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デジタルツイン技術とソフトセンサ技術の動向・事例

デジタルツイン技術とソフトセンサ技術の役割の違い、製造業の取り組み動向と事例の紹介

デジタルツイン技術とソフトセンサ技術のトップ画像

製造業DXにおいて注目される「デジタルツイン技術」と「ソフトセンサ技術」。プラント全体をシミュレーションするデジタルツインと、特定のデータをピンポイントで補うソフトセンサは、役割を理解し連携させることでプラント制御の高度化に寄与します。

本記事では、両者の役割の違いを整理するとともに、化学業界の最新動向調査と、現場での導入事例を通じて、段階的なDX推進のヒントを解説します。

デジタルツイン技術とソフトセンサ技術とは?

デジタルツイン技術とは

デジタルツイン技術とは、工場の設備等から取得したデータを活用し、仮想空間(デジタル上)に同じ環境を構築してシミュレーションを行う技術です。例えばプラント全体の稼働データを取得し、仮想空間上でシミュレーションすることで、異常の早期発見や運転条件の最適化などへの活用が期待されています。

ソフトセンサ技術とは

ソフトセンサ技術は、物理的な計測器を用いずにAIや統計解析などの技術を用いて状態や品質を推定する技術です。例えば、複数の工程パラメータや製品データ、過去の運転履歴などを組み合わせて分析することで、直接計測することが難しい状態や特性をリアルタイムで推定できるようになります。なにに適用するかによって導入効果は異なりますが、例えば当社のソフトセンサ技術の導入事例では保全業務の削減、設備の運転安定化、プロセス制御の最適化によるコスト削減などの効果が確認できています。

デジタルツイン技術とソフトセンサ技術の違い

工場全体を見渡すデジタルツイン技術、特定部分のデータを補うソフトセンサ技術

デジタルツイン技術とソフトセンサ技術は、どちらもデータを活用して状態を把握する技術ではありますが、対象とする範囲や主な役割が異なります。

デジタルツイン技術が工場や設備全体の動きを把握するのに対し、ソフトセンサ技術は個別の設備や特定の数値を推定して補うという役割を持ちます。デジタルツイン技術とソフトセンサ技術は相互に補完し合う関係にあり、例えばソフトセンサ技術で推定したデータをデジタルツイン技術へ連携させることで、プラント全体のシミュレーション精度の向上などが期待されます。

化学業界におけるデジタルツイン技術・ソフトセンサの利用動向

デジタルツイン技術とソフトセンサ技術はプラントの高度な制御に有用とされています。では、化学業界において、これらの技術はどの程度利用が進んでいるのでしょうか。

当社が化学業界の従事者を対象に行った、デジタルツイン技術およびソフトセンサの取り組みに関する調査結果では以下の通りとなりました。ソフトセンサ技術の利用動向は2022年現在のものですが、近年の製造業のDX化、当社の事業経験など考慮すると、取り組みがさらに進んでいると考えられます。

・デジタルツイン技術の利用動向

デジタルツイン技術の取り組み状況についてのアンケート結果

当社が化学・石油製品業界従事者を対象に実施した「製造業(化学・石油製品)のDX・脱炭素化動向調査(2026年)」によると、回答者全体のうち、デジタルツイン技術に関する設問(n=216)で「既に取り組んでいる」と回答したのは6.9%、「準備・検討中」は15.7%でした。

従業員規模別の集計では、1000人以上の企業では導入・検討層が3割を超える一方、300人未満の企業では「取り組む予定はない」との回答が過半数を占める結果となりました。

・ソフトセンサ技術の利用動向

ソフトセンサ(技術)の活用状況についてのアンケート結果

当社が化学工業業界従事者を対象に実施した「化学工業のIoT/AIの利用・活用に関する調査(2022年)」によると、ソフトセンサに関する設問(n=320)で「既に活用している」との回答は38.8%でした。また、「今後、活用を検討している」との回答は25.9%でした。

従業員規模別の集計では、5000人以上の企業では「既に活用しており、導入効果もでている」とする比率が全体と比べ高い結果となりました。

デジタルツイン技術とソフトセンサ技術の取り組み事例

デジタルツイン技術の取り組み事例

プラントや工場全体のデジタルツイン化に関する具体的な取り組みは、まだ実証・検証段階のものが多いものの、製造業で以下のような活用・検討が進んでいます。

・工場新設・ライン立ち上げ時のシミュレーション
工場やプラントの建設にあわせ、仮想空間上で機器の配置や稼働シミュレーションを行い、立ち上げ期間の短縮や最適化を可能にします。

・生産工程のボトルネック検証
特定の生産ラインや工程の動きを仮想空間上に再現し、工場が稼働する前に生産ロスの原因特定や稼働率向上のための対策を検討できるようにします。

