富士時報
第65巻第7号(1992年7月)

ミクロセンサからマクロセンサヘ

高橋  清

富士電機のセンサ技術

芳賀 敬二,佐枝 史朗

最近のセンサ技術は、センサ材料の進歩、センサの集積化、微細加工技術の適用、センサ応用システムの拡大などの傾向にあり、これらの技術を適用した新しいセンサの開発が著しい発展を遂げている。また、国内のセンサ市場も急激に増大している。これらの状況を踏まえて富士電機では、センサ技術をシステムやデバイスの特長を作り出すための非常に重要な要素技術であると位置づけ、新しいセンサの開発、商品化を行っている。本稿では、プロセス、FA用などを中心として、富士電機のセンサ全般の概況と将来展望とを述べる。

極限作業ロボット用触覚センサ

鷺沢  忍,小林 光男

通商産業省工業技術院の大型プロジェクト「極限作業ロボット」の委託を受けて、当社が開発した3種類のシリコン触覚センサ(3軸3ミリ、3軸1ミリ、1軸2ミリ)について紹介する。
3軸3ミリ、3軸1ミリセンサは、加えられた力の3方向成分の分布を、それぞれ3mm、1mmのピッチで検出できる。1軸2ミリセンサは、原子力ロボットの人間形ハンドの指先のような複雑な曲面に装着できる。本稿ではこれらの触覚センサの概要を説明し、さらに3軸1ミリセンサの構造と実験結果について述べる。

オートフォーカスカメラ用高感度光センサ

鶴田 芳雄,小松 幸哲,田中  誠

オートフォーカス(AF)カメラに用いられるAFICの高感度化技術、およびその適用製品について紹介する。本技術は、センサ部に演算増幅器を用いた積分回路を採用し、光電流を積分容量のみに蓄積する方式とした。これにより、ホトダイオードの接合容量、コンパレータの入力容量の影響を無視でき、感度向上が可能となった。また、演算増幅器のオフセット電圧、スイッチングノイズなどをキャンセルする対策も行った。本技術を適用した新機種は、富士電機の従来機種に対し、8倍の感度向上を達成した。 

業界ニーズにマッチしたポジションセンサ

藤掛 章雄

産業機械の自動化が進展するに伴い、近接スイッチ、光電スイッチ、超音波スイッチなどのいわゆるポジションセンサの需要が拡大している。最近の傾向として従来からの汎用的に使用されているセンサに加え、特定の業界での使用も考慮して機能・性能の向上を図ったセンサの要求が拡大している。本稿では富士電機が最近取り組み、開発した例について、自動車、立体駐車場、工作機械、印刷機械の各業界ごとに、これらの用途に適したセンサを紹介し、さらに適用する際の留意事項まで言及する。

放射線センサ

岡本 英輔

放射線センサの種類とその原理について述べるとともに、具体的な性能比較を仕様一覧の形で紹介する。特に、サーベイメータを含む放射線モニタリング用のセンサと、個人被ばく管理用のセンサを中心に説明し、中でも半導体センサについては、個人被ばく管理用から、エリアモニタ用、ダストモニタ用など、環境管理用までのセンサについて言及する。

新ICを使用した高周波発振形近接スイッチ

野寺 俊夫

高周波発振形近接スイッチは、各種産業界の無人化、自動化において自動制御を構成するセンサとして欠かせない存在である。最近の近接スイッチに対する市場要求として、(1)長距離化、(2)2線式化、(3)使いやすさの向上などが挙げられる。
富士電機では、これらの要望にこたえるために近接スイッチ用の新ICを開発し、このICを使用した近接スイッチを製品化した。本稿では、この新ICの概要と新ICを搭載した近接スイッチ(PE2シリーズ)について紹介する。

富士ビデオセンサの現状

山村 辰男

富士ビデオセンサは、製品の外観検査を自動化するFA向けの検査装置である。富士ビデオセンサとしては、すでに汎用装置であるマルチウィンドウシリーズを開発している。さらに多様な用途にこたえるため、今回、高分解能で高速処理機能を備えた容器の内面を検査する装置を開発したので紹介する。

光システム用FA機器

久米 秀男,西尾 三男

光学技術において、光ファイバを採用した光システムはその多くの特長を生かして応用され、実用化されてきている。FA分野においてもその適用の拡大が進展している。富士電機では従来の押しボタンスイッチやリミットスイッチなどの電気式コンポーネントを完全に光化した光機器と、それらをネットワーク化する機器を開発した。本稿ではシステムの概要と、光機器として主な検出機器の光磁気近接スイッチ、モニタ付光リミットスイッチ、トランシーバおよび光温度スイッチについて述べる。

光ファイバ式フィールド計装システムFFI

渡部 好三

FFIは、世界で唯一商品化されているフィールドバスであるばかりでなく、物理層に光ファイバを採用した先進のフィールド計装システムである。昭和60年に発売以来多くのユーザーに納入されており、フィールドバスの特長、光ファイバ伝送の特長を生かし、フィールド計装の合理化、信頼性の向上などに貢献している。
本稿では、FFIシステムのフィールド機器の品ぞろえの状況を紹介する。センサから操作端まで多数用意されており、大部分のシステムに対応できるようになっている。

FCXシリーズの新形発信器

北村 和明,中村 公弘

電子式発信器FCXシリーズは、アナログ⇔スマート・コンバーティブルという全く新しいコンセプトと全レンジ0.1%という高精度などにより、平成元年の発売以来、きわめて短期間に世界のユーザーの高い評価と信頼を得て、多くの実績を積み重ねている。
本稿では、発信器FCXシリーズに新しく追加された、高温高真空用発信器とダブルコーティング形発信器について、構造、動作原理、主な仕様、試験結果などを紹介する。

新形超音波流量計TIME DELTAシリーズ

玉井  満,山本 俊広,桜井  洋

超音波が弾性波であることを利用した超音波流量計は、他の流量計にはない、配管の外から管内の流量計測が可能であるという特長を持っている。昭和50年以来の従来形の使用実績と改良を基に、このたびTIME DELTAシリーズの開発を完了し発売した。この新シリーズは、ASIC、表面実装の活用とソフトウェアの改良により小形で、さらに使いやすくなった変換器FLVと、一人で取付作業が可能な検出器FLWおよびFLGから成る。高精度時間差測定のTLL方式に加え、ABM方式により気泡対策が強化された。

薄膜半導体検出器を用いた水中オゾン分析計

原田 健治,山本  豪,高橋龍太郎

富士電機は大阪府水道部と共同で、薄膜半導体式オゾンガスセンサを用いた水中オゾン分析計を開発した。本装置は、溶存オゾンを気相に移行させた後、ガスセンサで検出する方法を採用している。
本法の特長は、無試薬で連続測定が行える、広い測定範囲と高い選択性の実現、センサ部は試料液と非接触な構造となっている点である。本法の特性評価を高度浄水処理実証プラントで実施し、従来の滴定法との良好な相関と6ヶ月にわたる安定性を確認した。
今後のオゾンによる水処理分野への適用が期待できる。

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