学ぶ・知る
SCCRの基礎的な情報や正しい選定方法等、
現場で役に立つ情報をご用意しております。
SCCRって
そもそも何?
SCCRって何?
「SCCR」はShort Circuit Current Rateの略で、短絡事故などが起きた際に流れる事故電流に装置や盤が耐えられる最大電流値を指します。日本産業規格であるJIS B9960-1では短絡遮断電流定格と翻訳されています。
どうしてSCCRへの対応が必要なの?
米国の電気設備の工事基準であるNECにて2005年にSCCRに表示規定が追加され、さらに一般産業用機械の電気規格であるNFPA79にも同様な改訂がなされ、制御盤の銘板にSCCR値を記載することが義務となったからです。
NFPA79(2021 Edition)のA3.3.99にSCCRの算出方法はUL508AのSB項を参照するよう記載されており、SCCR値を算出するためにはUL508Aを確認する必要があります。
▲米国の法律・基準と製品規格の関係図(2023年9月現在)
米国だけでなく、国際規格IECのIEC60204-1でも2016年の改定で追加され、強化されました。
国際規格の改訂に倣い、欧州規格EN60204-1には2018年、日本規格JIS B9960-1や中国規格GB5226.1には2019年にSCCRの規定が新たに追加されました。
どうしてSCCRを規定する必要があったの?
短絡事故が発生した場合に制御盤からの火災を防止するためです。
制御盤にSCCR値を表示することで、制御盤の製造者と現場への据付け者が異なる場合や、制御盤を移設する際にも、現場で容易に確認できます。NEC409.22ではSCCRに関して、制御盤が設置される場所の短絡電流値を計算し、その計算した日付と共に文書化して、設置者、保守メンテ者、監査者が閲覧できるようにすることエンドユーザに求めています。
SCCRに対応していないとどうなるの?
盤並びに装置に通電することができません。
例えばSCCR5kAの制御盤は現地で推定される事故電流が11.5kAと計算された場合、設置ができません。
そのため、SCCRが11.5kA以上の盤に造り変える必要があります。メーカ側には装置(盤)が稼働されないとして、エンドユーザより損害金額を請求されるリスクがあります。
どのように検討したらいいの?
エンドユーザより要求されるSCCR値を確認し、それにあったSCCR値を持つ機器を選定し、盤設計することが必要です。産業盤規格書UL508Aの付属書SB4にSCCRの詳細や計算方法が記載されています。
盤のSCCRの基本的な決め方は、主回路に接続される機器単体がもつSCCRの内、もっとも最小値が適用されます。そのため盤を設計するに当たっては、SCCRをもつ機器を把握しておく必要があります。
下記の例では主回路に接続されている各機器の最も小さい5kAがSCCRとして表示されるため、制御盤のSCCRは5kAと表示されます。
▲SCCR値の決定についての例
本SCCRポータルではメーカの垣根を越え、SCCR値をもつ製品を紹介さらに検索機能を提供しており、必要なSCCR値を持つ製品や保護機器との組み合わせをすぐに探すことが可能です。
豆知識
UL508Aは2018年に大幅な改訂が行われ、Edition 3が発行され、その後も数回改訂されております。
SCCRについては基本的な決め方の変更はありませんが、SCCRの対象となる機器が追加されております。
盤設計をしてから数年経過している場合は、SCCR対象機器が更新されていないかの確認をお勧めします。
SCCR選定のおさえたい
5つのステップ
盤のSCCR対応は、産業盤規格UL508A対応の一部であり、
専門性をもつ電気設計者の方にしか、読み解きにくい内容です。
初めて対応される方は、SCCRに適合した盤内機器の選定について、お困りのことではないでしょうか。
ここでは要求されるSCCRを適合した盤を検討するためのおさえるべき5つの手順を簡単に解説します。
何からやってよいかお悩みの設計者様は是非ともご覧ください。
SCCR選定のおさえたい
5つのステップ
-
①UL品・UL電線に
置き換える -
②要求されるSCCR値を
確認する -
③SCCRに適合した
正しい製品を選定する -
④よく間違えられる
ポイントを確認する -
⑤困った時は
お問合せ窓口へ
1.UL品・UL電線に置き換える
まずは製品をUL製品に置き換えてみましょう。
標準でUL規格を取得している製品もございますが、一部の製品はJIS/IEC適合品と別ラインアップになっています。
と言うのも絶縁距離などの安全要求が高いためです。
例えば、弊社ブレーカのG-TwinシリーズにはUL登録品というラインアップがあり、端子カバーが標準装備の仕様になっています。
一般的にUL品に置き換えると機器の性能アップや製品サイズが大きくなってしまうことが多いです。そのため、見積時との価格や盤サイズの乖離が発生し、問題となってしまう可能性もあり、見積前の検討をお勧めします。
SCCRの注意点は次項に記載しますが、それ以外にも使用する製品がUL規格に適合するための使用条件があります。
例えば、配線サイズ・本数の規定や設置場所の条件などは、製品の取扱説明書等に記載されている条件に従う必要がありますので、製品資料で必ず確認をしてください。
