株主・投資家情報
富士電機レポート/統合報告書
人財
従業員ファーストをベースに
「ウェルビーイング」と会社の持続的な成長
を実現します
執行役員常務
人事・総務室長
角島 猛
富士電機は「多様な人材の意欲を尊重し、チームで総合力を発揮する」を経営方針に、「人を大切にする」を企業行動基準に掲げ、人権尊重や安全衛生、社員の健康確保をすべての基盤に置きつつ、会社の持続的成長に向けて核となる人財の活躍推進、育成、適正配置など、「人への投資」に積極的に取り組んでいます。
将来予測が容易ではなく、新たな価値観へのシフトが進む環境において、当社が持続的成長企業であり続けるために、最も大切なのは「人財」です。事業環境が目まぐるしく変化する中で、経営戦略と連動し、環境変化に適応しながら新たな付加価値を創出し続けることができる人財を育成すべく、各種施策を展開しています。
2026年度中期経営計画における人財戦略においては、これまでの従業員ファーストの考え方を堅持しつつ、ウェルビーイングと会社の持続的成長の好循環の実現をビジョンとして掲げています。個性と多様性を尊重した人財マネジメントを通し、社員一人ひとりが富士電機で働くことに幸せを感じながら自律的に生産性を高める仕組み、多様な人財が部門や地域の垣根を越えチームとして総合力を発揮できる環境整備を、グローバルに推し進めていきます。
人権尊重の取り組み
「世界人権宣言」など人権に関する国際規範および、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を踏まえ、「人権を侵害しない・人権侵害に加担しない」持続可能な企業体質の構築を推進しています。「従業員の人権に関する方針」に基づき、国内外の事業所、連結子会社を対象に人権デュー・デリジェンス※の取り組みとして人権・労働アセスメントを実施しています。
2023年度は、社員向けに「ビジネスと人権」をテーマにe-ラーニングを実施し、国際的に合意された人権に関する考え方や企業活動と人権の関わりについて理解を深める研修を実施しました。また、これまでの当社の人権に関する取り組みを改めて整理し、2023年10月に英国現代奴隷法に対応する声明文を開示しました。
2024年度は、人権・労働アセスメントの実施年度であり、国内外連結子会社の取り組み状況の点検・改善を実施いたします。過年度の未達項目は改善が完了していますが、その後の状況について改めて確認し、継続的な取り組みとして進めていきます。
※人権デュー・デリジェンス:人権に関する悪影響を事前に認識し、防止、対処する取り組み
多様な人財の活躍推進
女性活躍推進
経営方針に掲げる「多様な人材の意欲を尊重し、チームで総合力を発揮する」のもと、ダイバーシティを推進しています。多様な人財による変化への適応、新たな価値創出を通した会社の持続的成長の実現に向け、多様な人財が活躍できる環境整備を進めており、特に女性活躍推進施策を強化しています。
採用、キャリア形成支援、働きやすい環境整備の3つの側面から取り組みを推進しており、理工系出身の女性社員を中心とした採用プロジェクトや、若手層を対象としたメンター制度、キャリア形成を支援する研修制度を設けております。2023年度からは、経営人財育成への女性社員の積極登録を促し、16名の女性社員が登録されました。
2024年度からの中期人財戦略においては、将来の女性役員輩出を視野に、女性ライン職(2026年度目標、課長以上450名、うちライン職40名)育成施策を推進する計画です。
2021年度末 | 2022年度末 | 2023年度末 | 2026年度末(目標) | |
---|---|---|---|---|
女性社員比率 | 13.3% | 13.6% | 13.8% | — |
女性採用※1比率 | 20% | 21% | 21% | 20%以上 |
女性管理職※2比率 | 2.8% | 3.2% | 3.6% | 4.8% |
女性役職者※3比率 | 295名 | 316名 | 336名 | 450名 |
当社ならびに当社と同一の人事制度を採用する国内子会社(6社)を対象
※1 女性採用:大卒、高専卒 ※2 管理職:課長職以上 ※3 役職者:主任クラス以上
海外連結 | (参考)国内外連結 | |
---|---|---|
女性社員比率 | 39.9% | 24.8% |
女性管理職比率 | 28.0% | 9.1% |
TOPICS
女性活躍推進の取り組み
富士電機では、2006年より女性活躍推進の取り組みに注力しています。これまでの採用強化、キャリア形成支援、働きやすい環境整備を軸とした取り組みにより、女性社員の母数、役職者数ともに拡大しており、女性活躍推進の取り組みは職場に定着しています。
