富士電機技報
第99巻第1号(2026年8月)

特集 GX実現と自動化に貢献する計測・制御・情報・排熱利用ソリューション

特集 GX実現と自動化に貢献する計測・制御・情報・排熱利用ソリューション

企画意図

脱炭素社会の実現に向けた取組みが世界的に進められており、GX実現に向けた投資も加速しています。また、深刻化する労働力不足を克服するために、生産性の向上に向けた自動化のニーズはさらに高まっています。
富士電機は、計測機器、コントローラなどのフィールドデバイスに、エンジニアリング機能を組み合わせた監視制御システムや、排熱を有効利用するための機器を提供しています。
本特集では、GX実現と自動化に貢献する計測・制御・情報システムと、それを支えるコンポーネント(機器)、排熱利用のための機器、およびそのエンジニアリングについて紹介します。

〔特集に寄せて〕
GXと自律化を支える計測・制御・情報技術の展望

元井 直樹
神戸大学大学院 海事科学研究科 准教授 博士(工学)

〔現状と展望〕
GX実現と自動化に貢献する
計測・制御・情報・排熱利用ソリューションの現状と展望

鉄谷 裕司・松本 康

富士電機は、長年培ってきた計測・制御・情報・排熱利用技術を基に、各産業分野におけるさまざまな課題を解決するソリューションを提供することにより、GX実現と自動化に貢献している。プラント監視制御システムについては各分野と規模に応じて最適な監視制御システムを、ファクトリーオートメーションシステムについては顧客が進めるDXに貢献する製造実行システムなどを展開している。システムを支える計測機器については、圧力発信器、流量計、分析計などを展開している。また、各種産業分野で培った技術を活用して、排熱利用ソリューション、放射線管理ソリューションも展開している。

柔軟なシステム構成で生産現場の安定操業に貢献する監視制御システム

朱 剣云・阿部 雄大・高 功治

富士電機はプラント運用の複雑化や人手不足などを克服し、極小規模から大規模まで対応可能な次世代の監視制御システム「MICREX-VieW One」を開発した。本システムは新型コントローラ「XCS-5000」とオープンネットワーク規格OPC UAへの対応により高度なデータ処理を実現した。さらに、スタンドアロン構成からマルチサーバ構成まで対応可能な高いスケーラビリティを備え、少人数で運用できるリモート監視を可能にするとともに、サーバの負荷分散などにより可用性と信頼性を両立させた。また、システム定義の更新に関わるエンジニアリング効率を独自技術により向上させた。

プラント制御システムの運用効率向上に貢献するプラント制御最適化パッケージ

小比賀 理延・田中 雅紀・向谷地 一樹

製造プラントの運用効率向上を目的として、製造条件の変更や設備の状態変化に追従してプラントの運転制御を最適化するための「プラント制御最適化パッケージ」を開発している。本パッケージの診断ツールによりプラント運転データの統計的処理と一般化最小分散制御則に基づいて制御性能を定量的に評価できるので、制御の改善余地を可視化できる。これに加えて、蓄積されたプラント運転データから最適なフィードフォワード制御パラメータを自動的に算出する技術を開発している。プラントの種類ごとにテンプレート化して、最適な制御性能の実現に貢献する。

製造設備の安定稼動に貢献する設備分析システム

伊藤 直治

製造現場において人手不足と設備の老朽化が同時に進む中、設備の安定稼働と保全コストの抑制の両立を支援する「設備分析DXシステム」を開発した。本システムは、設備ごとの運転情報と保全情報を統合的に管理する。各設備から収集した計測データと保全履歴を紐付けた上で、それらを3階層で可視化する。これにより、各設備の状態の経時変化や異常の兆候を早期に把握して適切な時期に保守する状態基準保守を実現できる。自社工場での試行では、経験の浅い担当者でも熟練者並みに迅速な原因特定などの対応が可能となり、保全費用を約20%削減する効果があった。

