化学工業に関する動向調査
化学工業の技能・技術継承に関する意識調査

将来の技能・技術継承、「不安」「やや不安」との回答は全体の77.7%

化学産業では化学プラント・工場の設備の老朽化・高度化に伴い、設備の安全・安定運転が重要視されています。

スマート保安などIoTや最新テクノロジーを活用した保安力の向上が求められる一方で、少子高齢化により熟練技能者工事やメンテナンス技能・ノウハウの損失をどのように防いでいくかは同業界課題であると言えます。

今回の化学工業向けの調査では、技能・技術継承に関する取り組みを実施状況について「取り組みを行っており、うまくいっている」と回答したのは全体の17.3%となり、一方で、「取り組みを行っているが、うまくいっていない」が56.0%という結果になりました。

この「化学工業の技能・技術継承に関する意識調査」は化学工業(含む医薬品、石油製品、プラスチック製品、ゴム製品)従事者を対象としたインターネット調査の結果です。技能・技術継承に関する取り組み状況、具体的に実施していること、問題・課題、今後の取り組みなどについてまとめています。

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化学工業の技能・技術継承に関する意識調査概要

化学工業の技能・技術継承に関する意識調査のイメージ
対象エリア

全国

調査対象者

化学工業(含む医薬品、石油製品、プラスチック製品、ゴム製品)従事者

勤務地

工場・生産部門事業所:40.7%、本社・本店:26.6%、その他:6.8%

有効回答数

974人

調査方法

インターネット調査

調査期間

2022年6月27日~6月30日

属性データのイメージ
属性データ

[左:回答者の役職]

  • 経営層・役員クラス 1.9%

  • 部長クラス 15.4%

  • 課長クラス 39.6%

  • 主任・係長クラス 43.1%

[右:従業員規模]

  • 1~299人 25.9%

  • 300人~999人 23.8%

  • 1000人~4999人 26.7%

  • 5000人以上 23.6%

調査項目

  • 将来の技能・技術継承についての不安

  • 技能・技術継承の重要度

  • 技能・技術継承に関する取り組み状況

  • 技能・技術継承に向けた具体的な取り組み

    • OJT・メンター制度の充実

    • 機械化・自動化の推進

    • 標準化・マニュアル化の推進

    • 写真・動画・音声データなどの記録

    • 遠隔作業支援システムの活用

    • IoTやAI(人工知能)の活用

    • 熟練技能者の定年延長・再雇用

    • 技術・技能研修制度の充実

    • 外部委託の活用

  • 技能・技術継承する上での阻害要因

  • 技能・技術継承に関する問題・課題について(FA)

以下、動向調査の内容を抜粋してご紹介いたします。

化学工業の技能・技術継承に関する意識調査の結果

将来の技能・技術継承についての不安

将来の技能・技術継承について「不安がある」と回答したのは全体の31.2%、「やや不安がある」が46.5%となった(図1)。

一方で、「あまり不安がない」が15.0%、「不安はない」の回答は全体の7.3%となり、従業員規模別では、1人~299人で「不安がある」が全体と比べやや高くなっている。

