サステナビリティ
富士電機 人権の尊重

人権の尊重に関する基本的な考え方

経営理念

 富士電機は、経営理念に「地球社会の良き企業市民として、地域、顧客、パートナーとの信頼関係を深め、誠実にその使命を果たす」を掲げ、あらゆる企業活動を通じて、「豊かさへの貢献」、「創造への挑戦」、「自然との調和」を実現し、持続可能な社会の実現に貢献することを使命としています。

企業行動基準

 富士電機は「企業行動基準」を制定し、富士電機とその社員一人ひとりが、「経営理念」を実践し、社会的責任を果たすために、国の内外において関係法令・国際ルールおよびその精神を理解し遵守しつつ、高い倫理観を持った行動ができるように、富士電機とその社員の判断の拠り所や行動のあり方として8項目の基準を定めています。

 本基準は、富士電機㈱とその関係会社のすべての役員・従業員(派遣社員を含む)に適用されます。

人権尊重に関わる行動基準

 本基準では、「人を大切にします」を最初の項目に掲げ、「企業活動に関わるすべての人との関係において、人権を尊重」することを明記しています。また、人権に関する国際規範および、国連の『ビジネスと人権に関する指導原則』を踏まえ、人権に関する悪影響を事前に認識し、防止し、対処するために人権デュー・デリジェンスを実施する方針を明確化しています。

 サプライチェーンに関しては、「お取引先様を大切にします」を掲げ、お取引先様とともに、人権尊重を含む持続可能な社会を支えるサプライチェーンの構築に向けた「富士電機CSR調達ガイドライン」を定め、調達活動を推進する方針を明確化しています。

 富士電機は、企業活動が人権にインパクトを与えることを認識し、企業活動のすべてのプロセスにおいて、関わるすべてのステークホルダーの人権を尊重するとともに、企業活動が人権に与えうる負の影響の防止、軽減に努め、包摂的な社会の実現に貢献します。

ガバナンス体制の構築と周知に関する行動基準

 「経営トップは本基準の実践を徹底します」と掲げ、この基準の実践に向け、健全性、効率性、透明性、実効性あるガバナンス体制と、法令・社会規範の遵守徹底を図るコンプライアンス体制を構築・推進するとともに、本基準を富士電機の全社員と共有し、パートナーなどサプライチェーンにも周知する方針を明確化しています。

 本基準は、代表取締役会長CEOおよび代表取締役社長COOの諮問機関である「経営会議」における審議、取締役会での報告を経て制定されています。

人権尊重に関する国際規範の尊重

 人権尊重の取り組みに当たっては、富士電機が事業活動を行う国または地域における法と規制を遵守するとともに、特に下記のグローバルな原則や規範を支持・尊重しています。

  • 世界人権宣言

  • 国際人権規約

  • OECD多国籍企業行動指針

  • 労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言

  • 国連グローバル・コンパクト

  • ISO26000

  • 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」
    ビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)

人権に関するガバナンス体制

 富士電機は、事業・営業部門およびコーポレート部門の執行役員からなる「サステナビリティ委員会(旧SDGs推進委員会)※1」を設置し、環境、人権・人財活躍推進、持続可能なサプライチェーンの課題について方針・施策の審議、推進管理、評価を行っています。同委員会で審議された内容は、全執行役員メンバーにより構成される経営会議および取締役会において定期的に報告されています。
 富士電機グループの従業員の人権に関しては、サステナビリティ委員会のもとに、人事担当役員が責任者を務める「人権・人財活躍推進部会※2」を設置し、「人権尊重の経営施策への組み込み」、「多様な人財の活躍推進」、「働きがい拡大」に向けた方針・施策の審議、評価を行っています。さらに、各事業所、国内外連結子会社には「人権啓発推進委員会※3」を組織し、人権の遵守徹底を推進する体制を構築しています。
 サプライチェーンにおける人権尊重に関しては、コーポレートの調達部門がサステナビリティ推進部門などの関連部門と連携し、人権課題を含む持続可能なサプライチェーンの課題に関する施策の立案・推進をしています。

富士電機サステナビリティ課題の取組推進体制

※1

サステナビリティ委員会:執行役員専務経営企画本部長を委員長とし、環境担当役員、人事担当役員、各事業担当役員が委員を担い、年2回開催します。
「サステナビリティ委員会」の常設部会として、「人権・人財活躍推進部会」を設置し、各種方針・施策の審議、評価を行っています。

※2

人権・人財活躍推進部会:執行役員常務人事・総務室長を責任者とし、富士電機全社の人権課題を共有するとともに、全社方針・施策の立案、策定を行います。
部会は原則年2回開催し、年度方針に基づく活動状況を総括するとともに、個別課題に対する施策の検討・立案を行います。

