ものつくり業界全体が、それまでの常識を覆された、新型コロナウイルスの世界的流行。
臨機応変な対応や状況に合わせたものつくりの考え方のシフトなど、メーカはこの2年間をどのようにして乗り越えたのか?
今回は福井県を拠点にプラント設備をはじめ、産業機械のオーダーメイドまでトータルに手掛ける株式会社三和商会様と、
コロナ禍におけるものつくりを振り返ります。
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柳原明仁 様株式会社三和商会 常務取締役
兼)株式会社三和テクノ
取締役統括部長 -
大塚 理 様株式会社三和商会
鯖江支店 課長
記事中の部署および役職名は取材当時のものとなっております。
株式会社三和商会…以下三和。富士電機機器制御…以下FCS。
設備から建屋まで。
工場をまるごとつくれる株式会社三和商会様
FCS:はじめに、株式会社三和商会様についてお伺いさせてください。御社ではどのようなものを製造されているのでしょうか。
三和 柳原:私たちは主にプラント設備をはじめ各種建築設備(空調や給排水衛生、電気・施工管理)を、設計からメンテナンスまでワンストップで請負っています。 また同グループの三和テクノでは産業機械の企画・設計・製作・施工・アフターサービスから制御ユニット製作、電気部品組立を全般的に請負っています。
FCS:とても事業の幅が広いというか、総合的なものつくりをされているんですね。
三和 柳原:工場を建てましょうというときに、そのプラントに合わせて建屋からつくるというイメージです。
三和 大塚:建屋だけでなくその中身もつくるので、たとえば装置のレイアウトを先に考えてからそれを入れるための建屋をどうするか。という風に対応するケースも多いです。
FCS:工場まるごとつくれるといった感じなんですね。建屋は先にあって、中身の装置だけを納品するというケースもありますか?
三和 大塚:ありますね。設備そのものから立ち上げる場合と、中身の装置や制御盤だったりを制作するケースは、比率でいうとだいたい半々くらいじゃないでしょうか。
FCS:顧客となる製造業には、どのような業種がありますか? 福井県以外のお客様のお仕事もされる感じでしょうか?
三和 柳原:業種はもうさまざまですね。案件ごとにオーダーメイドというか、すべてがオリジナルの一品料理といった感じです。
三和 大塚:県外の仕事も頂戴しますし、海外の案件もありますね。
FCS:海外も!そうすると昨今の、新型コロナウイルスなどの情勢は大きく影響したのではないでしょうか?
三和 大塚:それはもうだいぶ変わりましたね。現場に人がいるのも当たり前じゃなくなりましたし。
三和 柳原:そうですね。それこそ半導体不足などはダイレクトに影響出ましたよね。あとは少し前の出来事になりますが、タイの洪水もありましたし。ここ最近でものつくりの構図が変わったという感じがしています。
手に入る部品ありきでの設計。
販売店、機器メーカの尽力も欠かせなかった。
FCS:ものつくりへの影響について、もう少し具体的にお聞かせ願いますか?
三和 大塚:とにかく、「つくるための部材がない」ということが大きかったですよね。販売店各社に必要な製品を問い合わせても「あれはない」「それもない」という返事ばかりでした。
FCS:その状況に合わせてどのような対応をされたのでしょうか?
三和 大塚:そこがまさに考え方というか構図が変わったというところでして、普通はまず設計をしてから機器を選定して発注という流れだと思うのですが、ものありきといいますか、確保できる機器を先に確認して、それでできるものを設計してつくるという方向にシフトしました。
三和 柳原:汎用機器をたくさんつくるというよりは、カスタムメイドで装置をつくる事業だからこそ、そういうシフトがしやすかったというのはあるかもしれないです。
FCS:それは結構大きな変化ですね。
三和 大塚:販売店を通じて「こういう機器はありますか?」と聞いて、あるとなったらそれでつくろう!とか。
三和 柳原:同時に製造の予測を見ながら、機器があるときに買っておくという動きもとりましたね。
三和 大塚:在庫のある機器を見つけて、元々の設計を変えて再提案するということもありました。本当にギリギリの対応を繰り返した感じですね。
三和 柳原:お客様の方も納期優先というか、その辺がシビアになってくるので、設計工数も極力減らしながら、納期のコントロールもとても難しかったですね。
FCS:設計を変えての再提案って、あまり聞かないレアなケースですよね。三和商会様への信頼感があるからこそ、お客様も再提案を受け入れていただいたのではないかと想像します。
三和 柳原:部材がないということ自体もですが、「いつ収められますか?」と機器メーカに問い合わせても、明確な回答をいただけることが少なくて。もちろん事情はわかっているので理解はしているんですが。
FCS:そうですよね、その点に関しては我々も苦心しました。ちなみに、弊社の機器を視野に入れてくださるようになったのは、そのタイミングなんでしょうか?