図1 将来の技能・技術継承について不安

将来の技能・技術継承について不安の調査結果
図1:データ
  • 不安がある 31.2%

  • やや不安がある 46.5%

  • あまり不安がない 15.0%

  • 不安はない 7.3%

技能・技術継承の重要度

技能・技術継承の重要度について「重要」と回答したのは全体の62.2%、「やや重要」が30.8%となった(図2)。

一方で「あまり重要ではない」が6.0%、「重要ではない」の回答は全体の1.0%となった。

従業員数が多くなるほど技能・技術継承の重要度が進んでいる傾向がみられ、従業員規模別では、5000人以上で「重要」が全体と比べ高くなっている。

図2 技能・技術継承の重要度

技能・技術継承の重要度の調査結果
図2:データ
  • 重要 62.2%

  • やや重要 30.8%

  • あまり重要ではない 6.0%

  • 重要ではない 1.0%

技能・技術継承に関する取り組み状況

技能・技術継承に関する取り組みを実施状況について「取り組みを行っており、うまくいっている」と回答したのは全体の17.3%となった(図3)。

一方で、「取り組みを行っているが、うまくいっていない」が56.0%、「取り組んでいない」が18.7%となった。

従業員規模別では、5000人以上で「取り組みを行っており、うまくいっている」が全体と比べ高くなっている。

図3 技能・技術継承に関する取り組み状況

技能・技術継承に関する取り組み状況の調査結果
図3:データ
  • 取り組みを行っており、うまくいっている 17.3%

  • 取り組みを行っているが、うまくいっていない 56.0%

  • 取り組んでいない 18.7%、・わからない 8.1%

技能・技術継承に向けた具体的な取り組み

技能・技術継承に向けた具体的な取り組みについて、「標準化・マニュアル化の推進」の回答が最も多く46.2 %、次いで「熟練技術者の定年延長・再雇用」が38.5 %、「OJT・メンター制度の充実」が35.0%となった。(図4)。

図4 技能・技術継承に向けた具体的な取り組み

技能・技術継承に向けた具体的な取り組みの調査結果
図4:データ

[「取り組んでいる」との回答比率]

  • OJT・メンター制度の充実 35.0%

  • 機械化・自動化の推進 32.8%

  • 標準化・マニュアル化の推進 46.2%

  • 写真・動画・音声データなどの記録 28.1%

  • 遠隔作業支援システムの活用 12.6%

  • IoTやAI(人工知能)の活用 11.8%

  • 熟練技能者の定年延長・再雇用 38.5%

  • 技術・技能研修制度の充実 22.8%

  • 外部委託の活用 23.6%

OJT・メンター制度の充実

OJT・メンター制度の充実について「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは全体の35.0%、「取り組んだが、うまくいってない」が46.8%、「取り組んでいない」が10.0%となった(図5)。

従業員数が多くなるほどOJT・メンター制度の充実が進んでいる傾向がみられた。

従業員規模別では1人~299人では「取り組んでおり、うまくいっている」の回答は24.3%という結果になった。一方、従業員規模5000人以上では44.3%となり、取り組み状況に20.0%の差が開いた。

図5 OJT・メンター制度の充実

OJT・メンター制度の充実の調査結果
図5:データ
  • 取り組んでおり、うまくいっている 35.0%

  • 取り組んだが、うまくいってない 46.8%

  • 取り組んでいない 10.0%

  • わからない 8.3%

機械化・自動化の推進

機械化・自動化の推進について「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは全体の32.8%、「取り組んだが、うまくいってない」が43.0%、「取り組んでいない」が18.7%となった(図6)。

従業員規模別では、1人~299人で「取り組んでおり、うまくいっている」が全体と比べ低くなっている。

図6 機械化・自動化の推進

機械化・自動化の推進の調査結果
図6:データ
  • 取り組んでおり、うまくいっている 32.8%

  • 取り組んだが、うまくいってない 43.0%

  • 取り組んでいない 18.7%

  • わからない 5.5%

標準化・マニュアル化の推進

標準化・マニュアル化の推進について「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは全体の46.2%、「取り組んだが、うまくいってない」が47.0%、「取り組んでいない」が4.9%となった(図7)。

従業員規模別では、特に大きな差はみられなかった。

図7 標準化・マニュアル化の推進

標準化・マニュアル化の推進の調査結果
図7:データ
  • 取り組んでおり、うまくいっている 46.2%

  • 取り組んだが、うまくいってない 47.0%

  • 取り組んでいない 4.9%

  • わからない 2.0%

写真・動画・音声データなどの記録

写真・動画・音声データなどの記録について「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは全体の28.1%、「取り組んだが、うまくいってない」が35.8%、「取り組んでいない」が29.1%となった(図8)。