※3

人権啓発推進委員会:各事業所・子会社においては、事業所長、人権担当役員等を委員長に、人権啓発推進委員会を組織し、人権の遵守徹底、人権啓発を推進しています。

富士電機にとって重要と考える人権課題

 富士電機は、企業活動のすべてのプロセスにおいて重点的に取り組むべき人権課題として、以下の課題に適切な手続きを通じて対処していきます。

  • 強制労働の禁止

  • 児童労働の禁止

  • 労働時間への配慮

  • 適切な賃金

  • 非人道的な扱いの禁止

  • 差別の禁止

  • 従業員の団結権

  • 安全・健康な労働環境

人権尊重に関する具体的な方針

従業員の人権に関する方針

 富士電機は、「企業行動基準」に基づき、富士電機グループで働くすべての人を対象に、その基本的人権を尊重することを目的とした「従業員の人権に関する方針」を制定しています。方針の策定に当たっては、人権に関する国際基準や各種ガイドラインを参照し、具体的な人権課題ごとに方針を定めています。
 本方針は、多言語で翻訳され、各国拠点に展開するとともに、ポスター化して各事業所の職場に掲示しています。
また、「従業員の人権に関する方針」の浸透に向け、富士電機グループ共通の「従業員の人権尊重に関するガイドライン」を制定し、国内外連結子会社に周知しています。本ガイドラインはRBA行動規範などの国際基準をベースとし、「従業員の人権に関する方針」の各項目に関して、取り組むべき事項を具体的に明示した内容となっています。

サプライチェーンの人権に関する方針

 富士電機はサプライチェーン上で人権尊重を推進することを目的に、「富士電機CSR調達ガイドライン」の第1項に「人権・労働」を明記し、以下8項目の理解と実践をお取引先様に要請しています。

  • 強制的な労働の禁止

  • 児童労働の禁止

  • 若年労働者への拝領

  • 労働時間への配慮

  • 適切な賃金と手当て

  • 非人道的な扱いの禁止

  • 差別の禁止

  • 労働者の団結権

人権デュー・デリジェンス

 富士電機は、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を踏まえ、当社の企業活動にかかわるすべてのステークホルダーの人権尊重の責任を遂行するために、人権に負の影響を及ぼす可能性を特定、防止、軽減、対処していく「人権デュー・デリジェンス」を継続的に実施しています。

富士電機で働く従業員への取り組み

 国内・海外全ての事業所・連結子会社において、2年に1回、最新の国際基準に準拠したSAQ(セルフアセスメント)による人権・労働に関わる現状調査・評価を実施しています。
 2024年度は、「従業員の人権尊重に関するガイドライン」、および「人権・労働アセスメントシート」をもとに、すべての国内外の事業所・連結子会社79拠点(国内41拠点、海外38拠点)において、SAQによる人権リスク(派遣社員を含む)の分析を実施しました。2022年度と比較し「人権方針の周知」、「差別や非人道的な扱いの禁止」等の項目において改善されましたが、「安全・健康」に関する未達項目が多く、取り組みが不十分な子会社6社に対し継続対策を実施しています。
 また、公正な採用選考を実施するとともに、富士電機グループ各社と契約関係にある人材派遣会社・請負会社向けに「従業員の人権尊重に関するガイドライン」を提示し、当社の人権方針への賛同と実践を要請しています。これにより、直接雇用関係にある従業員だけでなく共に働くすべての人々の人権尊重を進めています。

サプライチェーンでの取り組み

 富士電機は、サプライチェーンにおいても人権リスクを防⽌するため、取引額上位80%を占める主要なお取引先様について年一回のCSRセルフアセスメントを実施し、「富士電機CSR調達ガイドライン」の遵守状況を確認し、改善を求めています。
 2024年度は、グループ全体のお取引先様約6,200社のうち、過去3年間(2021~2023年度)の購入実績の上位80%を占める主要なお取引先様875社(国内728社、海外147社)を対象に、「富士電機CSR調達ガイドライン」に基づいた自己点検へのご協力をお願いしました。この自己点検では、人権や労働、安全衛生など、計9項目についてリスク調査を行いました。その結果、人権・労働および安全衛生において高い実践状況が確認できました。
 2023年度からは、実際の取り組み状況を確認するため、お取引先様への訪問による実地監査も実施しています。2024年度は17社のお取引先様を訪問し、実地監査を行った結果、全社でアセスメントの回答内容と実態が整合していることを確認しました。
 なお、2022年10月より、新規に取引を開始するお取引先様に対して、CSRセルフアセスメントの実施を義務付け、人権に関する取り組み状況を確認しています。

現代奴隷・人身取引に関する声明

 富士電機は、自社の事業およびサプライチェーンにおいて「人権を侵害しない・人権侵害に加担しない」ように努めています。本声明は、強制労働等現代における奴隷労働や人身取引の根絶の取り組みについて記載しています。声明文は、下記リンクからご覧いただけます。

人権に関する相談・通報・救済の窓口

 富士電機は、従業員やお取引先様向けに、人権に関する苦情処理メカニズムとして、相談・通報ができる窓口を設置しています。

富士電機企業倫理通報制度

 社内外の関係者が、法令違反や人権を含む社内ルール違反、またはそのおそれのある事実を、通報窓口(社内窓口、社外弁護士およびJaCER)を通じて富士電機の代表取締役社長COOに通報できる「富士電機企業倫理通報制度」を導入し、運用しています(匿名通報も可)。