三和 大塚そうですね。機器があるかどうか、いろいろなところに問い合わせていく中で、販売店の方がFCS様の製品を紹介してくださって。元々あまり採用数は多くなかったのですが、状況が状況なので使ってみようということになりましたね。
三和 柳原:私たちが考え方をシフトしていくなか、販売店の方も我々の状況をご理解いただき、バックアップしてくださいました。在庫も即座に確保して必要なときに納入できるように対策をとってくれていたと聞きました。そうやって親身に対応してくれるのもFCS製品を使うきっかけになりました。
三和 大塚:販売店の方は本当に親身に対応くださって、棚をオフィスに増やして在庫を2倍確保したと伺いました。
FCS:我々は販売店と二人三脚で動いていますから、そういうお話はすごく心強く感じます。
三和 大塚:コロナをきかっけにFCS様の機器の採用は大幅に増えましたし、正直だいぶ助けられたなと思っています。
FCS:ありがとうございます。あの状況を同じく経験した一メーカとしても、そう言っていただけるのはなによりありがたいです。
機器が確保できる
「目処がわかる」のが、とても大きい。
三和 柳原:FCS様は、機器の納期目安を報告するレポートの配信も早かったですね。販売店の在庫確保の努力もあったと思うんですが、どのような対応を取られていたんですか?
FCS:実は弊社は、コロナ禍関係なく、ずっと以前から製造の内製化に取り組んでいたんです。素材を仕入れたら、機器からつくれるものは自分たちでつくる。もちろん工場によっては一部外注から仕入れるものもあるのですが、外注先もまとめて状況を見える化して、サプライチェーンも効率化を図るということに取り組んでいました。
三和 柳原:海外から調達していたりすると、ロックダウンとかかかるともう状況が読めなくなるといったこともあったのでしょうね。
FCS:そういう情勢に左右されにくかったというのはあると思います。もちろんそれでも納期が遅れてしまうこともあったのですが、「製造を止めない」ということはなんとか死守できました。
三和 柳原:ロックダウンになるといつ解除になるかわからないし、解除してもじゃあ部品はいつ入る?という話になるし。納期を聞いても「◯ヶ月以上」とか、「わからない」という回答も多かったりしました。でもFCS様は「何月には納入できる」という明確な目処をレポートしてくださった。あれは大きかったです。
FCS:ありがとうございます。うちも中国とかに拠点もあるのですが、工場で働く現場の方々が、だいぶ頑張ってくれたと思います。
三和 大塚:部品の納期のデッドラインが分かれば、計画が立てられますからね。「いつまでに」というのがわかるのが大事なことで。逆に無理なら「無理」と言って欲しいとすら思いましたね。計画が立てられないので。
三和 柳原:納期レポートも月に2回とか、こまめに報告がありましたよね。
FCS:納期レポートに関しても以前から報告のペースは変わっていないはずですね。とにかくあの状況下でお客様にご迷惑はかかっているから、できる限りのことをやらなければという思いは強くて。もちろんこの2年間でいろんな課題も出ましたし、それまで考えもしなかったやり方とかも生まれました。改善する余地はまだまだあると思います。とはいえ、仮にもしまた予期せぬ状況が起きたとしても、今回くらいの対応はできるというひとつのケースにはなったのかなと思います。
未曾有の情勢の中生まれた関係性を、
今後のものつくりにも。
FCS:現在、コロナ禍に関しては状況も落ち着きつつあり、納期も改善されつつある状況かと思います。コストもあるかと思いますが、いつか仕入れも以前に戻すとかそういったお考えはございますでしょうか?
三和 柳原:お客さんによるとは思いますが、装置の費用に占める機器のコストのウェイトがそれほど大きくはないのであまり戻そうという考えにはならないと思いますね。いまは、コストよりも安定して供給されることを優先に考えます。それが大切だということにこの数年で改めて気づいたのかもしれないです。
FCS:弊社製品の品質的な面はどうでしょうか?採用いただいてどうですか?
三和 大塚:信頼性など、問題ないと思いますよ。切り替えたところで特にクレームが出たとかそういったこともなかったので。
三和 柳原:毎回変えていたらそれはそれで大変ですしね。
三和 大塚:ものがないという状況だったので変えざるをえないということだったのですが、そもそもで言えば仕入れる製品を切り替えることって、工数もかかるしコストになるんですよ。
三和 柳原:それでもわたしたちはお客様が求めるものをお届けしたかったし、そのためにいろいろ動いたところを販売店さんや機器メーカのFCS様がものすごく支えてくださった。苦しい中でも関係性が築けたので乗り越えられた部分もあると思うんです。そういうのって財産ですよね。
FCS:お客様のためになんとかしたいという同じ想いが根底に流れていたのだと、お話を伺いながら実感しますね。
三和 大塚: 我々装置メーカも、機器メーカ様も販売店も同じ方向を向くというか。
FCS:おっしゃるとおりですね。
三和 柳原:今後も北陸を中心に、日本・そして海外の製造業を支える企業として成長していきたいと思っているので、この2年ほどをともに乗り越えた者同士、いろんなやりとりをさせていただきながら、目指す姿に向かって進んでいければと思います。
FCS:私たちも現在の生産体制を維持することはもちろんですが、三和商会様の想いを実現する一助となれるよう、今後も安定した供給の体制を強化していきたいと思います。本日はありがとうございました。