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地道に築きあげた、ものつくりを止めない社内一貫生産体制。

部品不足、納期遅延。
それでも「生産に集中する」だけ。
地道に築きあげた、
ものつくりを止めない
社内一貫生産体制。

新型コロナウイルスに、ウクライナ情勢。未曾有の事態に見舞われたものつくり業界。そんな中、私たち富士電機機器制御が生産を止めずにものつくりを続けることができた理由とはーー。
今回の記事では、当社が長い期間をかけ体制強化に取り組んできた「社内一貫生産」について掘り下げます。

世界情勢による部品不足と納期遅延。
それでも生産を止めることはなかった理由。

2020年、新型コロナウイルスの世界的流行により、世界は誰もが経験したことのない事態に見舞われました。さらに2022年以降、ロシア・ウクライナ情勢も重なるとあらゆる製造業のサプライチェーンが大きな影響を受け、まさに未曾有の困難に直面しました。
FA業界では、製品に使用する基本的な部材が入手しづらくなり、サプライヤーや協力工場からの部品供給が滞り、納期遅延の問題があらゆる現場で発生。パンデミックによる行動制限により「工場に人がいない」という事態もあり、ものつくりの常識は瞬く間に覆されました。

私たち富士電機機器制御ももちろん例外ではなく、部品不足に見舞われ、納期のコントロールに苦しむ事態も余儀なくされました。多くの受配電機器メーカが同じように納期の回答に苦慮する中、当社は生産のペースこそ落ちながらもなんとか生産を続け、「ものが作れない」「いつ供給できるかわからない」というお客様に不安を与えるような回答をするのではなく、たとえ納期が長期化したとしても「納期の目処をお伝えする」ということにこだわり続けました。

未曾有の事態の中、私たちが生産を続けることができたのには一つの理由があります。それは、時間をかけて築きあげた当社ならではの「社内一貫生産」体制です。

つくれるものは、全部自分たちでつくる。
社内一貫生産に流れる「自前の精神」

吹上工場内の部品の様子
吹上工場内の部品の様子

2020年の事態が発生するさらに以前から、当社は何十年という時間をかけ、社内一貫生産の体制づくりに取り組んできました。当社には吹上事業所、大田原事業所、秩父富士という3つの生産拠点があります。生産品目は工場ごとに異なり、取り組みも全く同じというわけではないのですが、「外部からの調達をなるべく少なくし、素材を仕入れたら部品から自前で作る」という考え方が貫かれています。

例えば、秩父富士で製造しているコマンドスイッチは、市場で購入しやすいねじやばね以外、本体の樹脂部品や接点の金属部品は社内で製造しています。
樹脂成形品は、素材として樹脂ペレットを購入し、社内にある射出成形機で1から生産。電極と回路に使う銅部品も、銅板を仕入れてプレス機で打ち抜いて自社製造しています。樹脂部品の製造ラインには射出成形機30台以上がズラリと並び、24時間体制で樹脂部品を作り続け、隣のエリアでは同じくプレス機が一定のペースで金属部品を打ち出しています。
さらに言うと、これらの加工に使う金型も設計から製造、メンテナンスまですべて自社で手掛けています。

吹上工場も同様で、製造しているマグネットスイッチ樹脂成形品はコロナ禍になる7年以上前から成形工程を他の工場から移管し、内製化できる体制を整えました。それだけでなく、製造に必要なロボットなどを一部自社で開発するなど、社内一貫生産を効率よくしていくための現場づくりにも積極的に取り組んでいます。

ブレーカを製造する大田原工場は、サプライヤーも社内生産の一部と捉え、素材の調達から部品の製造、出荷の状態までサプライヤーの範囲も総合的に把握し、材料供給も含めて生産の連携を密に行いました。

