UPSバッテリの重要性
UPSのバッテリは、電力会社等からの電力供給が無くなった(停電)時、負荷に送る電気エネルギーを貯めておくものです。いざという時のため、バッテリを常に使用できる状態に維持管理する事は非常に重要です。
- 寿命になったバッテリを使用していると、UPS装置が正常に動作していても停電の時に負荷へ電源供給ができません。
- UPSに使用されるバッテリの品質は、UPSから電源供給されているコンピュータなどの運用品質に大きく影響します。それら重要負荷の運用品質を低下させないためにUPSのバッテリの品質維持管理を行う事は必要不可欠です。
- 重要設備に使用されているUPSは、早めにバッテリ交換を行ってください。寿命期のバッテリは、徐々に容量が低下するのではなく、突然に使用できなくなる特性があります。
バッテリの種類と寿命
制御弁式船畜電池 | |||
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MSE型 | UPS専用型 | ||
種類 | MSE | 長寿命MSE | 高率放電用(FVH) |
容量(Ah) | 50~3000 | 50~3000 | 100,150:(モノブロックタイプ:mFVH) 50,200,300(セルタイプ:FVH) |
期待寿命* | 5~7年 | 9~12年 | 7~9年 |
日常保守 | 外形、周囲温度、測定電圧などの管理 | 外形、周囲温度、測定電圧などの管理 | 外形、周囲温度、測定電圧などの管理 |
備考 | 従来は大容量UPSに運用 | ライフサイクルコストで有利 | MSEに比べ寸法で有利 (省スペース化を実現) |
- * 周囲温度25℃、放電回数は数回、2.0C10A放電時での年数です。(電池工業会 SBAG0304)
- * バッテリの種類により期待寿命の算出条件が異なります。
- バッテリ寿命とは、容量が定格の80%以下になったときを言います。
(M-UPSに使用しているバッテリやFPX形バッテリ等の一部小型制御弁式バッテリは、50%以下を寿命としている場合があります。) - 長寿命型バッテリの寿命には13~15年程度(設置環境や放電条件により異なります)とも言われるものがあります。このようなバッテリの交換計画にあたってはUPS本体の寿命も勘案し、「バッテリ更新をする」のか、または「UPSシステムリニューアルする」のかを充分に検討する事をお勧めします。
バッテリの寿命診断方法
バッテリ寿命の診断方法は大きく3種類あります。
- バッテリの内部抵抗を測定して規格以内であることを確認する方法。(内部抵抗計方式)
- 放電用模擬負荷装置を用いてバッテリの放電を行い、規定以上の容量があるかを診断する方法。(模擬負荷放電方式)
- BSC診断*でセル全数のバッテリ放電試験を行い診断する方法。(BSC診断方式)
* 富士電機の独自診断方法です(特許取得済み)
下表に各々の詳細を記します。
種類 | 回路図 |
概要 | 特徴 |
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内部抵抗計方式 | ![]() |
バッテリに1kHz,数十mA程度の微小電流を流して内部抵抗に生じる電圧降下を測定し、内部抵抗に換算して診断する方式。 | 微細な抵抗値を測定するため、測定点の接触抵抗の影響を受けやすい。 |
模擬負荷放電方式 | ![]() |
放電用模擬負荷を直接バッテリに接続して、1時間~10時間の間でバッテリを直接放電させて総電圧を測定し、電圧低下度を診断する方法(JISに基づく方法)。 | 精度は高いが大掛かりで時間がかかる。安全性を考慮しUPS運用を止めて行う必要がある。 |
BSC診断方式 | ![]() |
全セルのバッテリ一つずつに電流(1C)を流して端子電圧の変化を測定し、電圧低下度を診断する方式。 | 原理に忠実でシンプル。大電流を流すことで正確性が期される。時間もかからない。UPSを止めることなく運用中に診断できる。 |