IR資料室富士電機レポート/統合報告書
会長CEOメッセージ
SDGsの発展、脱炭素社会の実現に貢献します

社員がチームで総合力を発揮し、持続的成長を目指します
富士電機は、1923年の創業以来、磨き上げてきたエネルギー・環境技術で、社会・環境課題の解決、お客様価値の創造に貢献してきました。その根底にあるのは経営理念の考え方です。地球社会の良き企業市民として、地域、お客様、パートナーを大切にして信頼関係を深め、豊かさへの貢献、創造への挑戦、自然との調和を使命とする。これはまさに、経済・社会・環境の統合的向上を目指すSDGs(持続可能な開発目標)の考え方と合致するものです。
今、地球規模で取り組むべき重要なテーマの一つに、脱炭素社会の実現に向けた課題解決があり、当社の本業であるエネルギー・環境事業のビジネスチャンスが拡大しています。当社は、エネルギーの供給サイドから需要サイドまでトータルで提案できることを最大の強みとして、クリーンエネルギー関連商材の提供に加え、世界トップクラスのパワー半導体を搭載したパワーエレクトロニクス機器、それらを組み合わせたシステムにエンジニアリング・サービスを付加し、エネルギーの安定供給、省エネ・自動化など、お客様の要望に沿ったソリューションを提供することができます。パワエレ・パワー半導体を中核として、事業を通じてSDGsの発展、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。加えて、経営基盤を成すESG課題に対しても、経営を俯瞰して目標を定め、社員が共有しチームとなって実践することが重要と考えています。「従業員ファースト」の考え方のもと、社員の成長が会社の繁栄につながり、事業活動を通じて得た利益を社員、株主、社会に還元する好循環を生み出していくことによって、持続的な成長を目指してまいります。

2023年度営業利益率目標を2年前倒しで達成
パワエレ・パワー半導体で更なる収益拡大を目指す
当社は2022年4月、経営と業務執行機能の強化を図ることを目的に、会長CEO(最高経営責任者)と社長COO(最高執行責任者)を置く新体制でスタートしました。私は、会長CEOとして、引き続き、経営の重要な意思決定の機能を担う取締役会、経営会議に対し責任と権限を持ち、経営理念・経営方針のもとで、持続的成長企業としての基盤を確かなものにしてまいります。
2023年度を最終年度とする5ヵ年の中期経営計画「令和.Prosperity2023」では、売上高1兆円、営業利益率8%以上を目標に掲げ、2024年度以降の更なる富士電機の発展に向けて経営基盤を強化し、社会とともに繁栄(Prosperity)を目指す、という思いを込めています。
この中期経営計画がスタートした初年度から、当社を取り巻く経営環境は大きく変化しました。2019年度の米中貿易摩擦、2020年度の新型コロナウイルス感染症拡大に加え、2021年度は国際的政治情勢の変化が加わり、素材価格高騰、資材不足などサプライチェーンにわたり影響が拡がりました。
このような想定外の厳しい経営環境が続き、売上高は計画通りに伸張しなかったものの、2021年度業績は対前年度で増収増益となり、営業利益、営業利益率、純利益はいずれも過去最高を更新しました。営業利益率は8.2%となり、中期経営計画の目標を2年前倒しで達成しました。これは、過去10余年にわたり利益の源泉である工場の体質改善に向け、地産地消の考え方のもと、内製化・自働化を核にしたサプライチェーン改革によるものつくり力と調達力の強化に取り組んできた成果にほかなりません。
2022年度は、中期経営計画達成に向けた最後の準備の年として重要な一年になります。売上高9,600億円、営業利益820億円、営業利益率8.5%は必達目標とし、パワエレ、パワー半導体で更なる収益拡大を目指します。最大の課題は、売上高の約60%を占めるパワエレ事業の売上拡大です。世界的に、クリーンエネルギー、省エネ、電化など脱炭素社会に向けた投資が拡大しており、こうした新たな需要の取り込みを強化し、成果を抽出していかなければなりません。また、もう一つの柱であるパワー半導体は、お客様の旺盛な需要に応え、生産能力増強を確実に実行し、信頼・信用を確かなものにしていきたいと考えています。発電プラント、食品流通は、マーケットシェアの高い得意とする事業を抱え、かつ社会インフラを支える重要な役割を担っており、引き続き収益性重視の経営を行ってまいります。

