富士電機株式会社

IR資料室富士電機レポート/統合報告書

会長CEOメッセージ

エネルギー・環境事業を通じて、
SDGsの発展、脱炭素社会の実現に貢献します
代表取締役会長CEO 北澤通宏

100周年を迎えて

2023年は、当社にとって創立100周年を迎える記念すべき年となります。1923年(大正12年)に古河電気工業(株)とシーメンス(株)の合弁会社として設立され、創業以来幾多の困難に遭遇しながらも100周年を迎えることができましたのも、お客様、株主様、お取引先様、地域社会のご支援の賜物であり、諸先輩社員のたゆまぬ努力と頑張りがあってと考えております。関係皆々様に深く感謝申し上げます。

富士電機は創業以来100年にわたりエネルギー・環境技術を磨き続け、社会・環境課題の解決、お客様価値の創造に貢献してきました。その根底にあるのは経営理念の考え方です。地球社会の良き企業市民として、地域、お客様、パートナーを大切にして信頼関係を深め、豊かさへの貢献、創造への挑戦、自然との調和を使命とする。これはまさに、国際社会が目指す経済・社会・環境の統合的向上を目指すSDGs(持続可能な開発目標)の考え方と合致するものです。

現在、地球規模で取り組まなければならない課題の1つに脱炭素社会の実現があります。当社は、エネルギーの供給サイドから需要サイドまでトータルで提案できることを強みとしています。クリーンエネルギー関連商材、世界トップクラスのパワー半導体、そのパワー半導体を搭載したパワーエレクトロニクス機器・システム、それらにエンジニアリング・サービスを付加し、エネルギーの安定供給、省エネ・自動化など、お客様の要望に応えたシステムソリューションを提供することができます。

電気・熱エネルギー技術の革新を追求し、パワエレとパワー半導体を中核としてエネルギーを最も効率的に利用できる製品を創り出し、SDGsの発展、脱炭素社会の実現に貢献し、次の100年の成長へとつなげてまいります。

グラフ:連結業績推移(億円)。2023年度中期経営計画。売上高10,000、営業利益率8.0%、営業利益800、親会社株主に帰属する当期純利益550。

中期経営計画目標を前倒しで達成

2023年度を最終年度とする5ヵ年の中期経営計画「令和・Prosperity2023」は、エネルギー・環境事業で社会とともに繁栄(Prosperity)を目指すという思いを込め、売上高1兆円、営業利益率8%以上の経営目標を掲げて2019年度にスタートしました。

その初年度から当社を取り巻く経営環境は大きく変わりました。2019年度の米中貿易摩擦、2020年度以降の新型コロナウイルス感染症の拡大、2021年度にはロシアのウクライナ侵攻があり、素材価格高騰、部材調達難など、世界のサプライチェーンにおいても先行き不透明な状況が継続しました。

このような環境のなか、2021年度には中期経営計画の目標である営業利益率8%以上を達成し、2022年度には売上高1兆円を達成、営業利益、当期純利益とも過去最高を更新しました。株主の皆様に対する配当も、年間で前期比15円増加の過去最高額となる115円/株としました。創業以来初となる売上高1兆円超えは大変嬉しく、社員一人ひとりの頑張りがなければ、達成しえなかったと考えています。

経営改革の積み重ねにより強固な経営基盤を構築

中期経営計画を1年前倒しで達成した経緯をもう少し遡り振り返ってみたいと思います。

2008年のリーマン・ショック以降、さまざまな経営改革に着手し、経営基盤を強化してきました。持ち株会社制を廃止し、1つの富士電機として組織や経営体制を再構築し、執行役員を3分の1の18名に減らし、経営の意思決定の迅速化と執行責任の明確化を図りました。そして、当社のコアコンピタンスはパワーエレクトロニクス技術、つまり「電気を自在に操る技術」であり、これを最も活かし、かつマーケット視点での成長性の両面から事業ドメインの中核を「エネルギー・環境」と明確化しました。売上が伸長しなくても利益を生み出せる事業構造にするため、利益の源泉である工場の体質改善に向けて、徹底してものつくり力を強化してきました。生産技術の再構築、内製化・自働化の推進、グローバルでの生産体制構築、サプライチェーン改革による棚卸資産の圧縮やグローバル調達、集中購買の体制構築により、原価低減に継続して取り組んできています。体質強化のめどが付いた2013年からは成長戦略の推進、攻めの経営に転じ、地産地消を基本とし、海外事業拡大に向けてM&Aや協業を通じて人財、商流、エンジニアリング機能を獲得してきました。さらに注力分野であるパワエレ・パワー半導体の事業強化に向け、厳しい経営環境下でも成長投資を継続し、両事業のシナジー最大化に向けた研究開発の加速、顧客需要に応じた半導体の積極投資を行ってきました。過去10余年にわたり継続強化してきた経営基盤を土台に、脱炭素化の需要拡大に伴い急速に拡大している自動車の電動化に貢献するパワー半導体や、デジタル化を背景としたデータセンター向け電気設備まるごとシステムなど、これまでの研究開発や設備投資などの施策の積み重ねが時代の要請にうまく合致し、需要を着実に取り込み、受注・売上の拡大につながっています。