これらは会社全体としての方針という向きもありますが、それぞれの工場が自ら積極的に社内一貫生産の現場づくりに動いたという側面があります。吹上の現場の社員はこう振り返ります。「どの現場でもきっと社員一人ひとりに、部品から完成品の生産までできるものはすべて自分たちでつくるという「自前の精神」があったからこそ、外部環境に影響されにくい体制を築くことができ、部材不足の中でも生産継続が実現できた」と。

「工場一丸となり乗り越える」
社内一貫生産の背景にあった、過去の経験。

社内一貫生産体制づくりの歴史をもう少し振り返ります。実は、この取り組みのきっかけになった出来事があります。それは、2008年のリーマンショック。世界の経済に多大な影響を与え、多くの会社が事業の再構築や人員の整理などに追われる中、当社も多くの困難に見舞われました。しかし、ものつくりの要であるのは「人」。困難の中でもひたむきにものつくりに取り組んでくれる現場の人を守るべく、人員配置の最適化を行い、なんとかそこで損益を生み出すことに奮起しました。徹底的にサプライチェーン・マネジメントを見直し、
・材料調達も自分たちで行う
・内製比率の向上
・ものつくり作業の簡便化・自動化
といった改善に取り組みました。

当時を知る大田原工場の社員はこう振り返ります。
「『どんなものでも当日部品を生産し、明日中に製品を組み立てて出荷する』という非常に高い目標を掲げ、製品在庫を減らしつつ、最低限の部品在庫で要求される量を効率的につくる『適正在庫』『後引き生産』を行い、現場の改善を幾度となく重ねました。工場が一丸となり、なんとか苦難を乗り越えたという経験があるから、コロナ禍のときも乗り越えられるだろうという雰囲気がありましたね。」

お客様のために、「生産に集中するだけ」。
今後はデジタルを生かした体制の高度化へ。

取材を通じ、当時を振り返る秩父富士の横田氏
取材を通じ、当時を振り返る秩父富士の横田氏

こうした改善を10年以上続けたことが、新型コロナ・ウクライナ情勢を受けても生産を止めずに続けられたという結果に結びついたのは間違いありません。
吹上、大田原、秩父富士の社員は口を揃えてこう振り返ります。
「一貫生産と内製化は昔からやっていましたし、納期問題が取り沙汰されるようになった際も、お客様のためにしっかり作って納めることに集中するだけでした」。

実直に、しっかり作ることに集中する。だからこそ、たとえ遅れるとしてもお客様に確実な納期を伝えることもできる。生産の継続とともに続けた確実な納期回答は、「部品が入る目処が分かれば、製造の計画が立てられる」とお客様から評価いただきました。

幸い、新型コロナウイルスの状況は落ち着きを見せてきていますが、将来、いつまた経験したことのない事態が訪れるかは誰にもわかりません。今後に向けては、これまでの一貫生産にデジタルの技術を加え、さらなる高度化を目指しています。

大田原工場の社員は言います。
「実際のところ、一貫生産は自分達の手で部品加工や部材の管理をしなければならず、その分の手間が増えるのも事実。一方で、人の手によるところが大きかったからこそ、コロナを乗り越えられたと言う側面もあります。現状では、人の手と仕組みが絶妙なバランスで強靭化されていたということではないかなと。いまの人手のまま、これからさらに効率良く製造するためにはデジタル技術の活用は不可欠です。そこで、合理化の手段のひとつとしてデジタル化のエッセンスを加え、低コストで効率的に作れる仕組みを検討しています。たとえば現在、部材の管理は昔ながらのかんばん方式で部品や部材の管理をしているところを、ICチップを導入して遠隔からも材料の移動状況が分かるようにするとか。デジタル技術を活用していけば、一貫生産ももっと効率化できるはずです」

長い年月をかけて強化してきた社内一貫体制の取り組みはいま、「基本、つくれるものは自前でぜんぶつくる」という富士電機機器制御の精神として根付いています。今回の事態を巡る成果と課題を教訓に、今後もお客様のニーズに真摯に応えていくために、生産体制のさらなる強化を図ってまいります。