IR資料室富士電機レポート/統合報告書
社長COOインタビュー
エネルギー・環境技術で
新たな社会価値創出に挑戦します

社長COO就任にあたっての抱負をお聞かせください。
私の使命は、執行の責任者として2点と考えています。一つ目は2023年度を最終年度とする中期経営計画(売上高1兆円、営業利益率8%以上)を達成すること。そして二つ目が2030年を見据えた新たな成長戦略を描き、持続的成長企業への道筋を示すことです。
私は入社以来、情報、通信、ネットワークなどのエンジニアとして、さまざまな製品開発に携わってきました。また近年は技術開発の責任者として、事業部門の縦の製品開発と、全社共通的な横の基盤技術・先端技術開発をタイムリーに整合させることに努めてきました。世界が脱炭素や環境保全など、持続可能な社会の実現に向け、環境・社会配慮型の製品、システム、ソリューションがこれまで以上に求められると感じています。パワーエレクトロニクス、パワー半導体技術を軸に、持てるあらゆる事業と技術を新たにかけ合わせ、縦と横の総合力で、社会課題解決に貢献したいと考えています。
2023年度中期経営計画の達成に向けた課題は何でしょうか。
私は、実行力と考えています。2022年度は中期経営計画達成に向けた最後の準備の年になりますが、基本的に2023年度へ向けた大きな戦略は既に描いています。この2年間は、社員がチームで環境変化に対応しつつ、描いた戦略をやり切る。これにかかっていると思っています。
具体的には売上高の伸長です。2021年度は受注高の1兆円超に対して、売上高は9,102億円に留まりました。なかでも、パワエレの売上拡大が最重要課題と考えています。昨年9月にパワエレの営業体制を見直し、新規顧客開拓、さらに新商材の投入も始まり、受注は着実に積み上がっており、売上拡大を図っていきます。さらに、海外事業についても、現地仕様に合わせて開発したグローバル商材を核にして、東南アジア・インド・中国を中心に拡販する計画です。
もう一つの注力事業である半導体は、中期経営計画の売上高目標を1年前倒しで達成する見通しですが、自動車の電動化への対応が重要課題です。昨年度は津軽工場、今年度はマレーシア工場で生産能力増強投資を行っています。お客様の旺盛な需要に対応できるよう着実に実行して売上拡大を図っていきます。さらに、電気自動車(EV)の拡大には、パワー半導体の性能改善が重要ファクターになります。当社の強みであるIGBTに加え、EVの航続距離の改善などに貢献するSiCパワー半導体は、2024年度の量産に向けて生産体制の構築を進めています。
収益面においては、2022年度営業利益率は8.5%を目標としましたが、8%「以上」にこだわり、更なる改善を目指します。昨年経験した部材調達難や物流費高騰など、従来以上に、サプライチェーン全体を鳥瞰し的確な対応が必要となっています。過去10年以上にわたり、地産地消を基本方針に掲げ、ものつくり力・調達力の強化に取り組んできました。これからはデジタル技術の活用により、更なる生産性の向上にも取り組んでいきます
2024年度以降の富士電機の方向性を教えてください。
2024年度以降もエネルギー・環境事業に注力していきます。当社の強みの一つは、総合力にあると思っており、事業、技術、幅広い顧客といった基盤を生かして、長年培ってきた現場起点のリアルの技術を更に磨くとともに、AI、IoT技術などのデジタル技術を組み合わせて、お客様の更なる価値創出につなげていきたいと考えています。併せて、サービス品質の向上が重要です。お客様との信頼関係をこれからも大切にして、ともにサステナブルでありたいと思っています。
次期中期経営計画は、2030年の富士電機のありたい姿からのバックキャスティングと、現状からのフォアキャスティングの両面から検討していきます。マーケットが大きく変化するなか、脱炭素化における富士電機の立ち位置をしっかりと議論し、当社の強みと方向性を見定めていきます。
当社はエネルギーの供給サイド・需要サイドの両面に、さまざまな製品・システムを持っていますが、これからのエネルギー流通は供給サイド・需要サイドが混在するシステムになります。従って、その需給バランスを最適化するエネルギーマネジメントは従来以上に重要で、かつ複雑なものになります。並行して、エネルギ―は脱炭素化し、需要サイドは電化が進むという大きな流れができてきます。脱炭素電源、電力需給の調整力、熱の電化、省エネなどを実現する装置とシステムは、多くがパワエレや発電プラントの製品ですが、適用先は工場のみならず、空港、港湾、店舗など、多くの社会インフラにも広がります。私たちのお客様やパートナー様に富士電機がワンストップで提供できるような仕組みをこの2年間で構築していかなければならないと思っています。
また、お客様や社会の価値観のシフトに応じて、従来の経営指標に加えて、環境への貢献指標のようなものが必要になってくると考えています。
2つのミッションの実現に向けて大切に考えていることを教えてください。
世界全体で想定外の事象が多々起きるとともに、新たな価値観へのシフトも進むなか、私は変化への適応力を高めていきたいと考えています。変化への適応について、次の3つのステップが大切と思っています。第1が、社員一人ひとりが、情報感度を上げ変化の予兆を捉えること。第2が、その変化への対応について、オープンでフラットに議論すること。新しい変化に直面すると、人には現状維持バイアスがかかりがちになると思っていて、これを極力取り除いて議論することが大切だと思います。そして第3が、方向性を決めたらチーム一丸となって目標達成に向かうこと。このように一人ひとりが変化を捉える努力をし、その変化にチームで立ち向かうことができれば、自ずと適応力を高めることになると考えています。当社は経営方針に「多様な人材の意欲を尊重し、チームで総合力を発揮」を掲げています。これは全社員に浸透し、既にその基盤はできていると考えていますが、コロナ禍でコミュニケーションのありさまも変わってしまいました。工場・支社巡回や次世代経営人財研修などのあらゆる機会をとらえて、私自身、対話の機会を作り、発信して個人からチームへと対話をどんどん活性化させていきたいですね。多様な個性を尊重する風土とチーム力で変化への適応力を高め、中期経営計画の達成、2024年度以降の更なる成長を目指します。