企業倫理ヘルプライン

 富士電機の国内外の役員および従業員(退職者および派遣社員を含む)からの通報を受け付けています。社内報および社内イントラネットへの掲載等により周知徹底を図っています

パートナー・ホットライン

 取引先などの社外のステークホルダーからの通報を受け付けています。ウェブサイトへの掲載やお取引先様への説明会等により周知徹底を図っています。

JaCER対話救済プラットフォーム

 一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)が運営する「対話救済プラットフォーム」に参加し、すべてのステークホルダーからの人権関連をはじめとした通報を受け付けています。
 JaCERの苦情処理プラットフォームは「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠しており、第三者窓口を介して苦情を受け付けることで、苦情処理の公平性・透明性を図ります。


 いずれの通報制度においても、通報者情報の秘匿、通報を理由とする不利益な取り扱いや報復・差別行為の禁止を通じて通報者保護の徹底を図った上で、事実調査、是正措置、再発防止、処分その他解決に向けた必要な対応を行い、対応内容については、通報者にフィードバックしています(匿名での通報の場合でも、上記の手段を通じて間接的にフィードバックを提供するよう努めています)。
 2024年度の通報件数は、国内外25件であり、そのうち違反があったものは3件(ハラスメント2件、会計関連1件、全て是正・再発防止措置済)でした。

人権相談窓口

 従業員向けの相談窓口として、富士電機グループ(国内)すべての拠点に設置しています。所管部門および担当者氏名をイントラネットや事業所掲示板などで周知するとともに、面談だけでなく電話やメールによる相談にも対応するなど、相談しやすい環境づくりに努めています。

人権に関する教育・研修

 富士電機は、すべての役員・従業員を対象に、企業の人権尊重責任について理解を深める教育・研修を実施しています。

人権を尊重する組織風土醸成に向けた教育・研修

ハラスメント教育

 2024年度はハラスメントをテーマにeラーニングを実施し、11,038名が受講しました。ハラスメントについて理解を促し、「互いに敬意を持った、働きやすい職場づくり」の実現を図ることとし実施しています。

階層別教育

国内では、新入社員を対象とした人権基礎研修、主任・幹部層を対象とした事業活動と人権リスクの認識を深めるための研修を実施しています。また、キャリア採用者およびグループ会社の新任取締役にも人権研修を実施し、2024年度は合計1,174名が参加しました。

メンタルヘルス教育

 事業所別および全社eラーニングにてメンタルヘルス教育、階層別面談を実施し、2024年度は延べ27,948名が受講しました。

ダイバーシティ研修

 ダイバーシティに関する従業員の意識改革を推進し、働きやすい職場風土醸成に向けた、さまざまな施策を継続的に実施しています。2024年度は、上位職への昇格者を対象に、ダイバーシティの重要性と会社の取り組み内容の理解、各職位で果たすべき役割の理解などをねらいとした研修に、合計262名が参加しました。

 上記のほか、各事業所、子会社においても各種の人権啓発教育を行い、2024年度は9,426名が受講しました。

人権・採用担当者向け教育・研修

 人権への理解を深めるため、人権・採用担当者(国内子会社を含む)が外部研修会に定期的に参加しています。2024年度は、自治体や人権団体が主催する同和問題、ハラスメント、LGBTQなどの研修会に137名が参加しました。

調達担当者向け教育・研修

 CSR調達の実務を担う従業員の意識向上をめざし、日本国内の調達部門担当者を対象にCSR教育を実施しています。その教育では、サプライチェーンにおいて特に注意が必要な人権に関する項目についても取り上げています。
 2024年度は3工場にて教育を実施し、98名が受講しました。

ハラスメントの防止

 富士電機では、「従業員の人権に関する方針」でハラスメント行為全般を禁止しています。
 また「富士電機 従業員の人権尊重に関するガイドライン」を各事業所の人権担当者に周知するほか、各社の主要事業所に人権全般に関する「人権相談窓口」を設置するとともに、通常の業務ラインとは独立した電話やメールによる「企業倫理ヘルプライン」を導入しています。2024年度は、ハラスメントをテーマにeラーニングを実施しています。

イニシアチブ/業界連携への参画

 国際機関や業界における人権問題への取り組みに積極的に参加しています。

一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)「CSR委員会」

 JEITA「CSR委員会」の委員として、CSRに係わる業界共通の諸課題に対処するとともに、CSRに関する専門的な見地から調査、研究、普及および対外的な提言などを行う活動に参画しています。

東京人権啓発企業連絡会

 「東京人権啓発企業連絡会」に加盟し、会員各社と課題共有や対話を通じた取り組みにより、人権啓発の推進・向上に向けた活動を継続的に進めています。

情報開示

 富士電機は、ステークホルダーの皆様への誠実で積極的な情報開示、建設的な対話を図ることで、相互理解、信頼関係を深めます。人権尊重の取り組みについても、影響を受けたもしくはその可能性のある人々や従業員をリスクに晒さないよう、また商取引上の秘密の保持に配慮した上で、人権デュー・デリジェンスの進捗状況および結果について、適切な情報を開示していきます。