富士電機株式会社

IR資料室富士電機レポート/統合報告書

財務・資本戦略

持続的な企業価値向上に向けた
成長投資と収益体質の強化により、
更なる資本効率の向上を目指します。

執行役員専務
経営企画本部長
荒井 順一

成長戦略を支える財務基盤の構築

富士電機は、リーマン・ショックの影響で赤字に転落以降、持続的な成長に向けて、収益体質の強化と財務体質の改善に取り組んできました。2010年度に事業ドメインをエネルギー・環境事業に明確化し、パワエレ、パワー半導体事業へのリソース傾注による成長戦略の推進に取り組むとともに、利益を生み出す源泉はものつくりにあるとして、グローバルでのものつくり力強化、地産地消の推進に取り組みました。さらに2012年度に始めた全社活動「Pro-7」を継続し、収益性を大幅に改善してきました。加えて2021年度からは、全事業でキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の改善に取り組み、成長投資の実行を支える営業キャッシュフロー(CF)の創出を図りました。

その結果、2022年度営業利益率は過去最高の8.8%を実現し、ネットD/Eレシオ、自己資本比率も過去最高となり、財務体質は大幅に改善されました。R&I格付けは、2021年度以降A格を獲得しています。

図:ネット有利子負債、ネットD/Eレシオ、自己資本比率、格付けの推移。2022年度実績、自己資本比率44%、ネット有利子負債991億円、ネットD/Eレシオ0.2倍、R&I:A、JCR:A

利益の最大化に向けた成長投資を軸にバランスを重視したキャッシュフローアロケーションを実行

持続的な企業価値向上に向けた成長投資を着実に実行

財務体質を大幅に改善してきたなかで、更なる企業価値向上に向け、注力分野であるパワエレ、パワー半導体事業を中心に、2019年度~2023年度累計で約5,200億円の成長投資を実行する予定です。

収益力の改善により獲得した資金やガバナンス向上に向けて推進している政策保有株式の売却で得た資金などを活用して、成長投資資金を確保し、財務バランスを考慮しながら、注力分野への成長投資を継続しています。

図:キャッシュフローアロケーション(2019~2023年度累計計画)。(億円)キャッシュイン:株式売却約1,000、営業CF(R&D除く)約5,500。キャッシュアウト:成長投資約5,200、株主還元約690、借入金返済等。

株主還元は、安定的かつ継続的な配当を目指す

剰余金の配当については、中長期的な事業サイクルを勘案し、安定的かつ継続的な配当を目指し、当期の連結業績、今後の成長に向けた研究開発・設備投資計画および経営環境などを総合的に勘案し、配当金額を決定しています。 持続的な収益性向上につながる成長投資を優先して利益の最大化を図るとともに、株主様への還元につきましては、安定・継続的配当を重視し、2023年度中期経営計画の目標に掲げる配当性向30%を目指してまいります。

この方針に基づき、2022年度の剰余金の配当は、1株あたり年間115円とし、2021年度から15円増配しました。2010年度以降、継続的に増配を続け、配当金額を着実に増やしています。

図:年間配当の推移(円)。2022年度実績:115、配当性向(%)27、親会社株主に帰属する当期純利益(億円)613。

更なる資本効率の向上に向けて

社内では2021年度より事業別ROICを管理指標に導入し、先々の収益性を意識した投資判断および資本効率向上に向けた取り組みを推進しています。事業別ROIC管理により事業ごとに利益と投下資本のバランスが取れているかなどBS・CF管理強化を図っています。

事業成長が見込まれるパワー半導体事業では、マレーシア工場でディスク媒体製造設備をパワー半導体シリコン(Si)8インチの生産ラインに転換するなど、投資額の抑制と利益の最大化を実現する施策を推進しています。食品流通事業では、生産拠点統合や人員の配置転換など構造改革に取り組むことで収益性改善を図り、ROICの改善につなげています。

またCCC改善に向けて、売掛金回収の強化や工場ダッシュボードの活用による棚卸資産の見える化などにより棚卸資産の圧縮に取り組んでいます。併せて営業外費用や特別損失の削減などによる純利益の向上に取り組み、キャッシュ創出力を高め、収益性向上につながる成長投資を引き続き加速させ、自己資本比率が高まるなかでも、資本効率向上を目指しています。

図:投下資本(自己資本+ネット有利子負債)、親会社株主に帰属する当期純利益、ROIC、ROEの推移。2023年度経営計画 投下資本(億円)6,291、ネット有利子負債(億円)779、ROE12%、ROIC10%、自己資本(億円)5,512、親会社株主に帰属する当期純利益(億円)625。