富士電機が貢献する環境・社会課題
データセンターを支える無停電電源装置(UPS)

大プロジェクトを進めた若手3人が悟ったチーム力の大事さ

千葉県白井(しろい)市にある「データセンター」は敷地面積は約4万㎡。大手シンクタンクの調べによると、データセンターの多くは敷地面積が1万㎡程度というなか、国内では大規模の部類に入る。

この大規模データセンターには、ロボットやAI、太陽光発電設備などの先端技術が集まっている。その中に電気を自在に操る富士電機のパワーエレクトロニクス製品が使われている。

この富士電機製品の開発から納入までのミッションで中心的存在を担ったのは、若手社員たちだった。

飛躍的に増えたインターネット通信を支える施設

新型コロナウイルスのパンデミック以降、「リモートワーク」が広く普及した。巣ごもり需要が高まり、インターネットショッピングやネット銀行が急速に広まった。

こうした動きに伴ってデータの通信量は増え続ける。今後は生成AIの開発・普及が進むことで通信量はさらに飛躍的に増えるとみられている。そのデータ保存などをするデータセンターは、サーバーやネットワーク機器を設置した特別な建物で、日本だけでなく世界中で新設が相次いでいる。

「そんなデータセンターに欠かせないのが、富士電機の『UPS』なんです」

営業を担当する前田は話す。

エネルギーソリューション統括部の前田
エネルギーソリューション統括部の前田

前田は2022年に新卒で富士電機に入社した。

「さまざまな会社のインターンシップに参加するなかで『一瞬たりとも電気を止めてはいけないところに、UPSというものが使われている』と知りました。インフラ関係に携わりたいと思っていたので、UPSという商材がとても魅力的に感じて、UPSで日本トップシェアの富士電機に入社したいと思いました」

考え方を根本から変える必要があった

UPS(無停電電源装置。Uninterruptible Power Systems)は、バッテリーを内蔵し停電時などに電力を安定供給する電源システムのこと。台風や落雷などの自然災害や、突発的な事故による電源トラブルから、サーバーやコンピュータなどの精密機器を守っている。

UPSはインバータなどで電力変換を行うが、その際に損失が生じてしまう。富士電機製は業界最高クラスの電力変換効率で、2023年7月に発売した最新機種では96〜98.5%を実現した。さらにランニングコストを低く抑え、CO2の削減にも貢献している。電気制御の信頼性が高いため、データセンターのような大規模なシステムから、金融機関のオンラインシステム、病院など幅広く活用されている。

2019年5月に、日本初の国内インターネット接続事業者「株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)」が、千葉県白井市に「白井データセンターキャンパス」を開設し、2023年夏には2期棟の運用が開始された。この白井データセンターキャンパスに納入されているのが、富士電機のUPSだ。

開発にかかわったのは、開発統括部の絹田。絹田は、2014年に富士電機に入社した。白井データセンターキャンパスの2期棟に設置されるUPSの開発は入社5年目の2019年にスタートした。

「データセンターの大容量化に伴い、それまでの倍以上の出力容量が求められていました。これには考え方を根本から変える必要がありました。従来はUPSを1台で完結させる形でつくっていましたが、拡張していける『モジュール型』にしようと思ったんです。2並列にして1200kVAや2400kVAにしたりするイメージです」

モジュール型を思いついたのは、富士電機の事業企画部からもらった「要素を分解してみるのはどうか」というヒントがきっかけだったという。

開発統括部の絹田
開発統括部の絹田

データ通信量が増加するのに伴い、富士電機のUPS開発部門も拡大し、メンバー数はどんどん増えた。絹田は、その中でも「UPSの構造」を専門にしている。

「2024年現在、2400kVAのUPSも完成しています。ただ、UPSの開発はこれで終わりではなくて、いまは次なる規格のものを開発しているんです。私の専門はUPSの構造ですが、富士電機のUPS部門には、構造のほかに電気など、さまざまなスペシャリストがいます。技術者は時折、変なプライドが邪魔をして『こんな低レベルなことを聞いたら、まずいかな?』と思ってしまいがちですが、そのような羞恥心が製品に反映されてはいけない。それぞれの専門家が深く追求したものをかけ合わせながら、本当にいい製品をつくっていきたいです」

文系でも超えられる!