従業員規模別では5000人以上では「取り組んでおり、うまくいっている」の回答は37.4%という結果になった。一方、従業員規模1人~299人では20.7%となり、取り組み状況に16.7%の差が開いた。

図8 写真・動画・音声データなどの記録

写真・動画・音声データなどの記録の調査結果
図8:データ
  • 取り組んでおり、うまくいっている 28.1%

  • 取り組んだが、うまくいってない 35.8%

  • 取り組んでいない 29.1%

  • わからない 7.1%

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遠隔作業支援システムの活用

遠隔作業支援システムの活用について「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは全体の12.6%、「取り組んだが、うまくいってない」が20.4%、「取り組んでいない」が55.6%となった(図9)。

従業員規模別では、5000人以上で「全社的に利用されている」が目立って高くなっている。

図9 遠隔作業支援システムの活用

遠隔作業支援システムの活用の調査結果
図9:データ
  • 取り組んでおり、うまくいっている 12.6%

  • 取り組んだが、うまくいってない 20.4%

  • 取り組んでいない 55.6%

  • わからない 11.4%

IoTやAI(人工知能)の活用

IoTやAI(人工知能)の活用について「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは全体の11.8%となった(図10)。

従業員数が多くなるほど IoTやAI(人工知能)の活用が進んでいる傾向がみられた。

従業員規模別では1人~299人では「取り組んでおり、うまくいっている」の回答は6.3%という結果になった。一方、従業員規模5000人以上では19.8%となり、取り組み状況に13.5%の差が開いた。

図10 IoTやAI(人工知能)の活用

IoTやAI(人工知能)の活用の調査結果
図10:データ
  • 取り組んでおり、うまくいっている 11.8%

  • 取り組んだが、うまくいってない 26.7%

  • 取り組んでいない 50.7%

  • わからない 10.8%

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熟練技能者の定年延長・再雇用

熟練技能者の定年延長・再雇用について「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは全体の38.5%、「取り組んだが、うまくいってない」が38.9%、「取り組んでいない」が16.5%となった(図11)。

従業員規模別では300人~999人では「取り組んでおり、うまくいっている」の回答は45.4%という結果になった。一方、従業員規模1人~299人では29.7%となり、取り組み状況に15.7%の差が開いた。

図11 熟練技能者の定年延長・再雇用

熟練技能者の定年延長・再雇用の調査結果
図11:データ
  • 取り組んでおり、うまくいっている 38.5%

  • 取り組んだが、うまくいってない 38.9%

  • 取り組んでいない 16.5%

  • わからない 6.1%

技術・技能研修制度の充実

技術・技能研修制度の充実について「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは全体の22.8%、「取り組んだが、うまくいってない」が42.0%、「取り組んでいない」が27.5%となった(図12)。

従業員規模別では1人~299人では「取り組んでおり、うまくいっている」の回答は12.6%という結果になった。一方、従業員規模5000人以上では33.6%となり、取り組み状況に21.0%の差が開いた。

図12 技術・技能研修制度の充実

技術・技能研修制度の充実の調査結果
図12:データ
  • 取り組んでおり、うまくいっている 22.8%

  • 取り組んだが、うまくいってない 42.0%

  • 取り組んでいない 27.5%

  • わからない 7.7%

外部委託の活用

外部委託の活用について「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは全体の23.6%、「取り組んだが、うまくいってない」が32.4%、「取り組んでいない」が34.6%となった(図13)。

従業員数が多くなるほど外部委託の活用が進んでいる傾向がみられた。

従業員規模別では1人~299人では「取り組んでおり、うまくいっている」の回答は16.2%という結果になった。一方、従業員規模5000人以上では31.3%となり、取り組み状況に15.1%の差が開いた。

