インタビュー
インタビュー2.工場から街づくりまでー「止まらない設備」で産業・社会インフラを支える富士電機のソリューションとは

日刊工業新聞電子版 (11月30日から12月13日)に掲載されたものに一部図を追加しています。

人工知能(AI)やビッグデータ活用などのデジタル変革(DX)時代はインターネットを介した情報処理量や通信量が爆発的に増加する。それらを守るデジタルインフラの要衝はデータセンター(IDC)で、国内外のIT大手がこぞってIDC整備に大規模投資を続けている。

富士電機は得意とするエネルギーマネジメント技術で産業・社会インフラの強靭化に貢献している。

「新さっぽろ駅周辺地区I街区開発プロジェクト」ではAIを活用した次世代型CEMS(地域エネルギーマネジメントシステム)を提供。また、自社半導体工場では、見える化、分かる化、最適化の3ステップを特徴としたFEMS(工場向けエネルギーマネジメントシステム)で、大幅な省エネを実現した。

産業・社会インフラの担当者に同社ソリューションの強みや脱炭素社会への思いを聞いた。

集合写真

(注)

撮影時以外はマスクを着用し、新型コロナウィルス感染症への対策を行った上で取材しています。

顧客ニーズに合わせたソリューション 脱炭素社会にも貢献

発電プラント事業本部 エンジニアリング統括部長 北西啓一氏
(左)パワエレ エネルギー事業本部 施設・電源システム事業部 施設電源技術部長 須川俊一氏/
(右)同 施設電機技術部長 村岸拓郎氏

富士電機はIDCや半導体工場向けに電源システムと、そのシステム構築などのソリューション事業を展開している。パワエレ エネルギー事業本部 施設・電源システム事業部 施設電源技術部長 須川俊一氏は「変電所から発電機、UPS(無停電電源装置)までフルラインアップの商材をそろえて、UPSや変圧器などの単品だけではなく、構成機器をワンストップでシステムエンジニアリングして提供することで、お客さまのニーズに広く応えることができる。

UPSに使うパワー半導体は自社製であり、設計段階から半導体部門と連携することで製品の高効率化や小型化で優位に立てる」と自社の強みを語る。

また、日本など主要国が2050年に向けてカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の目標達成へ動きだしており、工場やオフィスビルとともに、エネルギー多消費のIDCにも環境対応をもう一段求める声が高まりそうだ。

施設電機技術部長 村岸拓郎氏は「トランス(変圧器)では絶縁油を鉱油から植物油に切り替えたものもあり、また温室効果の高いSF6(六フッ化硫黄)ガスを使わないガスレス製品の開発も進めている」と脱炭素社会への貢献を目指す。

次世代型CEMSにより、社会インフラ構築に貢献

次世代CEMS(富士電機提供)
次世代CEMS(富士電機提供)

北海道ガスは「新さっぽろ駅周辺地区I街区開発プロジェクト」に参加し、街区内にエネルギーセンターを建設する。天然ガスコージェネレーション(熱電併給)を設置し、通常時の省エネと災害発生時の各建物へのエネルギー供給を継続することによる街区全体のレジリエンス(復元力)の強化を実現する。

この一大プロジェクトにおいて、富士電機はAIを活用した次世代型CEMSを提供する。独自の統計的機械学習(AI予測技術)手法により、まず高精度で納得感の得られる需要予測を導き出す。次に、需要家側の快適性を担保しつつ最適な需要抑制を自動で実施するとともに、設備機器も自動調整してエリア全体で最大限のエネルギー効率化を図る。AIを使って、エネルギー効率の検知、要因分析・診断も自動化する。

同プロジェクトのまちびらきは2023年度内の予定。ただ、医療施設は2022年7月に先行して開業し、エネルギーセンターも医療施設完工に合わせて営業運転を始める。

新さっぽろ駅周辺地区I街区開発プロジェクト(※計画段階の図面を基にしたイメージ)
新さっぽろ駅周辺地区I街区開発プロジェクト((注)計画段階の図面を基にしたイメージ)

2010年度比34%の省エネを達成-半導体工場に導入した独自のエネルギーマネジメントシステム技術

発電プラント事業本部 エンジニアリング統括部 再エネプラント技術部長 大田洋充氏
(左)パワエレ インダストリー事業本部 情報ソリューション事業部 情報制御システム第一部長 東谷直紀氏/
(右)同 ファクトリーオートメーション事業部 制御機器部長 星野淳氏

富士電機の工場向けFEMSの特徴は「日常的、継続的に改善を進めるためのエネルギーマネジメント基盤の整備」をテーマに、見える化、分かる化、最適化の3ステップを提案している点だ。

パワエレ インダストリー事業本部 情報ソリューション事業部 情報制御システム第一部長 東谷直紀氏は「まずは状態を見える化し、その後で課題や改善効果が分かり、最後に需給バランスをとっていくのが3ステップだ」と導入の流れを説明。

当然ながら、実績に乏しいFEMSでは顧客になかなか響かない。ただ、富士電機は製造業であり、自社工場に導入して「実験台」となって、その効果を身をもって示すことが可能だ。

電力制御用パワー半導体を生産する山梨工場(山梨県南アルプス市)のスマート化にFEMSを利用した。「半導体工場は非常にエネルギーを消費するのに加えて、停止すると莫大な損害が発生してしまう。また、山梨地区は瞬低が多い問題もあった」と東谷氏はモデル工場に選んだ理由を語る。

山梨工場はエネルギー供給源として、通常の系統電力に加えて、太陽光発電とコジェネ、燃料電池を有する。2015年度までに3ステップのFEMS導入を経て、2010年度比で34%の省エネを達成した。また、同じく導入前の目標だった電力自給率も従来の0%から100%に向上した。

データ収集・解析、異常検出による安定稼働

富士電機は工場向けに、省エネや生産性向上に貢献するコンポーネント、システムを提供してきた。

IoTの導入が進む生産現場では、組立加工データ収集システム「OnePackEdge」で課題解決に応える。現場のあらゆるデータを収集、蓄積し、見える化・分析することで、不良品や異常設備の原因を突き止め未然に防止し、止まらない設備を実現する。

ファクトリーオートメーション事業部 制御機器部長の星野淳氏は「生産設備のデータを集めるだけでうまく活用できていない事例が多い。だから、現場から簡単にデータを集めて、分析しやすいようにデータを保管し、カメラなどと連携して分析しやすい形で見える化するシステムをつくった」と新たな主力製品として売り込みをかける。

止まらない設備の実現へ

レジリエントな産業・社会インフラ構築に取り組む富士電機。工場から街づくりと幅広い分野で技術力を発揮しているが、その根底にあるのが脱炭素社会に貢献するという共通の目標だ。エネルギー安定供給・最適化・安定化技術を武器に、生活を黒子として支える「止まらない設備」の実現を目指す。

貢献するSDGs目標

住み続けられるまちづくりを
気候変動に具体的な対策を

お客様のさまざまな課題に応える富士電機のソリューションで、
止まらない設備を実現し、産業・社会インフラ強靭化に貢献します。

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