環境

富士電機レポート2021

環境

写真:安部 道雄

当社の強みであるエネルギー・環境技術の活用により、サプライチェーン全体で環境課題解決に貢献します。

執行役員専務
生産・調達本部長
安部 道雄

 国際社会においてSDGsへの取り組みが広がるなか、地球温暖化防止、天然資源の有効活用、生物多様性の保全などの環境課題への対応は、ますます重要性が高まっています。
 当社は、2019年6月に環境活動の方向性を定めた「環境ビジョン2050」を策定し、実績は順調に推移しています。
 一方で、世界各国は脱炭素化に大きく舵を切り、その動きは新たな成長戦略として社会・産業分野に広がりを見せています。そこで当社は2021年度、事業強化の視点で「環境ビジョン2050」の見直しを図るとともに、この実現に向けた具体的な取り組みについて検討を進めることとしました。積極的かつ長期的に取り組むべき環境目標を明確化し、脱炭素社会の実現に向けて2050年にサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指します。
 限りある資源の有効活用のために3R(リデュース・リユース・リサイクル)を徹底強化していますが、再資源化に向けサキューラー・エコノミー(循環経済)の期待が高まるなか、最終処分率の低減や、生態系への影響低減に向けた環境負荷対策も脱炭素化の視点から推し進めてまいります。

図:環境ビジョン2050 富士電機の革新的クリーンエネルギー技術・省エネ製品の普及拡大を通じ「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現を目指します

 情報開示については、昨年のTCFD賛同表明後、気候変動が当社の事業活動にもたらすリスクと機会の特定と対応策、それに伴う財務影響などの分析を行っており、順次開示を進めています。
 なお、当社は、気候変動に対する取り組みとその情報開示が優れた企業として、CDPより2年連続で最高格付け「Aリスト企業」に認定されています。これからも富士電機は、エネルギー・環境技術の活用で環境課題を解決し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

図:環境ビジョン2050 富士電機の革新的クリーンエネルギー技術・省エネ製品の実現を目指します

環境経営の推進体制

 環境保護や気候変動対応を含むSDGs推進に関する課題の審議、施策の評価を行うため、執行役員で構成される全社委員会「SDGs推進委員会」とその下部組織である「環境ビジョン推進部会」を設けています。また、同部会の傘下には、環境経営の個別の課題ごとに専門組織を設置し、各課題の対応方針や実行計画の策定、進捗管理を行っています。
 こうした取り組みの方針と結果は、「SDGs推進委員会」での審議・評価を経て、経営会議や取締役会に報告(必要に応じて審議)を行います。

図:富士電機環境推進体制 取締役会-経営会議-SDGs推進委員会-環境ビジョン推進部会-環境ものつくり分科会、気候変動対策ワーキンググループ

主な環境指標に対する実績

グラフ:2020年度 売上高8,759億円、生産時のGHG排出量44万トン、製品による社会のCO2排出削減貢献量4,178万トン

社会のCO2排出削減貢献対象製品売上高(2020年度)
(単位:億円)

(注)

2009年度以降に出荷した稼働期間中の製品について、1年間稼働した場合のCO2削減量を貢献量として算出しています。

2020年度サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量の算定

 自社の事業活動による温室効果ガス排出量(スコープ1・2)に加え、サプライチェーンで発生する間接排出量(スコープ3(注1))をGHGプロトコルに基づいて算定しています。
 脱炭素社会の実現に向けて、サプライチェーン全体の排出量削減を目指します。

対象範囲:グローバル全拠点
単位:千t-CO2

スコープ1・2・3合計:6,042

(注1)

環境省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン Ver3.0」に準拠して算定しています。

(注2)

2020年度より、全社の直接材料で調達した製品・サービスを算定しています。

(注3)

最終製品に影響が及ぶ範囲で算定しています。
産業向け製品の算定方法を策定中です。
2021年度中に対象カバー率を全製品における総排出量の80%以上に拡大のうえ、公開する予定です。

脱炭素社会の実現

 当社は、脱炭素社会の実現に貢献することを表明しました。今後は、調達・輸送を含めた生産活動に加え、自社製品の稼働時に発生するCO2削減に取り組むことで、サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指して活動します。

