こんなところに富士電機#4
大手化学メーカーのマザー工場でソフトセンサ設計ツールが活躍

UBE株式会社 宇部ケミカル工場

プラントの安定稼働と生産性向上に貢献

当社ソフトセンサ設計ツールの画面(イメージ)

 1897年に山口県宇部市で創業した大手化学メーカーUBE㈱(以下、お客様)。そのマザー工場である宇部ケミカル工場では、電子機器に使用されるポリイミドや、日用品にも使われるナイロンの原料となるカプロラクタムなど、数多くの化学製品が生産されている。
 化学製品の生産工程では、蒸発缶(注1)内の液体を定期的にサンプリングして濃度を分析し、品質を把握することがあるが、サンプリングの合間に濃度が変化した場合はその発見が遅れ、生産活動に影響を及ぼす恐れがある。また、濃度が不安定な状態になると結晶などの析出物が生じて濃度分析の障害となり、最悪の場合は生産が継続できないリスクもあった。そこでお客様が着目したのが「ソフトセンサ」だった。
 ソフトセンサは、リアルタイムに測定することが難しいデータを、測定可能なデータを使って推算・予測する手法だ。しかしソフトセンサの肝となるモデル式の構築には知見・ノウハウが求められ、設計工数の多さも課題となっていた。富士電機は、モデル式構築を効率化できるソフトセンサ設計ツール「EFPROSENS(エフプロセンス)」の開発(注2)を進めており、その実用化に向けてお客様と共に課題解決に当たることとなった。

本案件による成果が評価され「2024年度化学工学会賞『技術賞』」を受賞

 「ソフトセンサ設計に特化した本ツールは、モデル式の生成に自動機械学習を適用した業界初の製品です」と話すのは、当社技術部の田中さんだ。一般に、モデル式の構築には検証も含め数ヵ月を要するが、当社製品は業界で初めて自動機械学習機能を搭載し、数百通りのパターン計算が可能で、最適なモデル式を短時間で算出できる。お客様の生産現場では、受注から現場への実装、試運転までを延べ2週間で行い、結晶化によるトラブルの発生頻度を10%以下に抑制。プラントの安定稼働、生産性向上に貢献した。これらの成果が評価され、2024年度化学工学会賞と2024年度計測自動制御学会賞の「技術賞」をダブルで受賞(注3)している。
 当社山口営業所の小柳さんは、今後の意気込みをこう語る。「本技術は、製造現場の問題解決に直接役立つものです。鉄鋼、石油など、多岐にわたる分野に展開し、世の中を支えていきたいと思います」。

注1

液体を加熱して蒸発させ、濃縮や成分の分離を行う装置

注2

基礎理論は日本学術振興会プロセスシステム工学143委員会ワークショップ32にて構築。ツールの開発は奈良先端科学技術大学院大学の船津センター長、東京農工大学の金准教授が監修

注3

化学工学会賞技術賞は、奈良先端科学技術大学院大学、東京農工大学、UBE株式会社、UBEエラストマー株式会社、富士電機が共同で受賞。
計測自動制御学会賞技術賞は、奈良先端科学技術大学院大学、東京農工大学、UBE株式会社、三井化学株式会社、富士電機が共同で受賞。

富士電機、UBE㈱、UBEエラストマー㈱の関係者の皆さん