富士電機株式会社

IR資料室富士電機レポート/統合報告書

環境

エネルギー・環境技術を活かし、「環境ビジョン2050」達成に向けた取り組みを通じて社会・環境課題の解決に貢献します。

執行役員
生産・調達本部長
大日方 孝

写真:大日方 孝

国際的に脱炭素に向けた取り組みが広がるなか、企業が取り組むべき環境課題の重要性はますます高まっています。

当社は、世界的なカーボンニュートラルに向けた動きや日本政府の「脱炭素」目標などを踏まえ、2019年度に策定した「環境ビジョン2050」および「2030年度目標」を2021年度に改定しました。

また、「脱炭素社会の実現」に続き、「循環型社会の実現」「自然共生社会の実現」についても社会的な動きが更に活発化することから、新たな目標の検討を進めます。

なお当社は、気候変動に対する取り組みとその情報開示が優れた企業として、CDPより最高格付け「気候変動Aリスト」企業に3年連続で選定されました。これまでに「エネルギー・環境」分野で培ってきた技術を生かし、脱炭素化の取り組みを通じて、社会・環境課題の解決に取り組みます。

ロゴ:Climate stamp 2021

「環境ビジョン2050」「2030年度目標」の改定

環境活動の長期的方向性を示す「環境ビジョン2050」の改定にあたり、「サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指す」ことを明記しました。さらに、その中間目標である「2030年度目標」を改定し、自社だけでなくお取引先様を含むサプライチェーン全体での温室効果ガス排出量削減目標を新たに設定しました。

この「2030年度目標」は、国際的イニシアチブであるSBTi(Science Based Targets Initiative)の「1.5℃水準」認定基準に相当するものであり、2022年3月にSBTへの認定申請を行いました。

環境ビジョン2050
富士電機の革新的クリーンエネルギー技術・省エネ製品の普及拡大を通じ、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現を目指します
脱炭素社会の実現 サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指します
循環型社会の実現 環境負荷ゼロを目指すグリーンサプライチェーンの構築と3Rを推進します
自然共生社会の実現 企業活動により生物多様性に貢献し生態系への影響ゼロを目指します
2030年度目標
産業革命前と比較した気温上昇を1.5℃に抑えるため、 以下の目標達成を目指します
サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(スコープ1+2+3)46%超削減(2019年度比)
生産時の温室効果ガス排出量(スコープ1+2)46%超削減(2019年度比)
製品による社会のCO2削減貢献量5,900万トン超/年

※2013年度比削減率 54%

「環境ビジョン2050」の取り組み

脱炭素社会の実現
サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(スコープ1+2+3)

2021年度の全体の排出量は180百万トンで、対前年度約123百万トン増加しました。全体の排出量のうち、99.8%がスコープ3です。主な増加要因は、発電プラントの大型火力EPC(設計、調達、建設)案件によるもので、排出量は約110万トンと全体の61%を占めています。大型火力EPCは次年度も案件が見込まれているため2022年度の目標は2021年度並みとしていますが、2030年度に向けて温室効果ガスを排出しないエネルギーの比率拡大を目指します。

図:百万トン-CO2。2030年度目標:67、2019年度実績<基準年>比-46%
生産時の温室効果ガス排出量(スコープ1+2)

2021年度の排出量は36万トンで対前年度約7万トン減少しました。今後、電力・燃料削減に向けた設備投資とともに、国内外の工場敷地内への太陽光発電設備設置、再エネ電力の調達拡大などにより、削減を図る計画です。

【主な削減要因】

  • 富士電機マレーシア社でのディスク媒体生産停止による溶剤の不使用
  • 半導体の各種工程用ガス除害装置などで使用する絶縁ガス(SF6)の削減 など
図:百万トン-CO2。2030年度目標:25、2019年度実績<基準年>比-46%
製品による社会のCO2削減貢献量

2021年度のCO2削減貢献量は4,544万トンで、対前年度約417万トン増加しました。事業セグメント別では、省エネに貢献するパワエレと地熱・水力・太陽光発電を扱う発電プラントが大きな割合を占めています。

