IR資料室富士電機レポート/統合報告書
人財
人財の更なる活性化と育成強化を推進し、
「社員の幸せ」と「会社の持続的成長」の
好循環を実現します。
執行役員常務
人事・総務室長
角島 猛

富士電機は「多様な人材の意欲を尊重し、チームで総合力を発揮する」を経営方針に、「人を大切にする」を企業行動基準に掲げ、人権尊重や安全衛生、社員の健康確保をすべての基盤に置きつつ、事業の持続的成長に向けて核となる人財の活躍推進、育成、適正配置など、「人への投資」に積極的に取り組んでいます。
人財施策の推進においては、「社員の幸せ」と「会社の持続的成長」の好循環を実現していくことが大切だと考えています。持続可能な企業体質の構築に不可欠な人権の取り組みや多様な人財の活躍推進、労務構成を踏まえたシニア社員の活性化や人財獲得の取り組み強化、さらには、一層の業務効率向上を目指すとともにワーク・ライフ・バランスにつながる働き方改革の推進など、取り巻く諸課題に対しタイムリーな取り組みを進めることで、経営基盤の強化を図っていきます。
人権尊重の取り組み
国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を踏まえ、「人権を侵害しない・人権侵害に加担しない」持続可能な企業体質の構築を推進しています。「従業員の人権に関する方針」に基づき、国内外の事業所、連結子会社を対象に人権デュー・デリジェンス※の取り組みとして人権・労働アセスメントを実施しています。
2022年度は、人権・労働アセスメントの実施頻度を従来の3年に1回から2年に1回実施に見直した最初の実施年度であり、内容についても、最新の国際基準に準拠した自己点検項目に見直しました。改善の必要性が確認された連結子会社に対し、改善指導を行っています。また、企業の人権尊重責任に関する人権啓発研修の充実を図りました。具体的には、主任層・幹部職に対し、国際的に合意された人権に関する考え方や企業活動と人権の関わりについて理解を深める研修を実施しています。人権が尊重された働きやすい職場運営は企業競争力の源泉であるとの認識のもと、国内の全社員を対象にハラスメント防止に関する教育を継続して実施していきます。
※ 人権デュー・デリジェンス:人権に関する悪影響を事前に認識し、防止、対処する取り組み
実施年度 | 2022年度(隔年実施) |
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実施対象 | 当社の各事業所および国内外連結子会社 ・ 事業所:21拠点 ・ 子会社:国内21拠点、海外42拠点 |
結果 | 国内1拠点、海外10拠点に対し、未達項目に対する改善指導を実施 主な改善指導内容: ・ 人権に関する教育の計画的な実施 ・ 定期的な健康診断の実施 ・ 労働時間への配慮 など |
多様な人財の活躍推進
女性活躍推進の取り組み
多様な人財による新たな価値創造を通した会社の成長に向け、ダイバーシティを推進しています。ダイバーシティの取り組みの中でも、特に女性の活躍推進施策を強化しており、2023年度「女性の採用比率20%」と「女性管理職比率3%」を目標に掲げ、各種女性活躍推進施策に取り組んでいます。
女性の採用については、理工系出身の女性社員を中心とした採用プロジェクトを設置しています。プロジェクトメンバーが積極的に女子学生と接点を持つことで、採用数の拡大に取り組みました。その結果、女性採用比率については、2018年の入社者以降6年連続で目標の20%を達成しています。
2020年度末 | 2021年度末 | 2022年度末 | 2023年度末(目標) | |
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女性社員比率 | 13.2% | 13.3% | 13.6% | — |
女性採用※1比率 | 22% | 20% | 21% | 20% |
女性管理職※2比率 | 2.5% | 2.8% | 3.2% | 3.0% |
女性役職者※3数 | 266名 | 295名 | 316名 | 400名 |
当社ならびに当社と同一の人事制度を採用する国内子会社(6社)を対象
※1 女性採用:大卒、高専卒 ※2 管理職:課長職以上 ※3 役職者:主任クラス以上
海外連結 | (参考)国内外連結 | |
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女性社員比率 | 41.1% | 27.7% |
女性管理職比率 | 26.5% | 9.4% |
