電子行政ソリューション コラム
自治体におけるAI活用 先行導入事例に見るアプローチの近道

自治体のRPA/AI活用が加速している理由(背景)

労働人口が減り続けるなか、昨今の好景気による有効求人倍率高止まりのあおりを受け、採用難・人手不足に直面する自治体。さらに“働き方改革”による残業抑制が追い打ちをかける形で、今、あらゆる現場で業務効率化が最重要課題となっている。同時に、24時間×365日のサービス提供や外国語対応など新たなニーズへの対応や、増え続ける高齢者向け行政サービスの拡充など、住民サービスの質の向上や転換が求められている。各自治体には、これら新たな課題を限られたリソースでいかに実現するか、その手腕が問われている。
こうしたなか注目を集めているのが、RPAやAIといった新しいテクノロジーだ。RPAやAIで自動化できる業務はできるだけまかせて、限られた人員はヒトでなければできないことに投入していく…というのが、自治体の間でも既定路線となってきている。2018年9月に総務省 自治行政局 行政経営支援室がまとめたレポートでも、「自治体の経営資源が制約されるなか、法令に基づく公共サービスを的確に実施するためには、破壊的技術(AIやロボティクス、ブロックチェーンなど)を積極的に活用して、自動化・省力化を図り、より少ない職員で効率的に処理する体制の構築が欠かせない」と結論づけており、現在、国が主導する形で全国の自治体で実証実験や先行導入が進んでいる。

自治体におけるAI先行導入事例

人に代わって業務をおこなって(自動化して)くれる点ではRPAもAIも同じ。しかし、手順の決まった定型業務を自動化するだけのRPAに対し、膨大なデータから傾向を学ぶことで人と同じように一定の判断ができるという点はAIの方が高度だ。その分、広範囲な業務領域において自動化を実現し得る。しかしながら、ディープラーニングに関する知識やデータサイエンティストとしての視点が少なからず求められることもあり、多くの自治体で成果を出しつつあるRPAに比べて、AI活用に取り組んでいる自治体は一部の先進的事例にとどまる。
総務省「スマート自治体研究会」がまとめた資料「地方自治体におけるAI・ロボティクスの活用事例(2019年3月)」では、下記16項目について、17自治体におけるAIの先行導入事例が紹介されている。

「画像分析」や「IoTセンサ」を利用した複雑な(高度な)AIも散見されるが、◎印の6つの項目はAIチャットボット活用事例となっている。一部、多言語対応のものも含まれるが、AIの先行導入事例の1/3強をチャットボットが占めている。
その理由としては、チャットボットなら24時間×365日の対応が可能で、人による回答のバラつきがなくなり、サービス向上に直結すること。また、住民の問い合わせ応対業務については、「ExcelでQ&Aをまとめるなど、応対ノウハウを何らかの形でデータ化しているケースもあり、学習データの収集から始める必要がないなどの点がAI活用対象としては取り組みやすい」といった理由・背景が考えられる。

チャットボット導入を考える自治体が直面する課題

チャットボットは、自治体がAI活用を検討する上で、比較的アプローチしやすいとはいえ、難易度はかなり高い。住民からの問い合わせに対して適切な回答を表示するには、用意される1つの回答(自治体が提供したい情報)に対し、いくつもの質問パターンを想定して用意する必要がある。これが不十分だと、回答が表示されなかったり(電話での問い合わせに誘導されるなど)、まったく関係のない役に立たない回答が表示されたりで、実用に耐えないものになってしまう可能性がでてくる。
このため、AI活用で一歩先を行く民間企業では、AIや機械学習の知見を有するデータサイエンティストの育成に力を注いでいるが、自治体で、そのような人材を確保することは難易度が高い。さらに、すでに世に出ているAIシステムの多くは非常に高額であり、新しい技術分野での事例も少なく、費用対効果がつかめないため、なかなか踏み切れないというのが現実だ。

2ステップで、その日からチャットボット利用が可能なツールも登場

自治体にとって難易度/コストの両面でハードルの高いAIだが、こうした常識を覆すようなソリューション・サービスも登場している。関西を地盤にビジネスを展開するDTS WESTが、LGWAN-ASPサービスとして提供する『kotosora for LGWAN』もその1つだ。FAQに特化したクラウド型ソリューションで、LGWAN-ASPで初めてAIチャットボットとしてサービス提供が開始されたFAQソリューションだ。
導入は、「1問1答形式でデータを取り込む」「類義語・同義語を正規化辞書に登録する」の2ステップだけ。すでに“問い合わせの多いQ&A”をまとめたExcelデータなどがあれば、極端な話、その日からチャットボットを使い始めることが可能だ。さらに、「母子健康手帳」というキーワードに対し、「母子手帳」などの略称や類義語を追加登録することで、ヒット率を上げていく運用も可能だ。
このほか多言語にも対応し、オンプレミスのDBとの連携も可能な『kotosora for LGWAN』だが、初期費用55万円、月額27.7万円と比較的安価な料金(Q&A150行まで、すべて税別)から利用できる。チャットボット導入で浮いたリソースを、政策立案など “人でなければできないコア業務”に集中投入したい自治体にとっては、十分に検討の余地がありそうだ。

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