今後は、将来的な女性役員の輩出を視野に、部長や課長といった女性ライン職の育成強化を図ります。2023年度に女性社員向けに実施したアンケートでは、ライン職になるにあたっての自身のマインドセットを不安視する声が多く聞かれました。このような声を踏まえ、2024年度は将来のライン職候補となる女性社員に対し、経営幹部によるメンター制度の導入を計画しています。
女性管理職研修 | 女性管理職が経営参画できる素養を身に付けるための研修を実施 |
---|---|
重点キャリア 対象者の育成 |
女性社員のキャリアアップのための教育研修。基礎能力向上に向けた座学講座と課題解決の実践演習を通し、上位職挑戦の支援を実施 |
シスター制度 | 女性先輩社員をアドバイザーとした部門横断的なメンター制度 |
理工系女性採用 プロジェクト |
職場で活躍する理工系出身の女性社員の生の声を伝えるセミナーなどを通じて、理工系女性社員の採用につなげる取り組み |
シニア社員の活躍推進
労務構成の高年齢化、労働力確保の観点から、シニア社員の活躍推進にも注力しています。当社における豊富な経験とそれに伴う技術・知見を有する60歳以上のシニア社員層は貴重な戦力です。社員が60歳以降もいきいきと働くことができる制度整備を通し、社員のライフキャリアの充実と事業継続の両立を実現しています。
一般社員を対象とした「選択定年延長制度」は、2000年度の導入以降、社員に浸透した仕組みとして、社員が各々のライフプランに応じた定年年齢を60~65歳の中から選択しています。2023年度には、社員ニーズに応え、定年年齢の決定時期や、決定後の年齢変更をより柔軟にする制度改定を行いました。幹部社員を対象とした「シニアタスク制度」は、60歳以降もパフォーマンスによっては60歳以前と同水準の処遇を可能とする仕組みや、高いスキルや知識を発揮し、最長75歳まで活躍できる「65歳以降雇用ガイドライン」など、シニア社員の活躍推進につなげる仕組みを設けています。
2024年度からの中期人財戦略においては、シニア社員の更なるモチベーション向上に向け、60歳以降の働き方と処遇の在り方について、検証・検討を行う計画です。
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|
一般社員:選択定年延長制度人数(選択率) | 254名 (82.5%) |
270名 (82.1%) |
301名 (85.5%) |
幹部社員:シニアタスク制度人数(選択率) | 120名 (96.8%) |
142名 (91.6%) |
127名 (94.8%) |
障がい者活躍推進
当社は、1994年に障害者雇用促進法に基づく特例子会社㈱富士電機フロンティアを設立しています。同社は、障がい者の採用と職域を拡大することで順次活動範囲の拡大を図り、障がい者の活躍推進に取り組んでいます。2023年度には、筑波工場での活動を開始し、主な国内工場拠点(14拠点)に活動範囲が広がりました。同社の主な職域である社内書類の配送業務や清掃業務に加え、特に、製造支援・軽作業業務への職域拡大に積極的に取り組んでいます。
2024年6月現在、457名の障がい者が在籍し、障がい者雇用率は2.95%と法定雇用率(2.5%)を大きく上回っています。今後も毎年10名程度の採用を継続するとともに、職域の確保・拡大と安定的な雇用に取り組んでいきます。
人財育成の取り組み
企業行動基準に、社員一人ひとりの成長とチームの総合力の発揮を実現する人財育成の強化を表明し、社員の能力開発の充実と教育投資の強化を図り、強力なリーダーシップと高い専門性を発揮できる人財の育成を強化しています。
次世代経営人財の育成
将来の経営幹部人財の育成のポイントは大きく3点です。1つ目は、育成対象者の若手段階からの厳選、2つ目は事業・職種ローテーションや海外事業での経験を必須とした計画的なOJTの実施、3つ目に選抜研修への参加です。また、ライン統括職の計画的育成をねらいとして、「ライン後継者計画制度」を運用しており、後継育成が必要なポストと個人の育成を結び付け、より実効性の高い経営幹部人財育成に取り組んでいます。年に一度、育成対象者の人選内容、育成的ローテーションの実施状況、選抜研修の受講状況などは執行役員と共有・議論し、内容の充実を図っています。
グローバル人財育成
海外事業の拡大に向け、グローバル人財育成施策に取り組み、2017年度から、全社横断的なグローバル人財育成制度として、日本社員の海外拠点への派遣による育成(2017年からの累計51名)、海外拠点社員の日本でのトレーニング(同78名)、日本国内での語学教室(同1,659名)の運営・改善を進めてきました。
