食品製造業・食品工場に関する動向調査
食品製造業の技能・技術継承に関する実態調査
技能・技術継承は人材確保に加え技能・技術保有者の時間の確保が必要に
食品製造業は他の業界と比較して、機械化・自動化することが難しい工程があり、熟練技能者が経営にとって重要な人財であることが少なくありません。
今後、食品製造業では労働人口の減少・熟練技能者の退職により技術や技能を失ってしまう可能性があり、これら問題への対応が求められています。
課題解決の方法には、雇用延長・マニュアル化などの対策に加え、IoT(モノのインターネット)の活用などが考えられます。
今回、富士電機の食品工場ソリューションサイトでは独自に食品製造業の技能・技術継承に関する調査を実施しました。
食品製造業に勤務しており、かつ、製造・生産、技術・研究開発、品質管理、生産管理や保全部門に所属している回答者を対象に、技能・技術継承への取り組み状況、問題・課題などについての インターネットによるアンケート調査を実施し、「食品製造業の技能・技術継承に関する実態調査」としてまとめました。
食品製造業の技能・技術継承に関する実態調査概要
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対象エリア
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全国
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調査対象者
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食品製造業従事者
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有効回答数
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622人
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調査方法
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インターネット調査
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調査期間
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2022年6月24日~6月30日
[左:回答者の所属部門]
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製造・生産 50.4%
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技術・研究開発 21.1%
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品質管理 14.8%
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生産管理 11.1%
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保全・点検 2.5%
[右:従業員規模]
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100人未満 10.2%
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100人~299人 31.2%
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300人~499人 27.7%
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1000人~ 30.9%
調査項目
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将来の技能・技術継承についての不安
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技能・技術継承の重要度
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技能・技術継承に関する取り組み状況
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技能・技術継承に向けた具体的な取り組み
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OJT・メンター制度の充実
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機械化・自動化の推進
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標準化・マニュアル化の推進
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写真・動画・音声データなどの記録
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遠隔作業支援システムの活用
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IoTやAI(人工知能)の活用
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熟練技能者の定年延長・再雇用
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技術・技能研修制度の充実
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外部委託の活用
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技能・技術継承する上での阻害要因
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技能・技術継承に関する問題・課題について(FA)
以下、動向調査の内容を抜粋してご紹介いたします。
食品製造業・食品工場に関する動向調査の結果
将来の技能・技術継承についての不安
将来の技能・技術継承についての不安について「不安がある」と回答したのは全体の32.0%、「やや不安がある」が44.2%となった(図1)。
一方で、「あまり不安がない」が19.0%、「不安はない」の回答は全体の4.8%となった。従業員規模別では、特に大きな差はみられなかった。
図1 将来の技能・技術継承についての不安
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不安がある 32.0%
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やや不安がある 44.2%
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あまり不安がない 19.0%
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不安はない 4.8%
技能・技術継承の重要度
技能・技術継承の重要度について「重要」と回答したのは全体の51.6%、「やや重要」が36.5%となった(図2)。
一方で「あまり重要ではない」が10.3%、「重要ではない」の回答は全体の1.6%となった。従業員規模別では従業員数が多くなるほど技能・技術継承の重要度が進んでいる傾向がみられた。
図2 技能・技術継承の重要度
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重要 51.6%
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やや重要 36.5%
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あまり重要ではない 10.3%
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重要ではない 1.6%
技能・技術継承に関する取り組み状況
技能・技術継承に関する取り組み状況について、「取り組んでいる」と回答したのは全体の71.7%となった(図3)。
このうち、「取り組みを行っており、うまくいっている」と回答したのは15.8%、「取り組みを行っているが、うまくいっていない」が55.9%、「取り組んでいない」が22.3%となった。
従業員規模別では100人未満では「取り組みを行っており、うまくいっている」の回答は10.8%という結果になった。一方、従業員規模1000人~では21.7%となり、取り組み状況に10.9%の差が開いた。
図3 技能・技術継承に関する取り組み状況
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取り組んでいる 71.7%
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取り組んでいない 22.3%
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わからない 5.9%
技能・技術継承に向けた具体的な取り組み
技能・技術継承に向けた具体的な取り組みについて、「標準化・マニュアル化の推進」の回答が最も多く91.5 %、次いで「機械化・自動化」が78.3 %、「熟練技術者の定年延長・再雇用」が71.1%となった。(図4)。
図4 技能・技術継承に向けた具体的な取り組み
[「取り組んでいる」との回答比率]
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OJT・メンター制度の充実 68.4%