絹田が開発した製品を、「バトン」として受け取ったのが、営業部門の前田だ。

「私が入社したとき、白井データセンターキャンパスのプロジェクトはすでに進んでいる状況でした。私は文系出身で、まだまだ電気の知識が十分とは言えません。もちろん、自分でも懸命に調べますが、どうしてもわからないことが出てきた際に、上司や先輩だけでなく、技術部や開発、工場の方々にも尋ねながら前に進むことの重要性を本件を含むさまざまなプロジェクトでも実感しています」

大事なのはお客様目線

2021年に入社した峯岸は、施設・電源システム事業部の一員として、受注後のシステムの基本設計から、試験、調達、さらには全体スケジュールの管理と幅広い業務を担った。

施設・電源システム事業部の峯岸
施設・電源システム事業部の峯岸

「データセンターを立ち上げる際、通常なら運用開始日から逆算して工程を考えるのが一般的ですが、今回は新型コロナウイルスの影響で、中国のロックダウンなど、予想外のことがたくさん起きました。中国で製造する予定だった部品が揃わない。一方で、納期は決まっている。どうすれば切り抜けられるのか、常に考えていました。経験が浅いので、上司や先輩に『こう考えているのですが、問題ないでしょうか』と確認しながら進めていきました」

代替品を探す、いま、手に入る材料は前倒しで購入しておく、据え付けなどの現地(白井データセンターキャンパス)での工程を短縮し、手配が遅れている機器の納期をなるべく長くとれるようにする……。これらをこなした峯岸は当時入社2年目だった。

IIJ白井データセンターキャンパス
IIJ白井データセンターキャンパス
白井データセンターキャンパス内に設置されたUPS
白井データセンターキャンパス内に設置されたUPS

幅広い容量のラインアップがあるのは、富士電機製品の特長の一つだ。顧客が要望する容量ぴったりのUPSを納入することができれば、顧客が支払う導入コストも低くなる。

「私たちメーカーは、常にお客様目線で仕事をしなければならないと感じました。容量の件でもそうですが、お客様が何を求めているのかを意識しながら、どう動くべきかを考えていかなければいけません。そうすることで、将来にもつながる関係性が構築されていくんだなと、今回の案件で改めて学びました」

富士電機のメリットを存分に活かしたい

今後心掛けたいことを書いた3人

今後心がけたいことは? 3人は30分ほど考えてから思いを紙に書いた。
「仕事をするうえで、お客様の想いはもちろん、自分の想いも大切に」(前田)
「技術者として、学ぶ姿勢を忘れてしまうと、大事なものを見過ごしてしまう」(絹田)
「今後も、自分で『選』んだ道を迷わずに未来を『拓』いていきたい」(峯岸)

2023年7月、3人が携わった白井データセンターキャンパス2期棟の運用が開始された。そのときの気持ちを尋ねた。

「うれしい。素直に、うれしいです」(絹田)
「やりきった、達成感。自信につながりました」(峯岸)
「社内で一丸となって、大きなプロジェクトを成功させることが、純粋に『すごい』と思いました」(前田)

しかし、若い3人には次のプロジェクトが待っている。前田は現在、IIJのクラウドサービスの主要拠点「松江データセンターパーク(島根県松江市)」の案件を担当している。ビッグプロジェクトがひと段落してほっと胸を撫でおろすのも、ほんのつかの間のことだ。

「若手でも、大きな仕事を任せてもらえるのが富士電機です。このメリットを存分に活かして、少しでも早く、たくさんのお客様の役に立っていきたいです」(前田)

3人の次なる挑戦はすでに始まっている。