今後は、2023年度より着手した海外拠点の経営人財育成施策を軌道に乗せ、PDCAサイクルを確立していきます。
リスキリング・デジタル人財の育成
多様な人財が「自律的で生産性の高い働き方」を実現できるよう、事業ニーズに応じたリスキリングや、生産性向上に向けたアップスキリング、自律的なキャリア形成の支援などの人財育成に取り組んでいます。
特に、AI・IoTなどのデジタルトランスフォーメーション(DX)先端技術を活用した課題解決、新たな価値創出や社内業務の生産性向上に向け、デジタル人財の育成に積極的に取り組んでいます。開発を担う技術者だけでなく、生産部門や営業・サービス部門も含めDXリテラシー向上に向けた教育を実施しています。DX関連講座の受講者は、2021~2023年度の3年間で、延べ9,000名超となりました。
また、社員のキャリア形成に向けては、キャリアデザイン制度の運営や階層別研修に加え、ビジネススキル系、技術系など、多様な選択講座を用意し、社員一人ひとりが必要とする成長を積極的に支援しています。
働きがいのある職場づくり
働き方改革
ワークライフバランスの充実や両立支援をはじめとする多様な人財の活躍推進と、業務品質・効率の向上につながる働き方への変革を通した生産性向上の両側面から、働き方改革を進めています。
長時間労働縮減や休暇取得促進の取り組みについては、2017年度より、メリハリある働き方の実現に向けて、地道な啓蒙活動やITを活用した労働時間実態の見える化を中心に取り組んできました。2024年4月から適用となった建設業の時間外上限規制に対しては、勤務形態の柔軟化や業務プロセスの改善などにより法令遵守の体制を整備しています。
また、時間価値の高い働き方を実現している社員への手当支給のルール「スマートワークインセンティブ」も整備し、生産性向上に対する個人レベルの意識変革を図っています。
働く時間・場所の柔軟化に関する多様な勤務制度については、社員ニーズを踏まえながら段階的に利用範囲を拡大しています。2023年度は介護事情を有する社員の利便性向上を図る制度改定を行い、より柔軟に働くことができる環境整備を進めています。育児・介護休職制度や時間短縮勤務制度、配偶者の転勤による休職制度など、家庭との両立を支援する制度を整備しています。
加えて、職場環境を起点とした生産性向上を目指し、職場のフリーアドレス化を推進しています。紙資料の極小化や席数減で空いたスペースを利用した打ち合わせブースの充実を通し、生産性高く働きやすい環境の整備を進めており、2024年度には本社地区の完全フリーアドレス化を計画しています。
社員とのコミュニケーション
社員の意識を把握するために、国内外連結子会社を対象として、計95設問からなる社員意識調査を毎年実施し、会社満足度、職場満足度、仕事満足度などの社員の全体的な意識に関する定点観測を行っています。調査結果は経営会議にて報告するとともに、組織ごとの分析結果を各部門長・子会社代表にフィードバックし、それぞれの課題改善に活用しています。
これまでの社員意識調査結果は、中間管理職のマネジメント強化に向けた研修、社員のキャリア形成支援や教育研修の拡充、技能系社員の改善・合理化の取り組みに対するインセンティブといった各種人財施策にダイレクトにつなげています。
社員意識調査結果は、人的資本に関する取り組みの指標として位置付けています。2024年度以降は、会社満足度に加え、人財戦略ビジョンの実現度合を測定する指標として、仕事のやりがい、ワークライフバランス、心身の健康、評価への納得度などから構成されるウェルビーイング指数を新たに設けました。
2018年度 | 2023年度 | |
---|---|---|
月当たり平均残業時間 | 24.4 | 19.9 |
年休平均取得日数 | 14.5 | 18.1 |
在宅/サテライト延べ利用者数 | 2,397 | 113,728 |
育休制度 内、男性取得人数(率) |
107 6名(3.1%) |
151 60名(29.1%) |
目標 | 2022年度実績 | 2023年度実績 | 2026目標 |
---|---|---|---|
会社満足度※1 | 3.8pt | 3.8pt | 3.8pt以上 |
ウェルビーイング指数※2 | — | 3.5pt | 3.6pt以上 |
総合的な会社満足度を示す代表設問「富士電機で働いていることに満足している」に対する回答平均値
仕事のやりがい、ワークライフバランス、心身の健康、評価への納得度に関する設問に対する回答平均値
(1~5ptの5段階評価、点数が高い方が肯定的。調査対象範囲は当社および富士古河E&C(株)を除く国内外連結子会社)