また、女性の役職者数の拡大に向けて、意欲を有する女性社員に対する重点的な研修の実施や復職支援、両立支援などの女性社員が働きやすい職場環境づくりについても積極的に取り組んでいます。
女性管理職研修 | 女性管理職が経営参画できる素養を身に着けるための研修を実施 |
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重点キャリア対象者の育成 | 女性社員のキャリアアップのための教育研修。基礎能力向上に向けた座学講座と課題解決の実践演習を通し、上位職挑戦の支援を実施 |
シスター制度 | 女性先輩社員をアドバイザーとした部門横断的なメンター制度 |
理工系女性採用プロジェクト | 職場で活躍する理工系出身の女性社員の生の声を伝えるセミナーなどを通じて、理工系女性社員の採用につなげる取り組み |

女性管理職研修の実施
管理職昇格後の女性社員を対象とした能力開発強化にも取り組んでいます。女性管理職を対象に、さらに次のステップを目指し、経営に参画できる素養を身に着けることを目的として、女性管理職研修を実施しています。
2022年度は、管理職としての視座を高め、視野を拡げることを目指したプログラムとして、自己分析を通じたリーダーシップの開発や、未来を洞察し具体的なシナリオとゴールを設定する訓練などの各種プログラムを実施しました。研修には、30名が参加し、「自身のキャリアを振り返る良いきっかけとなった」「自身の存在意義、今後の社会生活におけるミッションを見いだせた」「実際の業務でも役立つ考え方を習得できた」など、管理職としての意識変革を実感できる機会となりました。
今後も女性社員が経営参画できる素養を身に付けるための環境整備に取り組んでいきます。
シニア社員の活躍推進
少子高齢化に伴う労務構成の高齢化への対応として、シニア社員の活躍推進がますます重要です。
当社の事業の特性として、製品寿命が長く技能習得に時間を要することから、シニア社員の活躍フィールドは広く、当社にとって貴重な戦力です。社員が60歳以降もいきいきと働くことができる制度整備を通し、社員の安心と事業継続の両立を実現しています。
一般社員を対象とした「選択定年延長制度」は、2000年度に導入して以降、制度の利便性の向上を図りつつ、定着した仕組みとして根付いており、各社員が各々のライフプランに応じた定年年齢を60~65歳の中から選択しています。また、2020年度に導入した、幹部社員を対象とした「シニアタスク制度」は、60歳以降の仕事の内容とパフォーマンスによっては60歳以前と同水準の処遇を実現することも可能な仕組みとして、シニア社員の意欲向上につなげています。
さらに、65歳以降も高いスキルや知識を発揮し貢献可能な社員が、最長75歳まで活躍できるよう、「65歳以降雇用ガイドライン」を制定し、シニア社員の活躍推進につなげています。
2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
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一般社員: 選択定年延長制度 |
84.6% | 82.5% | 82.1% |
幹部社員: シニアタスク制度 |
86.6% | 96.8% | 91.6% |
障がい者活躍推進の取り組み
当社は、1994年に障害者雇用促進法に基づく特例子会社「㈱富士電機フロンティア」を設立しています。同社は、障がい者の採用と職域を拡大することで、順次拠点の拡大を図り、現在は主な事業所のすべて(全14拠点)に拠点を設け、障がい者の活躍推進に取り組んでいます。
同社の主な職域は、社内書類の配送業務や清掃業務に加え、各事業所の製造支援・軽作業業務があり、特に、製造支援・軽作業業務への職域拡大に積極的に取り組んでいます。
2023年6月現在、442名の障がい者が在籍し、障がい者雇用率は3.02%と法定雇用率(2.3%)を大きく上回っています。今後も毎年20名程度の採用を継続的に行い、職域の確保・拡大と安定的な雇用に取り組んでいきます。
働き方改革
全社活動である「Pro-7活動」の一環として、業務品質や業務効率の向上につながる働き方への変革と、ワーク・ライフ・バランスの実現の2つの観点より取り組みを進めています。
働き方改革では、2017年度より全社横断的な取り組みを開始し、長時間労働の縮減や休暇取得促進など、メリハリある働き方の実現に向けて、地道な啓蒙活動やITを活用した労働時間実態の見える化を中心に取り組んできました。また、働く時間・場所の柔軟化に関する多様な勤務制度については、従業員ニーズと生産性向上の観点から、段階的に利用対象を拡大し、制度の利便性拡充を図っています。加えて、社員の生産性向上の意識変革をねらい、時間価値の高い働き方を実現している社員への手当支給のルールも整備しました。
