富士電機株式会社

IR資料室富士電機レポート/統合報告書

エネルギー・環境事業の推進 ~カーボンニュートラルの実現~

Case1
水素製造用電源

クリーンエネルギーの主流化

水素製造用電源 ―事例: NEDO水素社会構築技術開発事業

産業分野での実績を活かし拡大する「グリーン水素」製造の電源に
グリーン水素の製造フロー
図:再生可能エネルギー→水素製造施設→水素ガス貯蔵施設→用途

社会課題

環境にやさしいクリーンなエネルギーとして「水素」への注目が高まっており、海外を中心に急速に市場が伸長しています。再生可能エネルギーを活用した水素製造施設においては、水電解装置により水を電気分解することで水素(グリーン水素)を製造しますが、これを支えるには、大容量の直流電源による安定化した電力供給が必要です。

提供価値

富士電機では1950年代より、アルミニウム、銅、亜鉛など非鉄金属や苛性ソーダなどの精製工程の電源供給のため、大容量変圧整流器「S-Former」を納入してきました。そのシェアは世界トップクラスで、独自の優れた技術を駆使し、高い安全性と信頼性を実現しています。

現在この技術を、水素製造にも活かしています。2017年に、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の水素社会構築技術開発事業の一環として、東芝エネルギーシステムズ㈱様から旭化成エンジニアリング㈱様が当時世界最大級の10MW級大型電解装置を受注し、そのうち電源装置の設計製作を当社が請け負いました。水素の製造工程で必要となる電源装置として「S-Former」を納入し、現在は海外を中心とした更なる市場拡大に向け、40MW級をはじめ、将来は100MW級の実現も視野に、大容量化した新製品の開発を進めています。

図:再生可能エネルギー→水素製造施設→水素ガス貯蔵施設→用途
NEDO水素社会構築技術開発事業で納入した
「S-Formerシリーズ」(10MW級大型水電解装置向け)
共創パートナー企業・団体 旭化成(株)様、旭化成エンジニアリング(株)様

Case2
電力系統向け
蓄電池システム

エネルギー供給の安定化

電力系統向け蓄電池システム ―事例: 北海道南早来変電所(北海道電力ネットワーク(株)様)

電力系統の調整力として、再エネ発電の導入拡大に貢献
南早来変電所:建屋外観
南早来変電所:建屋内の当社製パワーコンディショナ

社会課題

今、さまざまな地域で太陽光、風力などの再生可能エネルギーによる発電が広がっています。電力を安定的に供給するには、電力系統における需要(電力消費量)と供給(電力発電量)のバランスを一定に保ち、電気の品質である周波数を安定させることが必要です。太陽光、風力による発電量は、天候や風速などによって大きく変動するため、周波数を一定に維持することが課題であり、需要と供給の「調整力」として蓄電池などが有効とみられています。

提供価値

当社は、電力系統の「調整力」として社会に貢献する、電力系統向け蓄電池システムを提供しています。当社は1990年代から系統安定化用途の蓄電池システムに着手し、2015年からは、北海道電力ネットワーク㈱様および住友電気工業㈱様が共同で実施した大型蓄電システム実証事業に参画し、いち早く実績を積んできました。レドックスフロー電池を用いた、世界最大級の蓄電容量(60MWh)の蓄電池システムを構成する、パワーコンディショナ(PCS)、コントローラ(制御盤)を納入し、現在も北海道の電力系統における調整力として活躍しています。

2024年4月から、日本でも蓄電池による「調整力」を売買する需給調整市場が本格運用されます。当社は本市場に参入する商社、電力会社、石油会社、再生可能エネルギー会社などの事業者に蓄電池システムを提供し、更なる再生可能エネルギー発電の普及に貢献します。

蓄電池システムの構成
図:中央給電指令所システム→当社製制御システム→当社製PCS→充放電/電力変換→レドックスフロー電池(蓄電池)
共創パートナー企業・団体 北海道電力ネットワーク(株)様、住友電気工業(株)様