※2009年度以降に出荷した稼働期間中の製品について、1年間稼働した場合のCO2削減量を貢献量として算出しています。
自社製品の使用で抑制できるCO2排出量=(既存製品排出量 – 新製品排出量)×当年稼働台数

図:万トン-CO2。2021年度実績。パワエレ2,286(50%)、半導体625(14%)、発電プラント1528(34%)、食品流通105(2%)、計4544。
循環型社会の実現

富士電機は、設計段階でのライフサイクルアセスメント、グリーン調達など、サプライチェーン全体で3R(リデュース・リユース・リサイクル)に取り組んでいます。また、水投入量削減に向けて水のリサイクルにも注力しており、水使用量が多い半導体工場にリサイクル装置を設置しています。今後、環境ビジョンに掲げる「グリーンサプライチェーン」の構築に向け、資源の効率的・循環的な利用を図り、付加価値を高める循環経済への移行に向けた検討を進めます。

廃棄物最終処分率

2021年度の廃棄物最終処分率は2.3%でした。マレーシアの半導体工場で発生する汚泥は再資源化(セメント原料)していましたが、リサイクル事業者の引き受け基準の変更によって埋立て処分とした結果、対前年度0.5pt上昇しました。2022年度は、汚泥の分別精度を高めることにより再資源化率増に取り組みます。

図:廃棄物最終処分量・処分率。2022年度目標。最終処分率(%)1.2%。
水投入量売上高原単位

2021年度の水投入量売上高原単位は1.1千トン/億円で、前年度から大幅に減少しました。富士電機マレーシア社でのディスク媒体の事業撤退による生産停止が主要因です。また、半導体を生産する山梨工場で水リサイクル設備の増強を行った結果、全社リサイクル率は18.4%から20.8%に増加しました。

図:水投入量売上高原単位。2022年度目標。水投入量売上高原単位(千トン/億円)1.8。
自然共生社会の実現

生態系へ悪影響を与えない設計・ものつくりを推進することにより、お客様に安心して製品を使用いただくことを目指しています。また、生物多様性の保全に向けて、国内外の拠点が現地ニーズに対応した自然環境保護活動を実施しています。今後は事業活動による生態系への影響ゼロに向け、具体的な目標と施策の検討を進めます。

揮発性有機化合物質(VOC)排出量

2021年度の揮発性有機化合物(VOC)排出量は617トンで、対前年200トン以上削減しました。半導体を生産する富士電機(深圳)社でのVOC回収装置増強や富士電機マレーシア社でのディスク媒体生産停止が主要因です。

TCFD提言に沿った気候関連情報開示の取り組み

TCFD提言では、企業に対し、気候変動に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の情報開示を求めています。当社は、2020年6月のTCFD提言への賛同表明以降、同4分野について取り組みの進捗を定期的に更新しています。(詳しくは当社ウェブサイトでご覧ください)

※TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース

開示要求事項 取り組みに対する考え方 2021年度の主な取り組み
ガバナンス
  • 気候変動関連課題の審議、施策の評価は「SDGs推進委員会」(全事業部門、営業部門、コーポレート部門の責任者で構成。2020年設置)で行う。
  • 同委員会で審議・評価された内容は、経営会議(全執行役員と常勤監査役で構成)や取締役会に報告、必要に応じた審議を行う。
SDGs推進委員会を2回開催し気候変動関連課題に取り組みました。(2021年5月・12月)
  • 「環境ビジョン2050」における「2030年度目標」の改定案をまとめ、経営会議での審議を経て取締役会に報告しました。
  • 複数シナリオに基づく気候変動関連の「リスク・機会・適応策」を審議し、経営会議での審議を経て取締役会に報告しました。
戦略
  • 気候変動が当社の事業(サプライチェーン含む)に与えるリスク・機会を複数の気温上昇シナリオを用いて短期、中・長期視点で分析・特定し、その影響と適応策を経営戦略に反映する。
  • リスク・機会と適応策、財務的影響等について、経営的な優先順位も考慮しつつ、策定進捗に応じて段階的に開示する。
  • 2020年度に実施した「2℃/4℃シナリオ」分析に加え「1.5℃未満/ 4℃シナリオ」に基づくリスク・機会を特定し、併せてそれらの適応策 を立案しました。(2022年3月開示)