ワーク・ライフ・バランスの観点では、育児・介護休職制度や時間短縮勤務制度、配偶者が国内外に転勤した場合の休職制度など、家庭との両立を支援する制度を整備しています。
2022年度以降は、本社地区を中心に職場のフリーアドレス化を推進し、紙資料の極小化や活スペースを利用した打ち合わせブースの充実を含め、職場環境の変革にも取り組んでいます。
勤務制度と職場環境の両面から、社員の働き方改革につながる取り組みを実施しています。
2018年度 | 2022年度 | |
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一月当たりの平均残業時間 | 24.4時間 | 20.8時間 |
年次有給休暇の平均取得日数 | 14.5日 | 18.5日 |
在宅/サテライト勤務(利用延人数) | 2,397名 | 147,251名 |
育児休職制度(利用延人数) | 107名 (内、男性6名) (男性取得率3.1%) |
131名 (内、男性43名) (男性取得率21.1%) |
人財育成の取り組み
「企業行動基準」に、社員一人ひとりの成長とチームの総合力の発揮を実現する人財育成の強化を表明し、社員の能力開発の充実と教育投資の強化を図り、強力なリーダーシップと高い専門性を発揮できる人財の育成を強化しています。
次世代経営人財の育成
持続的成長に向け、将来の経営幹部人財の育成にも積極的に取り組んでいます。
育成のポイントは大きく3点です。1つ目は、育成対象者の若手段階からの厳選、2つ目は育成計画書に基づく効果的なOJTの実施、3つ目は選抜研修への参加です。2021年度は、従来実施してきた将来の経営幹部人財の育成制度に加え、ライン統括職の計画的育成をねらいとして、「ライン後継者計画制度」を立ち上げました。2つの制度を組み合わせて運営することで、後継育成が必要なポストと個人の育成を結び付け、より実効性の高い経営幹部人財の育成に取り組んでいます。年に一度育成対象者の人選内容、育成的ローテーションの実施状況、選抜研修の受講状況などは執行役員と共有・議論し、内容の充実を図っています。

変化に適応した人財育成 : デジタル人財の育成
AI・IoTなどのデジタルトランスフォーメーション先端技術が急速に普及し世の中が大きく変化する中、デジタル技術を活用した課題解決や新たな価値創出に向け、デジタル人財の育成に積極的に取り組んでいます。サービス開発を担う技術者だけでなく、工場・生産部門やお客様に近い営業・サービス部門も含めDXリテラシー向上に向けた教育を実施しています。また、社会の急速な変化に適応し持続的に成長するために、デジタル技術を活用した社内業務の生産性向上が不可欠であり、リスキリングの観点からも広く教育を推進しています。2021年度以降、デジタル人財育成に向けた教育受講者は延べ7,000人超となりました。今後も社会や事業ニーズの変化に適応した人財育成を展開し、社員の働きやすさと生産性向上を通した持続的成長を目指します。
従業員コミュニケーション
社員意識調査
社員の意識をタイムリーに把握するために、国内外連結子会社を対象として、計95設問からなる社員意識調査を毎年実施し、会社満足度、職場満足度、仕事満足度などの社員の全体的な意識に関する定点観測を行っています。調査結果は経営会議にて報告するとともに、組織ごとの分析結果を各部門長・子会社代表にフィードバックし、それぞれの課題改善に活用しています。
これまでの社員意識調査結果は、中間管理職のマネジメント強化に向けた研修導入、社員のキャリア形成支援に向けた目標管理制度の強化および教育研修の拡充、技能系社員の改善・合理化の取り組みを評価する処遇制度見直しといった各種人財施策にダイレクトにつなげています。
また、社員意識調査結果は、人的資本に関する取り組みの指標として位置付けています。指標の上昇を目標とするのではなく、トレンド分析の中で課題・リスクを早期に把握し対策につなげることを目的として、「3.5pt以上を維持すること」を目標としています。
目標 | 2021年度実績 | 2022年度実績 |
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健全と評価できるレベルの3.5pt以上を維持 | 3.8pt | 3.8pt |
※ 調査対象範囲は当社および富士古河E&C㈱を除く国内外連結子会社
※ 総合的な会社満足度を示す代表設問「富士電機で働いていることに満足している」に対する回答平均値 (1~5ptの5段階評価、点数が高い方が肯定的)