Case3
地域エネルギー
マネジメント
システム

エネルギー供給の安定化
省エネ機器・システムの普及

地域エネルギーマネジメントシステム ―事例: 新さっぽろ駅周辺地区

街区の効率的なエネルギー運用を支え、脱炭素・省エネにつなげる
新さっぽろ駅周辺地区
CEMS画面

社会課題

開発地域を中心に、エネルギーセンターを設置し、街区のエネルギー供給の一極管理による省エネ化が進められています。積雪寒冷地である北海道は、エネルギー消費量が多く、特に暖房エネルギーの消費は全国平均の3倍となっています。低炭素で環境にやさしいまちづくりに向けては、電力や熱などのエネルギーをいかに効率よく製造・供給・利用していくかが課題となっています。

提供価値

この課題を解決する方法の1つが、街全体のエネルギーを効率的に管理するためのシステム「地域エネルギーマネジメントシステム(CEMS)」です。当社は2011年の北九州スマートコミュニティ創造事業をはじめ、さまざまな実証事業へ参画し、地域におけるエネルギーの最適運用についてノウハウを蓄積してきました。

新さっぽろエネルギーセンターでは、発電機(ガスコージェネレーション)や熱源機器によって新さっぽろ駅周辺地区で使用される電気・温水・冷水をつくっており、当社はここに、AIを活用したCEMSを納入しています。本システムは、街区内にある医療施設、商業施設、ホテル、マンションなどの各施設のエネルギー需要を高精度に予測し、その予測に基づいてエネルギーの供給側と需要側の双方を自動調整することで、街区全体で約35%(約1,000世帯分に相当)のCO2削減に貢献します。

※環境省平成31年度家庭部門のCO2排出実態調査

需要家側との双方向連携でエネルギーを最適に管理
図:エネルギー源(電気・ガス・熱)→エネルギーセンター(供給側)→需要家側
共創パートナー企業・団体 北海道ガス(株)様、大成建設(株)様

Case4
陸上電力供給
システム、
電気推進システム

電化率の向上

陸上電力供給システム、電気推進システム ―事例: 国土交通省「港湾脱炭素化推進計画」

港湾・船舶の電化を進め、カーボンニュートラルポートの実現に貢献
港湾
陸上電力供給システム(外観)
日本初ゼロエミッション船e-Oshima((株)大島造船所製)

社会課題

世界各国での2050年のカーボンニュートラル実現に向け、港湾の脱炭素化への関心が高まっています。日本におけるCO2排出量は、製油所、発電プラント、鉄鋼、化学工業などが約6割を占めますが、これらの多くは臨海部に立地し、輸出入や運搬に港湾を使います。従来の化石燃料から電気への電化、そして更なる脱炭素化のため、日本政府は港湾・船舶に関連する企業・団体から成るコンソーシアムを構築し「カーボンニュートラルポート」の実現に向けた検討を進めています。

提供価値

富士電機は、カーボンニュートラルポートの各種協議会に参画しており、自社製品・システムの標準規格化を視野に、検討を推進しています。

当社はこれまでも港湾・船舶のカーボンニュートラルに取り組んでおり、日本初の完全バッテリー駆動船である「e-Oshima」には、当社の電気推進システムが採用されています。また国内メーカーで唯一、直流配電方式を採用することで、電力変換装置の小型化、省スペース化も実現しました。 他にも、当社の陸上電力供給システムは、港に停泊する船舶への電力供給を担います。船舶が港に停泊する際、船舶内の発電機(ディーゼルエンジン)を停止させ、船舶に必要な電力を陸上から送電することで、CO2排出量削減に貢献できます。本システムは2023年度中に新製品を上市し、業界トップクラスの大容量・小型化を実現します。

カーボンニュートラルポートの構築を通して、大幅な脱炭素化に貢献します。

「パワエレ技術を用いた電力変換装置」がコア商材
陸上電力供給システム 港湾・船舶双方向での電力供給が可能
共創パートナー企業・団体 港湾関連の地方自治体、海運・造船会社