100年以上の長い歴史があり、現代社会の多くの場面で広く活用されています。

最も身近な例としては、 家庭用の暖房器具や調理器具などが代表的な製品であり、 現在の私たちの生活に欠かせないものとなっています。

一方で、 素材生産、機械加工、食品加工、廃棄物処理など産業全般にわたる分野では、さまざまな形態の加熱および溶解システムが導入されています。

電気加熱の特長

電気加熱は他の加熱方式と比較して、クリーンな熱源であり、高温加熱・ 急速加熱や局部加熱が可能であり、加熱効率が高く、加熱制御が容易であるという特長があります。

ですので、産業分野では加熱対象や加熱目的、使用場所などによって自由度の高い加熱方式を採用することができます。

電気加熱の種類

電気加熱の種類のイメージ

電気加熱方式には抵抗加熱、アーク加熱、誘導加熱、誘電加熱、赤外加熱、マイクロ波加熱、アークプラズマ加熱、ヒートポンプ加熱などがあります。

例えば電気炉の主な電気加熱方式には以下の方式があります。

抵抗加熱

導電性の物質に電流を流し、物質の抵抗によって発生する熱(ジュール熱)を利用します。

誘導加熱

高周波の電磁界を使用して物体を加熱する方法です。誘導加熱は非常に速く効率的であり、制御が容易であるという特長があります。対応する電気炉としては、低周波誘導炉、高周波誘導炉などがあります。

アーク加熱

アーク加熱では、電流の放電現象(電気アーク)を利用して物体を加熱します。アーク加熱は非常に高温を発生させることができるため、特に高温が必要な場合に使用されます。対応する電気炉としては、製鋼用アーク炉、真空アーク炉などがあります。

電気加熱のデメリット

電気加熱のデメリットは、従来の加熱方式と比較して電力コストと電力供給の安定化です。

例えば、電気加熱により長時間の運転や加熱により電力コストが増加する可能性があります。

また大量の電気を安定的に利用するためには十分な機器・設備を整備する必要があり、これにより初期の設備投資が高くなる可能性があります。

電気加熱のメリット

電気加熱の用途は多岐に渡っており、生産性向上・環境保全・安全などに結びつき、生産革新に大きく役立つ技術です。特に加熱速度の速さと制御性の良さから、様々な加熱工程での生産性向上が図れます。

材料の直接発熱、そして必要な部分だけの加熱が可能なことから、エネルギー消費量を最小限に抑えます。また、燃焼を伴わない加熱方式なので、環境改善と安全性向上にも貢献します。

省エネ化

電気加熱は効率的なエネルギー変換が可能です。燃焼に比べて熱ロスが少なく、エネルギーの浪費を軽減することができます。省エネ効果により、運営コストを削減することができます。

生産性向上

電気加熱は高速で加熱が可能であり、迅速な溶解や保温が行えます。素早く適切な温度に到達することで、生産サイクルを短縮し、生産性を向上させることができます。

環境対策

電気加熱は燃料を燃やさずに行われるため、燃焼による排出物や煙が発生しません。これにより大気汚染のリスクを低減し、環境への負荷を軽減することができます。

高品質化

電気加熱は正確な温度制御が可能です。安定した加熱プロセスにより、均一な品質の製品を生産することができます。温度制御の精度が高いため、製品品質を保持することができます。

安全性

電気加熱は燃焼に比べて火災のリスクが低く、作業環境の安全性を向上させます。また、電気加熱装置は過熱や漏電のリスクを最小限に抑えるため、作業者の安全を確保することができます。

電気加熱のメリットのまとめ
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