成長投資を継続し、利益を最大化、資本効率を高める
当社は、リーマンショックの影響で2008年度に営業赤字に転落以降、財務体質の改善に取り組んできました。事業ドメインを明確にし、パワエレ・パワー半導体へのリソース傾注、ものつくり力の強化などによる利益体質の強化、さらに計画的な政策保有株式の売却などによりフリー・キャッシュ・フローを創出し、有利子負債を減らしてきました。その結果、2021年度は、営業利益率だけでなく、ネットD/Eレシオ、自己資本比率も過去最高となり、資本効率面では、ROA、ROEは中期経営計画の2023年度目標であるROA5%、ROE11%を超える水準となりました。
2021年度より事業別ROICを管理指標に導入しています。事業成長が見込めるものの投資額が大きい半導体では、ディスク媒体の撤退により空いたクリーンルームを半導体製造向けに活用するなど、投資額を抑制し利益の最大化を図る施策を行っています。また、売掛金の回収強化や棚卸資産圧縮などCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の改善にも取り組んでいます。今後も財務バランスを考慮しながら、注力分野への成長投資を継続し、利益の最大化、資本効率向上に取り組みます。
なお、株主様への配当については、2011年度以降、増配を続けていますが、2021年度は前年度から15円増配の1株あたり年間100円(中間配当45円、期末配当55円)としました。中長期的な観点から、事業の成長サイクルを見据え、研究開発・設備投資、人財育成などに向けた内部留保の確保を図りつつ、安定・継続配当を重視し、中期経営計画の目標に掲げる配当性向30%を目指してまいります。


ESGを中核とした経営基盤の継続強化
持続的成長企業に向け、経営基盤となる環境・人財・ガバナンスの取り組みを強化しています。
環境においては、世界が目指すカーボンニュートラルの実現に向けて、当社は環境活動の方向性を定めた「環境ビジョン2050」、その中間目標として「2030年度目標」を設定しています。自社製品による社会のCO2排出量削減、生産活動における温室効果ガス排出量削減、そして、資源の有効活用の推進によるサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量削減の3つの目標です。本業であるエネルギー・環境事業で更なるCO2削減を図るため、新製品開発を強化してまいります。また、生産活動では環境負荷の低い生産工程を追求するとともに、国内外の生産拠点に太陽光発電を設置、再生可能エネルギーの導入など環境投資を行っていきます。
2020年に賛同表明したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)については、積極的な情報開示とその充実に努めています。このTCFDの検討のスキームを活用して、気候変動によるリスク・機会とその適応策を実行計画に移し、当社の長期的な成長や存在意義を高めるとともに、リスク影響の最小化を図ってまいります。
人財においては、経営方針に掲げる「多様な人材の意欲を尊重し、チームで総合力を発揮」できるよう積極的な人財投資と環境づくりを進めています。人権尊重や安全衛生、社員の健康を基盤に置きつつ、特に、女性活躍を中心としたダイバーシティの推進、経験豊富なシニア社員の活躍、ものつくり人財の育成、将来当社を担う経営人財の育成に注力しており、今後も継続して取り組んでまいります。
多様性の観点では、2022年6月に、パワエレ事業に関連の深い事業分野に見識のある女性の社外取締役1名が取締役会に加わりました。変化の激しい不確実かつ不透明な経営環境にあっては、多様性が一層重要になると考えています。持続的成長企業に向け、取締役会において中長期的な重要課題の議論を更に活性化してまいります。
富士電機のDNA「熱く、高く、そして優しく」を大切に
私は常々、一人の力には限界があり、チーム力が大切だと感じています。とりわけ注力してきたのは、個の力をチームに結集させる全社活動「Pro-7」です。収益力の改善を目的として2012年にスタートし、Prosperity(会社の繁栄、株主様への還元、社員・家族の幸せ)の追求を目標に掲げ、社員が自ら課題を見出して仕事のやり方をゼロベースで見直し、チームで業務改善・業務品質の向上に取り組んできました。今日では会社の収益力や生産性向上に対する意識が社員一人ひとりに定着し、日々の業務そのものになっています。働き方改革も、この活動に組み込み、現場の声がより良い働き方ができる環境の整備につながっています。全社活動「Pro-7」は社員の成長とチーム力の強化につながっており、当社の経営基盤を築いていると考えています。
私は、経営スローガン「熱く、高く、そして優しく」の思いを社員と共有することを大切にしています。熱く、とは新しい技術、新しい製品を開発し、世の中のために尽くしていく熱い気持ち。高く、とは目標を高く持たなければならない、ということ。この程度でいい、と思えばそれ以上にはなりません。どんなに苦しくても、目標は高く持って共有する。そして優しく、は感謝に置き換えています。お客様、一緒に働く仲間、家族に対する感謝の気持ち。今後も社員一人ひとりが富士電機のDNAを引き継ぎ、大切にしてもらいたいと考えています。
富士電機は、2023年に100周年を迎えます。今後も持続的成長企業であり続けるために、多様な個性を持った社員がチームで総合力を発揮し、エネルギー・環境事業を発展させ、社会・環境課題の解決、お客様価値の創造に貢献してまいります。
株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆様におかれましては、今後とも一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。