富士電機が貢献する環境・社会課題
パワー半導体で、世界の風力発電を支える

image
ナセルの内部構造イメージ図

近年、脱炭素化に向けて風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及拡大が進んでいる。風力発電は、風の強さなどによって、発電出力の電圧や周波数が変わるため、日本国内で言えば周波数を東日本は50Hz、西日本では60Hzに変換する必要があり、電力変換装置内でその役割を果たすのがパワー半導体だ。(上記イラスト参照)富士電機は、こうした再生可能エネルギーの発電システムに搭載されるパワー半導体の小型化や高効率化を実現。風力発電機の設計、製造、販売において世界トップシェアを誇る「ヴェスタス社」をパワー半導体で支える。

世界トップシェアの風力発電メーカーを支える

電力変換装置に搭載されているパワー半導体 PrimePACKTM 3+
大容量IGBTモジュール

デンマーク北部に立ち並ぶ巨大な風力発電用の風車。この風車に富士電機製のパワー半導体である大容量IGBTモジュールが使われている。風力発電におけるパワー半導体の役割について、開発部門の関野裕介は、次のように話す。
「風力発電は、ブレードと呼ばれる羽を風力で回転させて発電機を回し、電気を生み出しますが、その電気を送電線に流すためには、電圧と周波数を変える必要があります。その電力変換を担うのがパワー半導体です。富士電機のパワー半導体は、世界No.1の風力タービンメーカーであるヴェスタス社の期待にも応えています」

供給ニーズを満たす体制をわずか1年で整備

デンマークを拠点とするヴェスタス社から、新しいパワー半導体の供給を打診されたのは2017年のことだ。ベンダー選定におけるヴェスタス社最大の課題は、「新型素子の安定した供給能力」。これに対して富士電機は、営業・マーケティング・開発・調達・品質管理をはじめとした部門横断型のチームを発足させた。各部門の連携を徹底し、部品のサプライヤーとの議論を重ねることで、企画から量産試験までを短納期で実現する開発体制を垂直立ち上げ、供給をコミットすることでヴェスタス社からの信頼を獲得した。同プロジェクトの旗振り役を務めた営業の高木克彦は、当時をこう振り返る。
「日本では、なかなか目にする機会のない風車ですが、ヨーロッパでは国家レベルのプロジェクトが次々と立ち上がっており、その需要はさらに高まっています。だからこそ、安定的に、多くの製品を供給することが大前提でした。通常は3年近くの時間を要する体制整備をわずか1年で成し遂げられたのは、製品の立ち上げに伴う新技術の導入に部門を超えて挑み、全員がやり切ったからこそ。このプロジェクトに関わってくれたメンバーを誇らしく思っています」

限界までこだわり抜いた富士電機のクオリティ

ヴェスタス社からの受注を勝ち取る上で、もうひとつの課題となっていたのが、製品の特性向上だ。開発部門は、試行錯誤を繰り返し、最先端の技術を活用して「電力損失の低減」を成し遂げるとともに、放熱性の高い基板を適用することで「IGBTモジュールの出力電力の向上」を実現した。
「出力電力を上げようとすると、チップの薄型化による半導体の抵抗値の低減が必要となります。しかし、薄型化により耐電圧性が下がるため、電圧に対して製品は壊れやすくなります。背反する事項をいかに両立させるか。そのために徹底的に検証を続けました。このプロジェクトには、半導体事業の未来を大きく左右するほどのポテンシャルがありました。メンバーたちも強い信念と意欲をもって、開発に向き合ってきました」(関野)

最高の賛辞に、さらなる挑戦で応える

半導体事業本部 営業統括部 営業第一部 高木克彦さん

確かな品質と安定供給の実現で、富士電機はヴェスタス社が進める重要プロジェクトに遅滞なくパワー半導体を納品することができ、この実績が認められ、追加の供給契約を獲得することもできた。
「プロジェクト完了後、ヴェスタス社の経営メンバーが来日した際に『You are a hero in Vestas(あなたたちはヒーローだ!)』という最大級の賛辞をいただいたときには、これまでにないほどの達成感がありました。脱炭素化に向けて、世界は大きく動き始めています。その課題に技術で貢献できることを誇らしく思いますし、これからのチャレンジに胸を躍らせているところです」(高木)

開発部門 関野裕介さん

「パワー半導体には大きな可能性があります。今回のような再生可能エネルギーや、鉄道や自動車などのモビリティに対する貢献はもちろん、電気を使って水素を生み出すといった次世代の燃料に貢献するチャレンジにも大きく役立つことが期待されています。さらには、新たな素材であるSiC(シリコンカーバイド)を使うことで、パワー半導体そのものの性能も飛躍的に向上させることができます。さらなる可能性を見出すためのチャレンジを続けていけることは、私たち技術者にとって、何よりの喜びだと思っています」(関野)

(左から)半導体事業本部 営業統括部 営業第一部 高木克彦さん、
Vestas社 上席研究員 Dr. Phillip Carne Kjar様、グローバル購買部長 Jacob Gottsche様、
FEE Christian Kochさん、営業第一部 津田雅之さん

貢献するSDGs目標

エネルギーをみんなにそしてクリーンに

すべての人々が、手頃な価格で信頼性の高い持続可能で現代的なエネルギーを利用できるようにする
多様な製品ラインナップと最先端の技術を有するパワー半導体は、当社の重点目標「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」に貢献します。