富士電機株式会社

モルトラ10万台達成を実現した
富士電機のものつくりに迫る。モルトラ10万台達成を実現した
富士電機のものつくりに迫る。
座談会を基にしたドキュメンタリー動画も公開中

2020年6月。富士電機はモールド変圧器「モルトラ」が生産10万台を達成。それを記念して、製品開発プロジェクトの立ち上がり当時から現在までを知り尽くす3名のベテランによる座談会を開催。第一号開発までの苦労や、絶対に譲らなかった性能、信頼性へのこだわり。そして、40年以上経っても変わらない富士電機の志とはなにか。

森谷 廣

開発当時を知るモルトラの開発技術担当者

森谷 廣Hiroshi Moriya

千葉工場 CE部 CE第一課(モルトラ道場講師)

圓田 隆三

機器営業にてモルトラの拡販に貢献

圓田 隆三Ryuzo Enta

北陸電機製造東京営業所 顧問

高野 哲美

現在も現場でモルトラの新技術開発を牽引

高野 哲美Tetsumi Takano

技術開発本部 先端技術研究所 
エネルギー技術研究センター
電気エネルギー技術研究部 主査

※ 記事中の部署および役職名は取材当時のものとなっております。

シーメンス社の技術との出会いと、手探りだった第一号の開発。

モルトラの開発の話に入る前に、富士電機の創業について触れなければならない。

1923年、富士電機は、「古河電気工業」とドイツの「シーメンス」社との資本・技術提携によって誕生した。ドイツ語発音で「ジーメンス」となることから、古河の「ふ」とジーメンスの「ジ」をとって社名となったのである。事実、1978年まで使用された社章はアルファベットのfとsから形作られている。

▶︎ 富士電機創業時のロゴ。初期の製品にはこのロゴが刻印されている。

▶︎ 富士電機創業時のロゴ。初期の製品にはこのロゴが刻印されている。

なぜこんな話からはじめるのかというと、富士電機のモールド変圧器の開発に、シーメンス社の存在が大きく関わっているからだ。モルトラの根幹となる、巻線を樹脂でモールドするという技術。それがまさにシーメンス社で作られていたものだった。当時を最も知る森谷はこう振り返る。

森谷:巻線を樹脂でモールドするという技術は、当初はヨーロッパの方から始まっていました。その技術によって生まれる、燃えにくいという特長を活かせば、油入変圧器や乾式変圧器の欠点を補え、日本でも売れるんじゃないかという目算がありました。
当時の社員がシーメンス社に行って、当社の樹脂のモールド・硬化技術をまとめた論文をシーメンス社に紹介したところ、シーメンス社の方から彼らの技術を出してきた。それを昇華して融合したのが、今のモールド変圧器になっています。

当時の研究について、高野はこうも振り返ってくれた。

高野:あの当時の富士電機の樹脂関係の発表論文というのは、業界トップだったんですね。ここまでやるかってくらいやられていて。

しかし、技術を海外に学ぶことができても、実際に製造するノウハウも設備もない。完成までの道のりはとても手探りだったという。

森谷:製造設備がないわけなので、かわりに自転車をひっくり返してペダルで巻線を巻いたり、あるいは糸紬機を使ったりした。それから材料も、台所にあるアルミホイルやラップなどの材料で巻いて、形としてまず見せるということをやったと聞いています。

高野:樹脂に関してはすごく苦労したと思いますね。プラスチックって安定しているように見えますけど中にいろいろアルミなどの構造物が入ると簡単に割れる。どのくらいの強度の樹脂をどういう条件で硬化させれば30年耐えることができるとか、試行錯誤はあったと思います。

険しい道のりを経て、1970年にようやく自社研究施設へ最初の試作機が納入される。そこからさらに改良を重ね、1974年に発売開始。製品としてようやく第一号機が納入されたのは1975年。開発着手から14年後のことだった。

▶︎ 1970年に作られたモールド変圧器の試作機。設置した研究所の敷地で撮影されたもの。

▶︎ 1970年に作られたモールド変圧器の試作機。設置した研究所の敷地で撮影されたもの。

▶︎ モールド変圧器一号機を前にした記念写真。

▶︎ モールド変圧器第一号機を前にした記念写真

一番の特長である安全性。その品質は、実際に見てもらう。

富士電機のモルトラは、なんといっても油を使わないことによる安全性が売りだった。油入変圧器と異なり、モールド変圧器は防災性に優れ、部分放電はほとんど起こらない。その強みはもちろん、販売においても有力な説得材料になってゆく。病院や公共施設といった場所を中心に納入が広がっていくことになるのだが、確かな安全性を理解してもらうために、ものつくりに加えて大切にしたのが、実際に試験をお客様に立会いで見てもらうことだった。モルトラの営業として第一線を歩んできた圓田が振り返る。

圓田:お客様に関しては、工場に立会っていただき、実際に作っているものを見ていただきながら、安全・安心をアピールするようにしたんです。今もそうですけど、その時代から注文いただいたお客様には相当立会い試験をやっていただいたと思います。