※考慮した時間軸:短期(~2022年)・中期(~2030年頃)・長期(~2040年頃)

リスク管理
  • 富士電機は「富士電機リスク管理規程」(以下、リスク管理規程)に基づき、当社の経営に影響を及ぼす可能性のあるリスクを体系的 に認識・評価し、適切に管理・対処する。
  • 「気候変動」を「経営に影響を及ぼす可能性のある外的リスク」の一つとして認識し、リスク管理規程に基づき、評価・管理する。
  • 気候変動関連リスクを「経営に影響を及ぼすリスク」の一つと認識し、リスク管理規程が定める「外的リスク」に追加しました。
  • リスク管理規程が定めるリスク管理プロセスに基づき、セグメントごとのリスク把握、半期(中間)評価、年度評価を実施しました。
指標と目標
  • 「環境ビジョン2050」における「2030年度目標」を「気候関連リスク・機会の評価に用いる指標」とし、サプライチェーン全体(スコープ1+2+3)の温室効果ガス排出量を中期目標とする。
  • 1.5℃未満シナリオに基づくサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量の削減目標を新設しました。
1.5℃未満シナリオにおける「リスク・機会」と「適応策」
概要 採用した外部シナリオ

2℃シナリオよりもスケールアップした技術・ソリューションを活用して、産業革命前に比して2100年時点での世界の平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えるシナリオ

IEA※1:「World Energy Outlook(WEO) 2020」NZE
IPCC※2:「1.5℃特別報告書」RCP2.6

※1 IEA:International Energy Agency(国際エネルギー機関)

※2 IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)

リスク 機会 適応策
サプライヤー
  • 調達難とコスト増に伴う損益悪化
  • 部品の標準化、共通化の推進
  • 製品へのリサイクル素材の使用拡大
  • マルチソース化の推進
  • 主要なサプライヤーの脱炭素化支援
  • 脱炭素化に関わる新技術の研究開発の加速、市場への適時投入、低コスト化
  • お客様、リサイクル会社との連携による部品リサイクルの拡大
  • 生産設備の温室効果ガス排出抑制強化
  • 生産能力増強による需要増への対応【半導体】
  • 再エネ事業へのリソースシフト【発電プラント】
開発・設計
  • 脱炭素化要求に対応した技術開発遅れ
  • 脱炭素化推進に必要な技術の要請増
製造
  • 生産設備の脱炭素対応に伴うコスト増(設備投資他、再エネ電力の購入)
物流
  • 「地産地消」体制推進(在庫圧縮、物流コスト減、節税)
お客様・市場
  • 生産時再エネ100%利用 未対応による商機喪失
  • 火力発電の需要減
  • 再エネ・省エネ関連製品の需要増
  • 火力発電の燃種変更、CCS、CCUSの普及による火力発電サービス更新需要増
4℃シナリオにおける「リスク・機会」と「適応策」
概要 採用した外部シナリオ

現状を上回る対策を取らない場合、産業革命時期比で、平均4℃前後の気温上昇が想定されるシナリオ

IPCC:「第5次報告書」RCP8.5
リスク 機会 適応策
  • 部品調達の遅延
  • 異常気象多発に対応した風水害対策によるコスト増
  • 屋外の工事やサービス業務の遅延
  • 物流網寸断、生産影響に伴う製品納品の遅延
  • お客様のBCP対策投資活性化による需要増
  • 部品のマルチソース化推進(被災による調達リスクが高い部品の特定とリスク分散対応)
  • 主に湾岸地域やハザードマップ対象地域に立地する国内外工場の浸水対策、建屋防風対策の強化

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