電子行政ソリューション コラム
成功事例に学ぶ 自治体のテレワーク移行に欠かせない“5つのピース”

市区町村のテレワーク導入率は、わずか3%

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、企業でテレワークの導入が急速に進んだが、行政機関では、特に市区町村において導入がなかなか進まない状況が総務省の調査結果から見えてきた。
同調査によれば、2020年3月26日時点でテレワークを導入している団体は、政令指定都市を除く1721市区町村のうち、わずか51団体で、実施率にして3%弱に留まった。緊急事態宣言前ではあるが、1日の新規感染者数が1000人に達しようとし、社会全体で緊張感が高まっていた時期になる。3%に留まった要因としては、市区町村が提供する行政サービスの多くが窓口業務であり、住民の個人情報を扱うことから、テレワーク移行へのハードルは企業に比べて高いことが上げられる。
この調査から10日ほどして、約1ヵ月間におよぶ緊急事態宣言が発出(4月7日)され、自治体においてもテレワーク導入が進んだ。しかし、在宅でできる業務が限られることもあり、緊急事態宣言が解除されると、入庁して仕事をするスタイルに戻ってしまった自治体も少なくなかった。

コロナ禍以前のとりくみが功を奏し、テレワーク拡大を実現した自治体も

テレワーク導入率が低迷している市区町村に対し、都道府県は、94%に該当する44団体が導入済みと回答している。もちろん、導入済みの都道府県庁においても、全職員一斉にテレワークへ移行できるわけはなく、部署ごとの事情に応じて交代しながらなど、実施は一定割合に限られる。
こうしたなか、テレワークの導入対象を全職員に拡大するなどした結果、2020年9月の時点でテレワークを実施した職員が74%※に達した自治体も。本自治体では以前より、首長が中心となって、全職員へのモバイルPC導入や、庁内システムにセキュアに接続できるVPNネットワークの構築、運用面の制度設計・ルール整備などを進め、在宅勤務を含むテレワークの浸透・定着に積極的に取り組んできた。全職員を対象としたモバイルPCの導入も順次進められてきており、緊急事態宣言下でのテレワークの拡大にもスムーズに対応している。
さらに、テレワークでの生産性向上に貢献しているのが、2018年に導入した富士電機の文書管理システム「e-自治体 文書管理システム」だ。文書の作成・起案から施行~保存~廃棄のライフサイクル全体を、ペーパーレスで管理でき、電子決裁機能の搭載により、効率的かつ円滑な決裁を実現する。これによって、決裁者は、テレワークにおいても回議を止めることなく決裁が可能になる。この文書管理システムを利用することで、テレワークでも実施可能な業務範囲の拡大と業務効率の向上につながっているという。
このほか、テレワークで住民サービスのレベルが低下しないよう、自庁にかかってきた電話のテレワーク中職員への転送や、自宅から代表番号で外部に架電できるようにしている。また、職員がリモートで会議に参加できるようZoomを導入するなど、テレワークしやすい環境の整備も進めている。

(注)

非常勤を含む知事部局のテレワーク実施職員の割合

成功事例に学ぶ、自治体のテレワーク導入に不可欠な「5つのピース」

これからテレワークを導入しようとする市区町村にとって、前段のケースから学ぶべき点は多い。どれか1つ欠けてもうまくいかない…という意味で、5つのピースにまとめたので参考にしていただきたい。

1.持ち出し可能な業務端末

地方自治体においては、行政機関専用のネットワークであるLG-WAN接続系とインターネット接続系が完全に分離されている。業務端末は、LG-WAN系に置かれていることが多いが、テレワークを実現する上では、この業務端末を庁外に持ち出す必要がある。庁内で利用することが前提なので、デスクトップ型PCを導入しているケースも多いと思われるが、可搬性にすぐれるモバイルPCなどにリプレイスするために、「どの部署の、どの業務からはじめるか、予算をどうするか」など、計画的なアプローチが求められる。

2.ネットワークやエンドポイントのセキュリティ

業務端末を庁外に持ち出すとなると、庁内システムにアクセスするためのセキュアなネットワーク環境も欠かせない。UTM製品を本庁側に導入して、モバイルVPN機能を利用するなどの方策が考えられるが、こちらも少なからずコストが発生するので、モバイルPC導入とあわせて考える必要がある。加えて、持ち運びに際しての紛失防止など、エンドポイントの対策も忘れないようにしたい。

3.業務範囲を拡大する文書管理や電子決裁の仕組み

前段の事例でも触れたが、持ち出した業務端末で、どれだけの業務がこなせるかは、テレワーク導入の成否を左右する要素の1つだ。公文書を扱う部署の場合は、作成・起案から保管・廃棄までを、ペーパーレス(印鑑レス)でおこなえる文書管理システムの導入は効果的だ。さらに、電子決裁システムがあれば、起案者はもちろん、決裁者も場所を問わず決裁でき、テレワーク拡大の可能性を拡げてくれる。

4.その他IT活用

テレワーク中の職員と入庁職員のコミュニケーションを円滑に進める上で、ZoomなどのWeb会議ツールは欠かせない。このほか、富士電機の「e-自治体 庶務事務システム」のように、労務・勤怠管理や手当・旅費請求申請などを実現するLGWAN-ASPを導入すれば、紙での申請・管理から解放されてテレワークを推進しやすくなる。こうした便利なクラウド型サービスは、積極的に導入・活用を検討すべきだ。

5.制度設計とリーダーシップ

テレワークは、従来にない勤務形態となるため、新たなルールの策定や諸制度の変更が発生する。この点については、職員の意見を聞きつつ、時間をかけて制度設計を進める必要がある。トップが率先垂範する積極的な姿勢は、庁内をまとめていく推進力になり、テレワーク定着への鍵となるだろう。

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