化学プラント・工場の基礎知識
化学プラントの自動化

化学プラントの自動化と特長

化学プラントのイメージ

化学業界は装置産業といわれています。一般に化学プラントは自動化・機械化が進めやすく、生産設備・装置の大型化によりスケールメリットを得やすいという特長があります。

化学プラントの生産工程は複雑で、製品も原料品、中間財、最終製品など多岐にわたります。

エチレンなどの基礎化学品は連続で大量に製造され、プラスチックや合成ゴムなど機能性化学品はバッチ式で少量多品種製造されます。

プロセス産業である化学業界では、化学プラント・工場のオートメーション技術としてプロセスオートメーションがよく採用されています。

産業用オートメーションとは

産業用オートメーションのイメージ

いままで人が行っていた作業を機械などに置きかえ、製造ラインの無人化・自動化を実現する技術・自動化形態を、産業用オートメーション、オートメーション技術呼びます。

オートメーション化を進めることで人的ミスの最小化、人が介入する作業の最小化が可能になり、危険な作業現場のお無人化による作業員の安全性確保などのメリットがあります。

また、自動化・機械化を進めることでプラントの自動制御システムによる24時間稼働も可能になり、生産性の向上などが期待できます。

産業用オートメーションはさまざまな制御システムがあり、主な制御機器としては分散制御システム(DCS:Distributed Control System)、プログラマブルロジックコントローラ (PLC:Programmable Logic Controller)やSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)などがあります。

産業用オートメーションの分類

プラント・工場の自動化形態は、生産工程の違いにより、ファクトリーオートメーションとプロセスオートメーションの大きく2つに分類されます。

ファクトリーオートメーション

ファクトリーオートメーション(FA:Factory Automation)とは、例えば自動車業界や電機業界など部品を組み立てて製品を作る工場の自動化のことを指します。

従来人が行っていたいままで人が行ってきた組立作業、溶接や塗装などを産業用ロボットなどで置き換え、自動化を進めることで、工場の生産性を高めることが可能になります。

ファクトリーオートメーションの特長は、製造ラインにトラブルがあった場合、機械を停止させ、作業を中断することができ、その後再開するということが可能なところにあります。また、制御システムには高速かつ、高い精度高を求められます。

プロセスオートメーション

プロセスオートメーション(PA:Process Automation)は素材産業・プロセス産業の製造工程・生産ラインや工場の制御・自動化のことを指します。

プロセス産業は原料に熱や圧力などを加え、他産業の加工素材となる製品を製造します。例えば石油からナフサ、ナフサから基礎化学品をつくる、牛乳からチーズをつくる、鉄鉱石から鉄をつくるなどがあり、これらの製造プロセスを自動制御する技術がプロセスオートメーションに該当します。

プロセス産業では製造工程で化学反応を利用するため、生産設備からえられるデータだけでなく、計測器等を用いてアナログデータ(温度・圧力・流量など)を監視し、適切に制御していくことが重要になります。このような制御をプロセス制御と呼ぶことがあります。

プロセス制御は、「お風呂のお湯の温度調整」によく例えられます。お風呂のお湯の温度調整は、実際のお湯の状態(湯加減)を確認しながら、給湯量や給温度を調整して、目標とするお風呂の状態に近づけていき、夏場と冬場で目標温度を変えたりしますが、これが代表的なプロセス制御のイメージなります。

ファクトリーオートメーションとプロセスオートメーションの違い

組立産業におけるファクトリーオートメーションとプロセス産業におけるプロセスオートメーションの違いは、生産工程にあります。

前者は生産工程を一時中断できるのに対し、後者は設備を強制的に停止させたとしても、始まってしまった化学反応を停止させることはできず、再開も容易ではないという特長があります。

また、プロセス産業では化学反応を監視しながら目標値に向けた制御をしていくため、組立産業と比較して高速な機械設備の制御が必ずしも求められるわけではありません。

プロセスオートメーションが適用される業界

プロセスオートメーションが適用される業界には化学業界の他、食品製造業、石油業界、鉄鋼業界、セメント・ガラス、製紙・パルプ、清掃工場などがあります。

食品プラント・工場

食品プラント・工場の特長の一つは労働集約型の産業で、他の産業と比較して人の作業が必要となる製造工程が多く存在することです。

統計データ等では生産性が相対的に低い産業とされており、今後どのように自動化・機械化をすすめ、生産性・付加価値を向上させていくかが業界全体の課題となっています。

他のプラントと異なる点は、原料が生ものであり季節の影響を受けることや、原材料の長期保存がしにくいこと、異物混入対策・消費期限の管理、原料の調達から出荷までいわゆる食品の安全性を確保する必要があるという特長があります。

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鉄鋼プラント

製鉄所は広大な敷地に加え, 多様な設備で構成され, 原材料の加熱・冷却を伴う工程で大量の水やエネルギーを必要とするという特長があります。

鉄鋼プラントでは24時間連続稼働を行う必要があり、安定稼働の仕組みの構築、製造設備の保全・保守効率が求められます。

鋳造工場

鋳造工場ではバッチ処理や高度なプロセス制御が行われており、また溶解炉や冷却装置などの設備に多くのエネルギーを消費します。 近年では、鋳造工場は環境負荷軽減などを目的にカーボンニュートラル化を目指す動きが広まっています。

これら課題を解決するために、鋳造工場ではIoTによる効率化や、省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入、効率的なプロセス改善、熱源転換などの取り組みが進められています。

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紙・パルププラント

紙・パルププラントは装置産業であり、24時間連続操業が基本となる産業です。製造技術が確立している一方で、設備要素も多いという特長があります。このため、自動化・機械化と、いかに安定操業させるか生産性向上に必要とされます。

原料が木材であるため種類・樹齢や伐採時期により特性がことなり、製造工程は複雑で、時間もかかり、品櫃管理が難しいという特長があります。

清掃工場

清掃工場では、社会のごみの増大、環境問題、エネルギー問題などの課題に対応するため高機能化・大型化・複合化といった特長があります。

他のプラント同様にプラント制御の自動化が進んでおり、かつ、環境保護対策に配慮した、高い運転性能と安全運転管理が必要とされます。

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