森谷:事前に検査試験が終わった時点でもう一度お客様に工場に来ていただいて、お客様要望の試験を実施するというやり方ですね。特に営業の方々には積極的に動いていただいて、お客様に工場へきてもらう、工場で製品を見てもらう機会を増やしました。それから、ミニチュアの変圧器のモデルなんかを持って、工場の技術屋と営業で一緒にお客様を回るということもたくさんやりました。

▶︎ 製品の横に人を立て、実寸が分かる写真も資料とした。

▶︎ 製品の横に人を立て、実寸が分かる写真も資料とした。

▶︎ 実際に座談会の会場に持参された、モルトラ第一号のミニチュアモデル。実際にこれを手に全国を回り、構造や仕組みを顧客に説明した。

▶︎ 実際に座談会の会場に持参された、モルトラのミニチュアモデル。実際にこれを手に全国を回り、構造や仕組みを顧客に説明した。

そういった姿勢には、お客様の視点に立ったものつくりをするという、富士電機の人間すべてに刻み込まれたDNAが伺える。

高野:納入した後、お客様のところで動いているモルトラが先々も大丈夫かという診断にも取り組みました。そうすると、長い年数耐えられることが理解していただける。富士電機の製品は良いんだけどちょっと高いよねという方もいるけど、逆に、性能の割には安いと評価くださる方もいて。いろいろな意見を励みにしました。

森谷:お客様の立場で考える雰囲気は強いと思います。場合によっては営業の方がお客様の立場に立って工場に強く要請することもありますから。

本質的な性能、信頼性への飽くなきこだわり。だからこそ達成できた、10万台。

「なぜモルトラは、10万台を達成できたのか」
今回の座談会を通じて、様々な視点からその理由が垣間見られた。

ひとつは、性能へのこだわり。初志貫徹で磨き続けた絶縁技術がある。

森谷:やっぱり、金型を使って真空中でモールドするという技術。 空気が残ってしまうとやがて絶縁破壊にいたるという状況になるのですが、それを絶対に阻止したいということで、我々は当初から金型を使った真空中を使っていた。そこは絶対にこだわりましたし、その技術はこれからも主流であり続けると思っています。

高野:モルトラはほぼ100%部分放電がない。そういう点は非常に大きいと思いますね。そこを譲れなかったのは結構偉大といえば偉大、頑固といえば頑固かな。

高野は、こんなこぼれ話もしてくれた。

高野:富士電機はかつて家電を作っていた時期もあって、40年前くらいに作っていた洗濯機は縦型なんです。他社からは水平回転のものが展開されているなかで、富士電機としては、縦回転の方がいいのではないかと考えて。洗濯物を縦に回して叩き洗うように 汚れを落とすことにこだわっていました。そういうところにも頑固さが現れていますよね。むかしっから。 

10万台達成のもうひとつの理由は、信頼性へのこだわりだ。
実は、国内で唯一富士電機だけがクリアしている国際認証というものがあるのだ。

森谷:富士電機は国内唯一、国際規格であるIEC規格の形式試験に合格して難燃性を認証されているんです。そこはもっと誇るべきことだと思います。

高野:「次工程はお客様」という言葉があるのですが、これは作ったら終わり、あとはお客様に任せるという意味じゃなくて、後々になって次工程が困らないように我々の段階で厳しくしろという意味だと私は理解しているんです。信頼性に関して実直なのはそのとおりだと思います。

▶︎ イタリアでの厳しい試験をクリアし、日本で唯一取得したIEC規格の認定証。お客様と共に、品質に対する厳しい目を持ちながらたゆまぬ進化を続けることは、これからも変わらない。

▶︎ イタリアでの厳しい試験をクリアし、日本で唯一取得したIEC規格の認定証。お客様と共に、品質に対する厳しい目を持ちながらたゆまぬ進化を続けることは、これからも変わらない。

本当にいいものとは何かを問い続け、その性能を追い続けること。そして、信頼性にどこまでも実直であること。それが富士電機のものつくりであり、そのスピリットがモルトラ10万台という形で結実したのだ。

変わりゆくエネルギー市場を支え続けるために。

10万台を達成したモルトラだけでなく、富士電機のものつくりが長く社会を支えていくために必要なことはなんだろうか。

圓田

圓田:エネルギー市場は活発ですし、エネルギーの変化にも今の富士電機の技術はついてきていますから、そうした変化に対応することが大切ですよね。

では今後も、モルトラをはじめ富士電機のものつくりが長く社会を支えていくために必要なことはなんだろうか。最後に森谷が、こんな言葉で締めくくってくれた。

森谷

森谷:製品にも姿勢にも、富士電機ならではという特長を持たないと生き残っていけないし、モルトラだって15万台も達成できないと思う。この会社の強みは、誰もがお客様の視点に立ってものつくりに取り組んでいることと、新製品を世に出そうとするときのチームワーク。その精神があるから、夢に向かって協力しあうという体制がつくりやすいと思います。これからも、営業の担当も開発の担当も一緒に、お客様を大事にする製造業であり続けてほしい。そう強く願っています。

座談会の様子
▶︎ 座談会の様子

座談会を基にした動画も公開しています。
担当者の声もぜひ直接お聞きください。