2.要求されるSCCR値を確認しよう
SCCRはエンドユーザからの情報がないと決定できません。
と言うのも“この値にしなければならない”と定められているわけではなく、設置される場所で短絡事故が発生した場合に流れる故障電流(=推定短絡電流、この電流は、配電用のトランス容量、その短絡インピーダンス及び配線の太さ、長さなどで決まります)に耐えられるSCCRとする必要があります。
そのためエンドユーザより〇kAのSCCRをもつ盤を設計してほしいと指定を受けた上で、盤仕様を検討しなくてはなりません。
3.SCCRに適合した正しい製品を選定する
UL品=SCCRを持つ製品と認識しているお客様もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、UL品=SCCR値を持つ製品であるとは言えません。
よく間違えられますので、この機会にぜひ知っていただきたいポイントです。
UL508AのSB4.2.2に各機器のSCCRを決定する方法が記載されており、知って欲しい3つの方法を紹介します。
「制御盤に表示するSCCR値は、各動力機器のSCCRの最も小さい値であること。」と定められています。
- ブレーカやヒューズなど製品自体が短絡電流定格(定格遮断容量又は遮断電流と記載されている場合もあります)をもつ製品を適用する
- 電磁開閉器や端子台など保護機器(ブレーカやヒューズ)と組み合わせ、短絡電流定格をもつ製品を適用する
- 1,2のような情報がない場合は、表SB4.1で定められた製品毎の標準SCCRから引用する
それでは2.の電磁接触器の例を見てみましょう。
▲2.の電磁接触器の例
製品銘板にCB(サーキットブレーカ)と組み合わせて最大25kAのSCCRをもつ製品であることが読み解けます。
本SCCRポータルでは、1,2の様々な機器のSCCRを掲載しておりますので、SCCRを持つ製品を選定する際に、ご活用下さい。
尚、UL品であっても、SCCRの記載がない製品は、3の標準SCCR値を適用することができます。
一部抜粋して、SB4.1表を紹介します。
※なお2022年7月時点の情報となりますので、最新情報は産業盤規格書UL508Aを参照ください。
製品 | 電気仕様 | SCCR値 |
---|---|---|
バスバー、銅バー | 10kA | |
ブレーカ(地絡漏電遮断器を含む) | 5kA | |
ヒューズ | 10kA | |
ヒューズホルダー | 10kA | |
モータコントローラー製品 | ||
電磁接触器 電磁開閉器 インバータ サーボコントローラ など |
0~50A(0~37.3kW) 51~200A(38~149kW) 201~400A(150~298kW) 401~600A(299~447kW) 601~900A(448~681kW) |
5kA 10kA 18kA 30kA 42kA |
端子台 | 10kA | |
ケーブルコネクタ | 10kA | |
ノイズフィルタ | 0~100A 100A~ |
5kA 10kA |
※2022年7月時点の情報
4.よく間違えられるポイントを確認する
国際規格では、主回路と制御回路を明確に分けており、使用できる電気機器に制限があります。
そのため今まで使用していた機器をUL品に置き換えたとしてもそのまま使用できない可能性があります。
よく間違えられるポイントを確認して、機器選定の参考としてください。
- 制御回路の電圧はAC120V以下(DC250V以下)にしなければならない。
- 主回路にリレーなどの制御機器を使用してはいけない。
- 1端子1分岐が原則で、1つの保護機器を複数分岐してはいけない。
- サーキットプロテクタを主回路で使用してはいけない。
この他、間違ってはいけないポイント、よく問い合わせを受けるポイントは関連コンテンツにまとめておりますので、冊子(知っておくべきSCCR Q&Aガイド)でご覧ください。
5.困った時はお問合せ窓口へ
上記の手順を踏んでもNFPA79で要求されている「推定短絡電流が制御盤のSCCRの値を超えないこと」という項目に対応するのは簡単ではありません。
そこで富士電機機器制御では、SCCRの相談窓口を設けており、技術員による技術サポートを提供しています。
窓口にご相談いただければSCCRの値を大きく表示する方法をご提案いたします。
その際、電気回路図(シーケンス図)などを提供いただけましたら、目標のSCCRを満足する機器選定がされているか、NFPA 79を満足する回路構成となっているかなど、メールやオンライン会議、勉強会の開催など、要望に応じて対応しております。
下記SCCR問い合わせ窓口や弊社営業担当へ気軽にお問合せください。
SCCRお問い合わせ窓口はこちら
※なお技術サポートでは、弊社が関係する電気器具に関する相談のみ承っております。そのため盤筐体やノイズ対策などお答えできないこともありますので、予めご了承ください。また電気回路図では判断できない配線サイズのチェックや絶縁距離などについても、お答えできないこともありますので、予めご了承ください。
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