経営の要はチーム力

私が特にこだわってきたのは「チーム力」です。個人の力も大事ですが、一人では限界がある。経営を変え、会社が持続的に成長するにはチーム力が大切で、これは私の信念です。その象徴が2012年に開始した全社活動「Pro-7」です。営業利益率2%程度を7%に引き上げる目標を掲げ、収益力改善に向けてあらゆるコストをゼロベースで見直すことを社員に呼びかけ、スタートさせました。業務効率改善を目指す当初の活動は、業務品質の向上、生産性向上、働き方改革へと進化し、今日では業務そのものとして根付いています。従来の仕事のやり方や考え方の枠にとらわれず、目標達成に向けてチームが何をすべきかを考え、一丸となって取り組む。これが今では当社の強みとなり、経営基盤の強化につながっています。これら一つ一つの取り組みの積み重ねは、社員がチームとなり成し遂げたものであり、中期経営計画の前倒しの達成は社員にとっても大きな自信になったと考えています。

利益にこだわり、企業価値の更なる向上目指す

2023年度は売上高1兆500億円、営業利益940億円、営業利益率9.0%、当期純利益625億円を必達目標とし、更なる増益を目指しスタートしました。同時に、2024年度から始まる次期中期経営計画を策定します。利益重視の経営、事業別ROICによるモニタリングを継続し、収益力向上につながる成長投資を加速するとともに、キャッシュ創出力、資本効率の向上を図り企業価値を高めていきます。まずは時価総額1兆円は達成したいと考えています。

次期中期経営計画の策定に向けては、2030年の富士電機のありたい姿を描き、次の3ヵ年で何をすべきかの議論を進めています。今後、あらゆる産業・社会インフラ分野で脱炭素化に向けた設備投資が加速し、当社の事業機会が一層拡大していきます。こうした市場、お客様のニーズを着実にとらえるためにも事業間のシナジーをさらに高めることが必要と考えており、パワエレ事業と発電プラント事業の一体運営を図ります。また、モビリティの電動化に対し、パワー半導体を中核にしてこれまでの枠組みにとらわれず、リソースを活かし次なる成長につなげていきます。

持続的成長企業に向けたマテリアリティの取り組み

今、社会が抱える気候変動、天然資源の枯渇、生物多様性の破壊などの環境課題や地政学リスクが高まるなか、富士電機は強靭性(レジリエンス)を高め、持続的に成長し続けるためのマテリアリティを明確化し、適切な情報開示、ステークホルダーとの対話を通じて経営基盤の強化を図っています。

環境においては、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、そのマイルストーンとして2030年度目標を定め、世界が目指す産業革命前比の気温上昇1.5℃未満の実現に向けてグループを挙げて取り組んでいます。

本業のエネルギー・環境事業を通じて温室効果ガス排出量の削減に貢献するとともに、自社生産拠点における環境投資を加速するなど、サプライチェーン全体で温室効果ガス排出量削減に取り組んでいます。加えて、昨今は大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済から循環性を高めた経済への移行の重要性が高まっています。当社がなすべき課題について議論を始めており、2030年度目標の検討を進めていきます。

予測の難しさが増す社会環境において、企業が成長していくためには、人権、コンプライアンス、自然災害、サイバー攻撃、地政学リスクなど、リスクによる影響を最小化するための不断の備え、レジリエンスを高めることがより重要になっています。日常的な監視・情報収集、発生した際の対応策の整備、問題の共有・周知徹底など、各部門の執行責任を担う執行役員と課題ごとの専門部署が連携し、リスクマネジメントを一元化し、リスク影響を最小化するよう対処してきています。特に、海外子会社を含めグループ全体でのマネジメント強化、ならびに、昨今の気候変動による自然災害に対するBCP視点でのサプライチェーン対策強化に注力しています。

従業員ファーストの経営を推進

私の経営モットーは従業員ファーストです。社員の成長が会社の繁栄につながり、事業活動を通じて得た利益を社員、株主、社会に還元する好循環を生み出すことが、持続的成長企業につながると考えているからです。そのためには積極的な人財投資を行い、多様な人財がチームで総合力を発揮できる環境づくりが重要です。育児に係る環境整備も重要テーマとして制度・運営の両面から改善に取り組んでいます。2023年の労働組合との春季交渉では、賃金・賞与とも要求に対し、初の満額回答をしました。従業員が頑張って成果を出したなら、それに応えるのが要諦だと考えています。また、女性活躍を中心としたダイバーシティの推進、豊富な経験・スキルを持つシニア社員の活用、海外拠点を含めたものつくり力の維持・向上に向け、人財育成に注力しています。中長期視点に立ち、社員の幸せ・働きがいと、会社の成長の両立を図るための制度づくりと、その趣旨が活かされた運用になっているのか、現場の声に耳を傾け、最適な環境づくりを継続してまいります。

図:企業行動基準 人を大切にします/経営方針 多様な人材の意欲を尊重し、チームで総合力を発揮します → 社員の成長、会社の繫栄、利益還元 社員・株主・社会

富士電機のDNA「熱く、高く、そして優しく」を次世代へ

私は、経営スローガン「熱く、高く、そして優しく」の思いを常に持ち、社員に伝え続けています。熱く、とは新しい技術・製品を開発し、お客様に届けて喜んでもらう、世の中のために尽くしていく熱い気持ち。高く、とは目標を高く持ち、自身で限界を決めないこと。どんなに苦しく大変でも目標は高く持ってチームで共有する。そして優しく、は感謝に置き換えています。お客様、一緒に働く仲間、家族に対する感謝の気持ち。今後も社員一人ひとりが富士電機のDNAを引き継ぎ、大切にしてもらいたいと考えています。

この変化の激しい時代にあって、持続的成長企業であり続けるために、多様な個性を持った社員がチームで総合力を発揮し、エネルギー・環境事業を発展させ、社会・環境課題の解決、お客様価値の創造に貢献してまいります。株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆様におかれましては、今後とも一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。