環境・社会・ガバナンス
水資源の有効利用

ESG 環境・社会・ガバナンス

富士電機は、環境保護基本方針および環境ビジョン2050に基づき、「循環型社会の実現」を目指し、サプライチェーン全体で3R(リデュース、リユース、リサイクル)を指向した活動を推進しています。その一環として、水資源の有効利用および排水基準の遵守に取り組んでいます。

水資源の有効利用

世界的に水資源の枯渇が問題視されるなか、これまでの排水基準の順守に加え水資源の有効利用を進めるため、水投入量の売上高原単位の削減を目標に定め、水使用量の削減に取り組んでいます。

2022年度は生産増にもかかわらず水の投入量を対前年3.7%削減しました。そのため、全社における水投入量に対する売上高原単位は0.93%となり、前年比0.14%改善しました。国内では山梨工場で、昨年度導入したリサイクル水製造設備が通年で稼働したことにより、リサイクル量が増加しました。海外では、マレーシア工場におけるハードディスクの媒体製造事業終了の影響により、水の投入量は前年比23.4%減となりました。

水資源の有効利用で力を入れているのは、水のリサイクルです。

2022年度は、マレーシア工場における前述の事業終了の影響が大きく、リサイクルの全量は前年比4.2%減となりました。一方、リサイクル率(注)は20.7%で、前年とほぼ同等な割合となりました。リサイクル率を上げる対策として、2019年度から松本工場にてフィルタ膜の閉塞対策を実施しています。さらに2021年度から山梨工場にて工程別に排水を分け、リサイクル水製造設備を増強しており、水リサイクル量を増やしています。

(注)

リサイクル率
リサイクル量/使用量(=投入量+リサイクル量)

水投入量(グローバル)
投入量(グローバル

(注)

国内:上水購入量+工業用水購入量+地下水汲上量(注)(生産活動で使用する地下水のみ)
海外:工業用水

(注)

地下水汲上量には、土壌浄化用、農業用水供給用、融雪用の地下水は含みません。

水リサイクル量
水投入量(グローバル

水リスク調査

富士電機では、国内外すべての生産拠点において、水資源不足のリスクにさらされていないか確認するために、評価(注)を実施しています。その結果、中国深圳(シンセン)工場が唯一水リスクの高い拠点に該当しました。

(注)

3つの指標から総合的に拠点の水ストレスを判断

  1. 1.

    WRI Aqueduct(世界資源研究所)による世界の地域別の水ストレス評価結果

  2. 2.

    水消費量

  3. 3.

    水供給インフラ

水リスク生産拠点である深圳工場の状況

深圳工場は、当社で水リスクが高い拠点と判定された唯一の工場です。渇水期には感光体の生産に不可欠な水の供給が制限されるため、大きく2つのリスク対策を実施しています。

ひとつめは受水槽の設置です。水の供給が一時的に途絶えても操業への影響を防ぎます。ふたつめは排水をリサイクルする設備の導入です。現在の半導体製造部門のリサイクル率は80%で、深圳市と合意した目標(70%)をクリアしています。

このように、深圳工場は行政との良好な関係を築くことで、水を安定的に利用できる生産体制を構築しています。

水リスク拠点における水購入量・使用量の推移

(注)

水使用量:水購入量+リサイクル量
水リスク割合:(深圳水購入量)/(富士電機の総水投入量)

水の取水管理の状況

富士電機の生産拠点は、その多くが工業団地内に立地しているため、工業用水や上水(飲用可能水)の供給を受けています。加えて、地下水を取水している拠点もあります。

地下水の取水量は毎年行政報告しており、それぞれの地域における取水量の適性化に努めています。当社が地下水を取水している国内の拠点数は15(19拠点中)で、地下水の取水量が水の総投入量に占める割合は53.1%です。(地下水取水量報告値は、生産に係わる使用に限定。)

過去、日本国内では地下水の取水が地盤沈下を引き起こし、社会問題化したことがあります。しかし現在では、行政がその地域の適切な取水量の水準を決め、地下水位の適性化がなされているため、取水が原因で引き起こされる地盤沈下等の社会問題はほとんど発生していません。

海外の拠点は、工業団地に供給される工業用水のみを生産活動に使用しています。
また、特に水使用量の多い半導体前工程4工場(松本・山梨・津軽・マレーシア)と深圳を加えた5工場は水のリサイクルを推進することで、水投入量を抑制管理しています。
他拠点に対しても、ISO14001の環境影響評価で水使用量の影響が大きいと認識されれば、循環水化投資、節水の取組、水使用量管理で異常を早期に発見し、漏水の補修、工場内配管の地上化(見える化)などの対策を実施し、水投入量抑制に努めています。

排水管理の状況

化学物質を使用している工場では、法定排水基準より厳しい自社基準に従って厳重に排水を管理しています。排水処理装置に異常が検知された場合は、常駐の修理担当者が即座に対応する体制を敷いています。また、排水のpHなどを常時監視し、pH調整不良などの異常を検知した場合は基準を満たさない排水が社外へ漏洩しないように排水門を自動で遮断します。この基準外の排水は、修復が完了するまで排水貯水池に貯められます。

当社はこのように排水管理を徹底することで、生態系への影響を最小限に抑制するように努めています。

生産拠点の水有効活用の取り組み事例

水使用量の多い半導体前工程を扱う山梨工場では、環境負荷を低減するため、水投入量の削減に取り組んでいます。活動事例として、工程別に排水配管を分け、排水に含まれる異物を除去する処理施設の配置を最適化しました。半導体は増産であったものの、2022年度の水投入量は2020年度比で9.9%削減となり、リサイクル率は10%向上しています。今後もリサイクルを推進し、削減活動を強化していきます。

事例紹介(松本工場の取り組み)

松本工場では、半導体の前工程を扱うため製造プロセスで大量の純水を使用するとともに、生産設備の冷却などにも多くの水を使用しており、水資源の使用量削減と有効活用は、重要な取組みテーマとなっています。

排水回収システム(IWM:Integrated Water Management)
排水回収システム
(IWM:Integrated Water Management)
純水リサイクルの取組み

製造工程からの排水を選別し、比較的良質な部分を純水製造の原水としてリサイクルしています。
洗浄工程の排水の回収では、マイクロバクテリウム属の細菌を活用して有機物処理能力を加えた生物活性炭処理に成功し、回収率を向上させました。また、環境に有害なフッ素を含んだ排水については、専用の排水回収装置を導入、逆浸透膜で濃縮することにより排水量を削減し、更に膜を透過して綺麗に処理された水を純水の原水として再利用しています。

フッ酸処理設備の薬品使用量削減

純水製造で使用するイオン交換樹脂を定期的に再生処理する必要があります。そのときに発生する酸性やアルカリ性の排水を中和処理し、終末処理後に公共下水道へ放流していました。そこで、その排水から分離した高濃度のアルカリ溶液をフッ酸処理設備で必要なpH調整に再利用する新たな排水再利用システムを考案・導入し、薬品使用量の削減とコストダウンを可能としました。

排水回収システムの改善(IWM:Integrated Water Management)

工場の終末処理に排水回収システムを導入し、公共下水道に放流していた排水の再生処理(濾過処理等)を行い、工場内の冷却塔やトイレなどで使う水として再利用しています(約千トン/日)。近年では、濾過膜のメンテナンス方法の改善等により、回収率が向上しています。2023年度は、既存の排水回収システムに加えて新たな排水回収システムが稼働開始することにより、これまでに比べて排水回収量の50%増を目指しています。