・遠隔からの設備保全支援
工場設備に対し、遠隔地にいる熟練技術者が仮想空間上のモデルを通じて現場の状況を詳細に把握したり、設備保全やトラブル対応などの支援を可能にします。

この他、経済産業省の公式サイト等では中堅・中小企業向けのDXへの取り組み事例のひとつとして、デジタルツイン技術が紹介されています。また、”半導体・デジタル産業戦略検討会議 ”でも、DXの文脈でデジタルツインへの取り組み事例が紹介されています。

ソフトセンサ技術の取り組み事例

ソフトセンサの取り組み事例は、製造現場でのDXを支援する企業サイト等で確認することができます。導入効果は適用対象や現状のプロセスによって異なりますが、化学業界向けの活用事例を4事例ご紹介します。

事例1:水添反応触媒の再生頻度の最適化

化学製造業への適用事例。水添反応工程における触媒再生を定期的スケジュールで実施していましたが、作業負荷と触媒塔の切り替えコストが課題でした。そこでソフトセンサ技術を導入し、触媒性能指標をリアルタイムで推定することで、再生頻度の最適化を実現しました。

本技術により、触媒寿命の延長に伴うコスト削減に加え、切り替えに伴う損失時間の解消による生産性向上に寄与しています。実測値に基づいたモデル構築により、実運用への活用を推進しています。

事例1:水添反応触媒の再生頻度の最適化

事例2:缶液濃度のリアルタイム推定

化学製造業への適用事例。従来のサンプリング分析では困難だった急激な濃度変化の検知をソフトセンサのリアルタイム推定で実現し、結晶析出によるライン閉塞リスクを低減しました。

短期間での実装により、適切な缶液濃度の維持と安定運転が可能に。トラブル抑制と溶剤リサイクル改善によりコストダウン効果が見られたほか、廃棄物低減を通じて年間100トン以上の二酸化炭素排出量削減という環境負荷低減効果も実現しています。

事例2:缶液濃度のリアルタイム推定

事例3:分析計と併用による連続的な運転管理値の整備

合成ゴム生産ラインにおけるソフトセンサの導入事例。導入前は排ガス中CO2濃度を分析計で計測していましたが、数値を連続的に把握できず、サンプリングから計測まで時間がかかるという課題がありました。

今回、ソフトセンサを導入し、計測できていない時間帯のCO2濃度推定値を算出。実機の測定装置と併用することで、連続的な運転管理値を整備しました。

事例3:分析計と併用による連続的な運転管理値の整備

事例4:プロセス変数から原料中の目的成分濃度を推定・トレンド表示

化学メーカーへの導入事例。同社の連続圧縮工程では、分析装置の閉塞や故障によりデータ欠落が生じ、冗長化設備や復旧作業がコストを押し上げていました。そこでソフトセンサ「EFPROSENS」を導入し、プロセス変数から目的成分濃度を1分間隔で推定・可視化しました。

これにより、冗長化設備が不要となり、メンテナンス等の非定常業務を90%以上削減。設備投資、保全費、人件費のコスト削減効果が確認されています。

事例4:プロセス変数から原料中の目的成分濃度を推定・トレンド表示

関連:ソフトセンサ構築/演算ツール「EFPROSENS」

現場でのサンプリングなど、短時間、定周期で計測しにくい目的値を「ソフトセンサ技術」で自動で連続推定。アナリティクス・AI( 解析・最適化技術)で「見える化」して、現場にフィードバック。化学、鉄鋼、⾷品、製薬分野の「操業」「設備管理」「エネルギー利用」の最適化を実現するための技術として導入・検討がされています。

ソフトセンサ構築/演算ツール「EFPROSENS」

おわりに

化学・石油工場の安全性向上や効率化には、データに基づいた状況把握が必要です。全体を捉えるデジタルツイン技術と、具体的なデータを提供するソフトセンサ技術は、相互に補完し合う関係にあります。また、現実の工場・製造工程を単に置き換えるものではなく、これら技術を活用して、どのような課題を解決するのかを明確にする必要があります。

一方で当社が化学工業業界従事者を対象に実施した「工場・プラントにおけるDXに関する意識調査(2023年)」のDX推進における課題に関する設問(n=135)では「推進できる人材不足(48.1%)」や「知識・ノウハウの不足(40.0%)」、「推進できる組織・体制の不足(36.3%)」が上位の回答となりました。

このことから工場のDXとしてデジタルツイン技術やソフトセンサ技術の導入を進める場合、技術的な理解はもちろんのこと、部門を横断した体制づくりや、推進を担う人材育成が必要であることを示唆しています。

このため、まずは特定工程の可視化から小さく始め、順次対象範囲を拡大していく方法が有効であると考えられます。自社への導入を具体的に検討される際は、本文で紹介した調査資料や取り組み事例も併せてご参照ください。