図13 外部委託の活用

外部委託の活用の調査結果
図13:データ
  • 取り組んでおり、うまくいっている 23.6%

  • 取り組んだが、うまくいってない 32.4%

  • 取り組んでいない 34.6%

  • わからない 9.4%

技能・技術継承する上での阻害要因

技能・技術継承する上での阻害要因について、もっとも回答が多かったのは「被継承者となる人材の確保ができない」で46.2%、次いで「技能・技術保有者が教育実施に時間をさけない」で41.1%、「技能・技術を上手く言語化できない」で37.7%の順に続く結果になった(図14)。

従業員規模別の集計では「被継承者となる人材の確保ができない」が最も多かったのは1人~299人の回答で57.7%、最も少なかったのは5000人以上で回答は36.6%となった。

図14 技能・技術継承する上での阻害要因

技能・技術継承する上での阻害要因の調査結果
図14:データ
  • 被継承者となる人材の確保ができない 46.2%

  • 技能・技術保有者が教育実施に時間をさけない 41.1%

  • 技能・技術を上手く言語化できない 37.7%

  • 継承すべき技能・技術が明確ではない 28.9%

  • IT/IoTなどの支援環境の整備ができていない 28.5%

  • 技能・技術継承するためのノウハウがない 27.7%

  • 技能・技術継承に関する予算不足 19.3%

  • 技能・技術を必要とする仕事量の減少 13.2%

  • その他 2.9%

  • 特にない 7.3%

  • わからない 2.0%

技能・技術継承に関する問題・課題について(FA)

技能・技術継承に関する問題・課題についてのFA(フリーアンサー)では、「教育・人材育成が難しい」「伝えにくい・言語化できない」「人材不足」に関連する回答が多くみられた(以下FA回答の抜粋)。

  • マニュアルさえ作ればだれでもできるとマニュアル神話になっているが、実際はできないことの方が多い。

  • 手順化されて文書化されてはいるが、読んだだけではわからない。誰かに何回か説明されないと完全には作業を行うことができない。

  • 作業手順書は整備しても現場経験、知識、感覚はやはり機械的には伝えきれない。

  • 技術継承において平準化されていない。IoT等の技術導入後の社内スタッフが不足。

  • 技術継承を評価する仕組みがない。技術継承を言語化できず、標準化する事が困難。経費節減で、教育時間が確保出来ない。

  • トライアンドエラーが多い業務のため、基礎知識の他に経験やカンが必要になるが、それを伝えるのが難しい。

  • 技術継承を可視化するためにも動画によるマニュアルつくりを始めたが、PCなどの機器が能力不足でうまく編集できない。

  • 足元の課題解決に必要な技術が新しいものばかりでそちらの習得に手一杯で、既にある技術を伝承する機会が無い。

  • 業務ありきの技術習得となることが多く、継承したい技能に関する業務が発生しない限り、継承にならない

  • 特殊な技能が必要で、個々の能力に依存することが多く、見える化しにくいことが多くある。

  • 人員が少ないため、技術継承に時間が割けない。またはマニュアルの作成ができていない。

  • 技術の言語化が出来ておらず、作業の標準化も出来ていない。AIやIoTにも取り組もうとしているが、予算が確保できず前に進んでいない。

  • 日々のルーティーン業務や次々に発生する不具合への対処に時間を採られ、技能・技術継承に時間が取れない。

  • 技術継承における平準化が弱い。IoT等の技術導入後の社内スタッフが少ない。

  • ノウハウの継承に想定している時間が短い。特定しているノウハウが必要とするノウハウの全てをカバーしていない。

  • 文書化・マニュアル化するものの、そのファイルが保管されてうまく運用されないことがある。

調査結果ダウンロード

本調査結果については以下よりダウンロードすることができます。

富士電機では化学工業・化学プラント・化学工場に関連する動向調査を不定期に実施し、お客様に役立つ情報を発信しています。本調査に関するお問い合わせは「お問い合せ・導入に関するご相談」ページよりお知らせください。

[2023年調査]

[2022年調査]