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設備保全のデジタル化とスマート化の動向・事例
設備保全のデジタル化とスマート化の役割の違い、製造業の取り組み動向と事例の紹介

製造現場で重要視される保全業務の「デジタル化」と「スマート化」。現場情報をデータ化する「デジタル化」でデータを正確に記録・蓄積する基盤を作り、そのデータを高度に活用する「スマート化」で保全業務の最適化が可能になります。
本記事では、両者の役割の違いを整理するとともに、化学業界における最新の取り組み動向や、現場での導入事例を通じて、スマート化を進めるためのヒントを解説します。
設備保全の「デジタル化」と「スマート化」とは?
設備保全のデジタル化とは
設備保全のデジタル化とは、これまで紙の帳票やホワイトボード、あるいは担当者個人に依存していた点検記録や保全履歴を、データ化して管理・運用する取り組みを指します。 例えば、現場での巡回点検にタブレット端末を導入してシステムに直接入力を行ったり、設備管理システム(CMMS)を活用して部門間で情報を共有したりすることが挙げられます。
これにより、情報伝達の効率化や転記ミスの削減、製造管理業務効率の改善や、部品在庫不足の解消などの効果が期待できます。
設備保全のスマート化とは
設備保全のスマート化とは、デジタル化によって蓄積されたデータを、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)などの先進技術を用いて分析し、保全業務そのものを高度化・最適化していく取り組みのことです。
設備保全のスマート化を進めることで、データを活用した意思決定の支援、設備停止リスクの低減や、工場全体の安全性向上、ライフサイクルコストの最適化や、特別高圧受変電設備の定期点検周期の見直しなどが期待できます。
また、経済産業省が推進する「スマート保安」ではインフラ・設備の経年劣化、人手不足や熟練技術者の減少といった産業界の課題に対し、AIやIoTなどのデジタル技術を活用して、従来の属人的になりがちな設備保全からデータ駆動型の設備保全へと転換を図る取り組みが検討されています。
設備保全のデジタル化とスマート化の違いと関係性
設備保全の「デジタル化」と「スマート化」は、どちらも保全業務の生産性を向上させるための取り組みです。両者の違いを簡単に整理すると、以下のようになります。
このように、デジタル化が保全業務をデータ化するという「手段」であるのに対し、スマート化は蓄積されたデータを活用して設備保全の高度化・最適化するという「目的」であるという違いがあります。そのため、まずは現場情報を正確にデータ化する「デジタル化」から着手するのが一般的です。データ品質の確保と継続的な蓄積基盤を整えることで、AIなどを活用した高度な設備保全や最適化が可能になります。
化学業界における設備保全のスマート化に関する動向
それでは、化学業界における設備保全のスマート化はどの程度進んでいるのでしょうか。当社の設備保全のスマート化に関連する調査結果をもとに、現状の取り組み状況を確認します。
・設備保全のスマート化が進む一方で、企業規模別で取り組みに差も

当社が化学・石油製品業界の工場従事者を対象に実施した「製造業(化学工業・石油)の設備保全・スマート化に関する意識調査(2025年)」によると、設備保全のスマート化の実施状況について、「一部または全体的に取り組んでいる」と回答したのは全体の18.1%、「具体的な計画があり取り組む予定がある」が14.8%となりました。
従業員規模別での集計では300人未満では「一部または全体的に取り組んでいる」の回答は4.2%だったのに対し、従業員規模3000人以上では41.3%となっており、規模によって取り組みに差がでる結果となりました。
・老朽化対策としてのAI/IoT活用との回答は2割超

当社が化学工業業界の工場従事者を対象に実施した「化学工場における生産設備の老朽化対策の現状と課題(2024年)」によると、AI/IoTを活用した予知保全の実施状況についての設問では、「取り組んでいる」と回答したのは全体の23.8%となりました。
従業員規模別の集計では従業員数が多くなるほど「取り組んでいる」の回答率が高くなっており、新技術の活用が進んでいる様子が伺えます。
・「スマート保安」も現場の関心・準備が進行している