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機械化・自動化の推進 78.3%
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標準化・マニュアル化の推進 91.5%
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写真・動画・音声データなどの記録 61.9%
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遠隔作業支援システムの活用 29.4%
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IoTやAI(人工知能)の活用 28.3%
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熟練技能者の定年延長・再雇用 71.1%
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技術・技能研修制度の充実 59.4%
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外部委託の活用 37.2%
OJT・メンター制度の充実
OJT・メンター制度の充実について、「取り組んでいる」と回答したのは全体の68.4%となった(図5)。c
このうち「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは27.4%、「取り組んだが、うまくいってない」が41.0%、「取り組んでいない」が18.2%となった。 従業員規模別では従業員数が多くなるほどOJT・メンター制度の充実が進んでいる傾向がみられた。
図5 OJT・メンター制度の充実
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取り組んでいる 68.4%
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取り組んでいない 18.2%
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わからない 13.5%
機械化・自動化の推進
機械化・自動化の推進について、「取り組んでいる」と回答したのは全体の78.3%となった(図6)。
このうち、「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは31.4%、「取り組んだが、うまくいってない」が46.9%、「取り組んでいない」が15.2%となった。 従業員規模別では従業員数が多くなるほど機械化・自動化の推進が進んでいる傾向がみられた。
図6 機械化・自動化の推進
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取り組んでいる 78.3%
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取り組んでいない 15.2%
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わからない 6.5%
標準化・マニュアル化の推進
標準化・マニュアル化の推進について、「取り組んでいる」と回答したのは全体の91.5%となった(図7)。
このうち、「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは44.2%、取り組んだが、うまくいってない」が47.3%、「取り組んでいない」が4.3%となった。 従業員規模別では従業員数が多くなるほど標準化・マニュアル化の推進が進んでいる傾向がみられた。
図7 標準化・マニュアル化の推進
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取り組んでいる 91.5%
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取り組んでいない 4.3%
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わからない 4.3%
写真・動画・音声データなどの記録
写真・動画・音声データなどの記録について、「取り組んでいる」と回答したのは全体の61.9%となった(図8)。
このうち、「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは27.1%、「取り組んだが、うまくいってない」が34.8%、「取り組んでいない」が30.0%となった。 従業員規模別では、100人未満で「取り組んでおり、うまくいっている」が全体と比べやや高くなっている。
図8 写真・動画・音声データなどの記録
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取り組んでいる 61.9%
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取り組んでいない 30.0%
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わからない 8.1%
遠隔作業支援システムの活用
遠隔作業支援システムの活用について、「取り組んでいる」と回答したのは全体の29.4%となった(図9)。
このうち、「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは9.0%、「取り組んだが、うまくいってない」が20.4%、「取り組んでいない」が61.0%となった。 従業員規模別では、1000人~で「取り組んだが、うまくいってない」が全体と比べやや高くなっている。
図9 遠隔作業支援システムの活用
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取り組んでいる 29.4%
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取り組んでいない 61.0%
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わからない 9.6%
IoTやAI(人工知能)の活用
IoTやAI(人工知能)の活用について、「取り組んでいる」と回答したのは全体の28.3%となった(図10)。
このうち、「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは9.9%、「取り組んだが、うまくいってない」が18.4%、「取り組んでいない」が62.8%となった。
従業員規模別の集計では「取り組んでおり、うまくいっている」が最も多かったのは300人~499人の回答で13.7%、最も少なかったのは100人未満で回答は6.1%となった。
図10 IoTやAI(人工知能)の活用
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取り組んでいる 28.3%
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取り組んでいない 62.8%
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わからない 9.0%
熟練技能者の定年延長・再雇用
熟練技能者の定年延長・再雇用について、「取り組んでいる」と回答したのは全体の71.1%となった(図11)。
このうち、「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは39.2%、「取り組んだが、うまくいってない」が31.8%、「取り組んでいない」が21.1%となった。
従業員規模別の集計では「取り組んでおり、うまくいっている」が最も多かったのは1000人~の回答で42.7%、最も少なかったのは100人未満で回答は21.2%となった。
図11 熟練技能者の定年延長・再雇用
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取り組んでいる 71.1%
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取り組んでいない 21.1%
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わからない 7.8%
技術・技能研修制度の充実
技術・技能研修制度の充実について、「取り組んでいる」と回答したのは全体の59.4%となった(図12)。
このうち「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは24.0%、「取り組んだが、うまくいってない」が35.4%、「取り組んでいない」が30.3%となった。 従業員規模別では従業員数が多くなるほど技術・技能研修制度の充実が進んでいる傾向がみられた。
図12 技術・技能研修制度の充実
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取り組んでいる 59.4%
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取り組んでいない 30.3%
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わからない 10.3%
外部委託の活用
外部委託の活用について、「取り組んでいる」と回答したのは全体の37.2%となった(図13)。
このうち「取り組んでおり、うまくいっている」と回答したのは全体の13.7%、「取り組んだが、うまくいってない」が23.5%、「取り組んでいない」が50.7%となった。 従業員規模別では、特に大きな差はみられなかった。
図13 外部委託の活用