不良率低減と生産効率向上に貢献する製造現場向け監視・診断システム

辻本 聡一・下薗 真人

製造現場の大きな問題として短時間の設備停止(チョコ停)や品質のばらつき、設備の突発的な停止などがある。これらの解決に向け、高度なITスキルを必要とせずデータ活用が可能な製造業向けデータ収集分析ツール「軽技 Web for Factory」を開発した。本ツールは製造現場の改善に役立つ多数のテンプレートを提供しており、チョコ停の可視化、統計量に基づく逸脱判定、多変量統計的プロセス管理(MSPC)による相関関係の監視などを実現できる。加工ラインに導入した事例では、分析工数を約30%削減でき、不良原因の特定による不良率の低減に貢献した。

製造現場の生産性向上に貢献する製造ライン監視パッケージ

八野 祐司・川上 正義・中西 拓也

製造業における生産性を向上するために製造設備の稼働状況や品質情報をリアルタイムに把握できる「製造ライン監視パッケージ」を開発した。本製品は、製造現場に普及しているプログラマブル表示器の上で動作するアプリケーションであるため専門知識がなくても容易に導入することが可能で、各設備における電力、エア、水の使用量の監視、各設備の稼働状況の監視、製品の品質傾向の監視、生産の進捗状況の監視に加えて、設備保全に関する点検結果や異常対処の記録などを一元管理する機能を提供する。また、製造現場の規模や優先課題に応じて適切なシステムを構成できる。

工程・設備単位の電力監視による工場電力管理の高度化

中務 智貴・小林 玄宙

生産設備の電力消費量を工程・設備単位で把握して省エネルギー化を進めるため、データ収集コントローラ「FiTSAΣ B5-EMS」、多点計測用電力モニタ「FY20」、電力品質モニタ「FY10」を開発した。FiTSAΣ B5-EMSは、1分周期で1,000点のデータを同時に蓄積可能で収集したデータをWebブラウザ上で表示・分析する豊富な機能を標準搭載している。FY20は横幅を抑え既設分電盤の限られたスペースへの設置を容易にするとともに、4回路の電力計測を実現している。FY10は、1ショット電力量計測機能を備え、生産設備の動作単位での電力消費量把握を可能とした。

熱の有効利用に貢献するクランプオン式蒸気用超音波流量計

岡田 充泰・田原 雅哉

脱炭素社会の実現に向け、工場の省エネルギー(省エネ)への取組みが強化され、各種プラントでは蒸気の有効利用が重要になっている。しかし、従来の流量計は設置時に配管の切断工事が必要なため適用箇所が限定的で、正確なエネルギー消費量の把握が進んでいなかった。この問題を解決するため、配管に外付け可能な世界初のクランプオン式蒸気用超音波流量計を開発した。配管伝搬ノイズの抑制や独自の板波技術の適用により高い受信強度を確保し、低流速領域でも高い計測精度を実現した。少量の蒸気漏えいなど設備異常の早期発見も可能となり、蒸気利用設備の省エネ化に大いに貢献する。

工場の省エネルギーに貢献する排熱利用ソリューション」

大西 祐輔・白井 英登・岩崎 正道

工場の省エネルギー化やCO2排出削減のため、未利用熱の有効利用が重要視されている。富士電機は、塗装乾燥や殺菌など加熱プロセスに向けて、排熱を回収して水を昇温し120 ℃または150℃の蒸気を生成する蒸気発生ヒートポンプを開発した。一方、サーバ冷却などの冷却プロセスに向けて、排熱を利用することにより圧縮機を用いることなくエジェクタを用いて冷却水を生成するエジェクタ冷却機を開発した。いずれも高いエネルギー消費効率を実現しており、排熱の有効活用により、熱利用設備の一次エネルギー投入量とCO2排出量の大幅削減に貢献する。

安全・安心な放射線利用に貢献する放射線管理ソリューション

阿部 洋平・廣原 匠・高橋 凛

原子力発電の継続的利用や医療分野におけるがん治療の需要拡大による放射性医薬品や放射線医療機器の市場拡大などを背景に、放射線の安全利用に向けた計測・データ管理技術が求められている。そこで富士電機は、核燃料などから生じる中性子を電源や通信環境に左右されずに測定可能な中性子可搬型モニタリングポストや、原子力発電所で大量に発生する低レベル放射性廃棄物を封入したドラム缶を自動で検査する低レベル廃棄物検査装置を開発した。医療分野向けでは、放射線管理を専門としない人でも容易に操作可能な新型エリアモニタとRIキャリブレータを開発した。

略語・商標

注

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