エネルギー・環境事業のルーツをたどる
汎用インバータの歴史(後編)

汎用インバータの歴史(後編)

1980から90年代:汎用インバータの用途拡大と高性能・多機能化

ファン、ポンプなどの省エネルギー目的で採用されていたトランジスタインバータが、さらにFA機器、産業機械などの分野で広く用いられるようになった。従来のサイリスタインバータと比較して、高性能でコンパクト、コストパフォーマンスの高いインバータが実現できたことによる。――― (中略) ―――さらにベクトル制御インバータの登場により、従来の直流機の分野を含め適用分野が飛躍的に拡大した。

富士時報 第58巻第11号(1985年)「パワーエレクトロニクス特集」より抜粋

普及の時代を迎えたトランジスタインバータは、当時、誘導電動機の60%を占めていたファン・ポンプの省エネ用途に加えて、圧延プラント、製紙プラント、加工機械などの直流モータ駆動に対する省保守などのメリットから、交流モータを用いた可変速駆動への置き換えニーズが増えてきました。

- 1985年汎用インバータ生産累計10万台達成

高性能多機能形インバータFRENIC MEGA(G2)(2021年発売)
初のオールデジタル化インバータFVR-G5
(1986年発売)

普及に伴うニーズの多様化に大きく貢献したイノベーションは制御回路のデジタル化技術でした。それまで、インバータの出力はダイヤルボリュームなどでアナログに調整するだけだったものがデジタル化によって細かな調整ができるようになりましたが、一番のメリットは制御をソフト化できたことでした。インバータが頭脳をもつことで、さまざまな機械装置の動きをプログラミングで実現できるようになり、インバータの用途はさらに広がっていきました。

ベクトル制御インバータFRENIC5000VG(1990年発売)
ベクトル制御インバータFRENIC5000VG(1990年発売)

そこからさらに発展したベクトル制御技術は、高度なベクトル演算により、急激な速度変化や定常トルク以上のインパクト負荷への応答、高い速度制御精度や広い速度制御範囲など、交流モータのより高度な制御を可能としました。これにより、従来、高精度な制御が必要なために直流モータが主流であった鉄鋼などのプロセスラインにおいても、メンテナンス性の高い交流モータによる可変速化が定着していきました。

- 1990年汎用インバータ生産累計100万台達成

1990年代後半には、モータの特性を自動で読み取り最適な制御を可能にするオートチューニング機能や速度センサレスベクトル制御による小型化など、ベクトル制御インバータはさらに進化していきます。

2000年代以降:ニーズの二極化。プレミアムタイプと低価格タイプ

- 2002年汎用インバータ生産累計500万台達成
- 2012年汎用インバータ生産累計1000万台達成
- 2020年汎用インバータ生産累計1500万台達成

近年、汎用インバータはさまざまな用途に拡大してきており、制御性能の向上に加えて省エネルギーや耐環境、予防保全・予知保全のニーズが高まっている。―――(中略)――― 汎用インバータの性能や機能は大きく向上し、その応用範囲は単純な可変速駆動装置から工作機械や水平・上下搬送機へと拡大している。

富士電機技報 第94巻第1号(2021年)より抜粋

高性能多機能形インバータFRENIC MEGA(G2)(2021年発売)
高性能多機能形インバータFRENIC MEGA(G2)
(2021年発売)

インバータによるモータの可変速駆動がもはや当たり前となっていった2000年代以降、現在に至るまで、インバータのニーズは二極化してきました。高性能多機能を謳うプレミアムタイプでは、高い制御性能と高精度の優れた基本性能をベースに、ユーザが好みの使い方にカスタマイズできるプログラミングツールや、万一の故障の予防や寿命予知機能を有しています。ユーザの設備保全まで考えられた、より広い用途への対応が可能な機種と言えます。一方、カタログ販売がベースのコンパクトタイプでは、小容量のファン・ポンプの省エネ用途を中心に低価格の要求が高くなっています。

インバータの登場以来、現在まで、常に求められてきた基本性能である、小型軽量、高い制御性能、高効率、高信頼性などの要求に対して、最も有効な手段は、パワー半導体デバイスによる解決でした。初期のパワートランジスタから近年のIGBTやMOSFETなどの半導体デバイスの開発において、富士電機では半導体デバイス開発部門と変換装置の開発・応用部門との緊密な連携のもとに、インバータ市場のニーズを自社開発のパワー半導体の進化に結びつけきました。世界でも限られたパワー半導体メーカーとしての強みを発揮し、各種産業・分野のさまざまな用途において、インバータの幅広いラインアップで自動化・省エネに貢献していきます。

富士電機 汎用インバータの歴史年表
貢献するSDGs目標
産業と技術革新の基盤をつくろう
気候変動に具体的な対策を

当社の汎用インバータは、コア技術を駆使した幅広い製品群と最適制御により、設備の最適操業や省エネを実現し、産業の基盤づくりに貢献します。これは、当社のSDGs目標「9.産業と技術革新の基盤を作ろう」に貢献するものであり、「13.気候変動に具体的な対策を」には製品を通じた社会のCO2排出量削減で大きく貢献しています。

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