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取り組んでいる 37.2%
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取り組んでいない 50.7%
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わからない 12.1%
技能・技術継承する上での阻害要因
技能・技術継承する上での阻害要因について、もっとも回答が多かったのは「被継承者となる人材の確保ができない」で52.7%,次いで「技能・技術保有者が教育実施に時間をさけない」で44.4%、「技能・技術を上手く言語化できない」で35.0%の順に続く結果になった(図14)。
従業員規模別では100人未満では「被継承者となる人材の確保ができない」の回答は66.7%という結果になった。一方、従業員規模1000人~では46.5%となり、回答に20.2%の差が開いた。
図14 技能・技術継承する上での阻害要因
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技能・技術保有者が教育実施に時間をさけない 44.4%
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技能・技術を上手く言語化できない 35.0%
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技能・技術継承するためのノウハウがない 25.8%
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IT/IoTなどの支援環境の整備ができていない 23.5%
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被継承者となる人材の確保ができない 52.7%
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継承すべき技能・技術が明確ではない 26.9%
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技能・技術継承に関する予算不足 23.3%
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技能・技術を必要とする仕事量の減少 15.5%
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その他 2.0%
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特にない 6.7%
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わからない 1.3%
技能・技術継承に関する問題・課題について(FA)
技能・技術継承に関する問題・課題についてのFA(フリーアンサー)では、「若手の後継者不足 」「人材不足」「技術継承するための時間の確保」に関連する回答が多くみられた(以下FA回答の抜粋)。
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引き継ぐ方と引き継がれる方も共に実務に追われ、組織的に技術継承が行えていない。
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専門的な知識や技術が多く、すべて継承出来ていない。また原料が農産物である為、収穫年度により違いが出てくる為、職人の勘に頼る部分もある。
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マンパワーも大事だが、AIの活用もこれから必要になる。うまく共存していくのが大事。
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機械のプラモデル化が進み、いざ必要な技能が無いために故障修理に膨大な時間を要する。
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機械の取り扱いは感覚的なものが多く文字やマニュアルだけだと伝えきれない部分が多い
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人が変わるタイミングで機械化自動化を進めたいが、継続性を確保するためにバリデーションを取らないといけない。そのために新旧両方の技術に精通した人材が必要。
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動画で残して、技能継承に役立てたり出来ていない。ITをもっと活用して、全社で共有化、技術・技能のデータベース化を図ればいいと思うが出来ていない。
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マニュアルで文書化が困難な技能が多く、若手に直接継承するが、離職者が出て技能が途絶えてしまうことが多くある。
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その日その日で主原料の水分量、室温等が違う為、感覚で覚えていく必要がある。記録を日々取り、積み重ねてデータ化はしているが、形になるのに数年を要する。
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マニュアル化が難しく、作業の標準化が進まない。
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継承すべき技能・技術をFA化しAIを交えてきた為、人的な継承技能が減ってきているが、肝になるほどに人から人の伝承がい。
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会社の方針でノウハウを変更、付加することが多々ある。その都度、手順書等の変更を行い継承をするが、なかなかついて行けていない。
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人員不足で、教育・多能工が進められない。
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新しい知識や技術は自学で学べという風潮があり、得たものを共有する仕組みもないため広がりがない。
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要員不足のため。教育に時間が割けない。
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ひとそれぞれやり方が違うのでうまく継承していけない。若手の声が反映されにくい。
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現在ロボット化など計画中。その他動画やタブレットによるマニュアル化。それより、人が入ってこない。
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継承のために雇う人を増やしているが辞めていく人が多く、さらに期待して雇っても継承できないでいる。
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定年退職が一斉に時期に来ており、引き継ぐ人材が確保し切れていない。
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本社管理部門でシニアスタッフの知見をどうナレッジマネジメントしていくかが、目の前の課題の一つである。
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中間クラスの人材が少ない。人員削減でなかなか継承出来ない。
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機械の組み立てや作業において動画で残そうとしているが、うまく編集ができない。
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技術、知識を伝承したくても、年齢差が大きくジェネレーヨンギャップがあり、うまく伝わらない。
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人材の確保が困難な上に転職が一般化し、育成した若手が離職してしまう。
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技術やノウハウを伝えたいと思う人間が、どんどん転職をしてしまい継承が難しい。
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人件費削減によって、ジョブローテーションが上手く回せない。
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研修期間が短く、作業はできるがトラブルが対応出来ない、作業内容をよく理解できていない。
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工場内の高齢化が進み若い人が入って来ない技術のいらない部門もあるが、必要なところでの教育マニュアルがほとんどない。
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業務が標準化されていない、仕事が属人化している、人員不足から引き継ぎが上手くいかないなどの問題がある
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若い世代のジョブローテーションが出来ていない。
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