当社が化学・石油製品業界従事者を対象に実施した「製造業(化学・石油製品)のDX・脱炭素化動向調査(2026年)」によると、スマート保安(ドローンやAIを活用した遠隔監視・省力化)への取り組み状況は、回答者全体では「既に取り組んでいる」との回答が10.6%、「具体的に準備・検討中」との回答が13.0%となりました。
従業員規模別の集計では1000人以上で30.5%でした。スマート保安の考え方が意識され始めていると考えられます。
製造業における設備保全のデジタル化・スマート化の取り組み事例8選
設備保全のデジタル化・スマート化を検討する際は、例えば製造DXを支援する企業サイトに公開してある導入事例や、経済産業省の「スマート保安」の取り組みを紹介するページ内に公開されている「スマート保安先進事例集」などが参考になります。
導入効果は適用対象や運用形態により異なりますが、以下では当社が支援した製造業向け設備保全のデジタル化・スマート化事例を8つご紹介します。
【事例1:デジタル化】
保全管理システムによる部品在庫の見える化
化学製造業のデジタル化事例。設備修繕時の部品在庫管理に課題を抱えていました。専用部品の調達遅延が設備稼働や生産計画に悪影響を及ぼしていたため、保全管理システムを導入し、在庫の可視化を実現しました。これにより適正な在庫管理が可能となり、過去の履歴に基づく部品交換サイクルの最適化を通じて、設備稼働率の向上と生産効率化に大きく貢献しました。
保全管理システムによる部品在庫の見える化
【事例2:スマート化】
AI技術を活用した設備診断システムによる異常兆候検知
化学製造業のスマート化事例。設備監視を人が行っており、監視対象の増加に伴う確認負荷の高さが課題でした。そこで「MainGATE/MSPC」を導入し、異常兆候検知を自動化。運転データから関連性の高い項目を絞り込むことで処理負荷を軽減し、装置ごとのスピーディな診断とアラーム発報による高度な故障予知を実現しました。
AI技術を活用した設備診断システムによる異常兆候検知
【事例3:スマート化】
排気ファンの故障予兆の早期発見による損失回避
化学プラントのスマート化事例。排気ファン設備において、回転機故障予兆監視システム「Wiserot」を導入し、保全の高度化を実現しました。振動センサによる周波数解析を通じてベアリングの内輪傷成分を検出し、故障予兆を早期発見。計画的なメンテナンスを実施することで、数千万円規模の損失を回避することに成功しました。
排気ファンの故障予兆の早期発見による損失回避
【事例4:スマート化】
振動診断によるファンの予防保全
化学系メーカーのスマート化事例。インバータを使用した回転機では、キャリア振動ノイズにより本来のベアリング診断が困難なケースがあります。そこで回転機故障予兆監視システム「Wiserot」を導入し、ノイズをカットしてベアリング振動のみの診断を実現。これにより故障停止を回避し、試算値で年間3千万円〜7千万円の損失の回避に貢献しました。
振動診断によるファンの予防保全
続いて、他の製造業の事例ではありますが、化学業界の保全業務においても参考となる有益な取り組みを併せてご紹介します。
【事例5:デジタル化】
設備情報の可視化による状態監視保全
設備保全のデジタル化事例。保全部門では、各拠点で保全台帳や手順書の管理がバラバラで、目視や二重入力などの煩雑な業務により多大な工数がかかっていました。そこで保全管理システムを導入し、業務の標準化と自動化を推進。記載内容の統一や点検履歴の可視化、設備カルテの自動作成などを実現、計画作成工数を約90%、点検入力工数を約50%削減を実現しました。
設備情報の可視化による状態監視保全
【事例6:デジタル化】
遠隔作業支援システムによるトラブル対応支援
トラブル対応のデジタル化事例。国内の工場で発生した突然のトラブルに対し、スマートグラスを用いた遠隔作業支援システムを導入し、現場に行かずに熟練者がリアルタイムで指示することで一次対応を実施しました。遠隔からの技術支援により、トラブル対応の早期復旧(緊急対応MTTR:約1/5に短縮)を実現しました。
遠隔作業支援システムによるトラブル対応支援
【事例7:スマート化】
設備管理のスマート化・保全業務の効率化
当社山梨工場のスマート化事例。「まるごとスマート保安サービス」を導入し、特高受変電設備の遠隔監視やグラフ化による稼働状況の見える化を実現しました。点検業務のデジタル化で記録や報告を効率化し、運転・保全データの統合活用により安定稼働を実現しています。
設備管理のスマート化・保全業務の効率化
【事例8:スマート化】
スマート保安適用による定期点検周期延長と保全業務のDX・省力化
食品製造業におけるスマート化事例。特別高圧受変電設備では、設備の劣化と年1回の定期点検に伴う停電作業が課題でした。そこで「まるごとスマート保安」を提案。既設機器への適用で保安規程の見直しを図り、定期点検周期の延長を可能にしました。
スマート保安適用による定期点検周期延長と保全業務のDX・省力化
・まるごとスマート保安サービス
現場設備からさまざまなデータを収集し、オンライン稼働情報とオフライン保全情報を統合・分析することで、 設備データの一元管理と設備管理業務の最適化を実現します。
・遠隔作業支援パッケージ FWOSP-Glass
FWOSP-Glassの特徴は遠隔地の現場状況をリアルタイムで把握できることです。作業員がスマートグラスを装着することで、遠隔から映像を見ながら作業指示を伝えることができます。保安・保全作業記録のデジタル化、保全作業を支援するパッケージとして様々な業界で利用されています。
・回転機故障予兆監視システム Wiserot
回転機故障予兆監視システムWiserotは、回転機・モータ関連設備の予防保全を可能にするシステムです。生産ラインや重要機器として稼働している、回転機の振動を定期的に計測し、傾向監視により異常兆候を早期発見することで、適切な予防保全の立案、 生産ロスコスト低減に貢献します。
・MainGATE/MSPC
製造業を中心に550件以上の導入実績があり、製造工程の診断・分析による加工精度向上、製造工程の診断・分析による品質歩留り向上、設備異常診断医療機器 品質良否判定への適用による工程品質確保、生産量安定化、冷凍機システムの監視による異常予兆検知などに利用されています。
おわりに
化学プラント・工場の安全・安定稼働を限られた人員で維持していくためには、最新技術の活用が有効な手段の一つとなります。
一方で、当社が実施した「製造業(化学工業・石油)の設備保全・スマート化に関する意識調査(2025年)」によると、設備保全のスマート化を進める上での課題について、もっとも回答が多かったのは「推進できる人材不足」で49.4%、次いで「知識・ノウハウの不足」で48.2%、「予算の確保・制約」で45.9%の順に続く結果となりました。
この結果から、設備保全のスマート化を推進するには、人材育成や知識・ノウハウの蓄積が必要であることが伺えます。まずは、自社の現状をしっかりと把握し、段階的にスマート化を進めることが必要です。自社への導入を具体的に検討される際は、本文で紹介した調査資料や取り組み事例も併せてご参照ください。
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