生産時の温室効果ガス排出量の削減

 当社は、生産時に排出する温室効果ガス(GHG)の削減を2030年目標に掲げています。その計画をもとに年次目標を作成し、達成に向けて取り組んでいます。
 2020年度は、半導体の好調な売上に伴い電力および燃料の使用量が増加し、該当部門のCO2排出量が増加しました。しかし海外の半導体工場(マレーシア富士電機社)や高圧遮断機を生産する吹上工場の生産工程で技術開発が進み、SF6など温室効果の高いガスから低いガスへの切り替えが進んだことでGHG全体の排出量を押し下げました。加えて全社で省エネ設備への切り替えが進んだことで、生産時のGHG排出量は目標を下回る44万トンに抑制しました。
 2030年度の目標値を46%超削減(2013年度比)に引き上げることを表明しています。今後、具体的な対応策を検討していきます。

図:生産時GHG排出量の推移(万t-CO2) 基準年2013年54、2020年44、2030年目標29

製品による社会のCO2削減貢献量

 当社は、事業活動による環境価値創出の取り組みとして、「製品による社会のCO2削減貢献量」を目標として設定しています。
 当社のクリーンエネルギーや省エネ機器をお客様に使用いただくことは、稼働時に排出するCO2排出削減に貢献します。
 2020年度は、目標を上回る4,178万トン(注)のCO2の削減に貢献しました。
 発電プラント事業において、木屑や農業廃棄物などを燃料として得られる熱を利用するクリーンなバイオマス発電を4機納入したことが大きく貢献しました。さらに、半導体事業におけるIGBTの増産も貢献しました。

(注)

2009年度以降に出荷した稼働期間中の製品について、1年間稼働した場合のCO2削減量を貢献量として算出しています。

図:製品による社会のCO2排出削減貢献量(万t-CO2) 2017年2,579、2020年4,178

2020年度の対前年排出削減貢献量と主な貢献製品

パワエレシステム:179
 インバータ(10年)
 高効率モータ(10年)他
半導体:84
 IGBTモジュール(7年)他

発電プラント:258
 バイオマス発電(20年)
 地熱発電(30年)
他食品流通:5
 自動販売機(8年)他

( )は算出対象となる稼働年数

循環型社会の実現

 当社は、設計段階でのライフサイクルアセスメント、グリーン調達、廃棄物最終処分率の低減など、サプライチェーン全体で3R(リデュース・リユース・リサイクル)に取り組んでいます。「廃棄物最終処分率」「水投入量売上高原単位」の低減を2030年度目標(それぞれ1.0%未満、1.8t/億円以下)に設定しています。
 2020年度の廃棄物最終処分率は1.8%です。海外の半導体工場における汚泥処理について、新型コロナウイルス感染症の影響により再資源化の受け入れが一時的に停止し埋め立てとなった結果、対前年で0.7pt悪化しましたが、現在では、汚泥の再処理化はコロナ以前の状態に戻っています。

図:廃棄物最終処分量・処分率(t)2017年762t,2.3%、2020年489t,1.8%

 水投入量削減に向けて力を入れているのは水のリサイクルで、水使用量が多い半導体工場に装置を設置しています。2020年度は、全社のリサイクル率が16.6%から18.4%に増加しました。松本工場では濾過膜のメンテナンス方法を改善した結果、リサイクル水の回収率が向上しています。

今後、環境ビジョンで掲げる「グリーンサプライチェーン」の構築に向けて、従来の線形経済から循環経済への移行に向けて検討を進めます。

自然共生社会の実現

 生態系への悪影響を与えない設計・ものつくりの徹底により、お客様に安心して製品を使用いただくことを目指しています。環境悪化につながる化学物質(VOC:揮発性有機化合物)削減を指標に、評価を毎年実施しています。また、生物多様性の保全に向けて、各拠点が現地ニーズに対応した自然環境保護活動を実施しています。今後は脱炭素に貢献する視点からも自然共生への貢献を検討していきます。

TCFD提言に沿った気候関連情報開示の取り組み

 当社は、2020年6月にTCFD(注)提言への賛同を表明しました。気候関連情報の開示を順次進めています。
 TCFD開示要請項目のうち、「戦略」について以下のように検討を進めています。気候関連リスク・機会の分析を、バリューチェーン全体について「2℃未満」「4℃」の複数の気温上昇シナリオを用いて行いました。

(注)

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は、気候関連のリスク・機会や財務影響などの開示を促す国際的な枠組み。2017年に企業などに対し気候関連情報の開示を求める提言を発表。

 事業セグメント別、バリューチェーンのプロセスごとにリスク・機会を特定したうえで、重要度が高い項目を抽出し全社視点で取りまとめています。
 当社が考慮すべき主なリスク・機会は下表のとおりです。今後リスク・機会を踏まえた適応策、財務影響などの開示に向けて引き続き検討を進めます。

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