物流倉庫の基礎知識
物流データのABC分析

ABC分析

ABC分析とはもともと経営学の分析手法で、重要顧客管理のために使われる分析手法です。ABC分析はパレートの法則、20:80の法則、重点分析など呼ばれることがあります。基本的な考え方としては「全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出している」というもので、パレートの法則では「売上の8割は全顧客の2割が生み出している」などと説明されます。

言い換えると、売り上げを伸ばすためには顧客全員を対象としたサービスを提供するよりも、この2割の顧客に対して重点的にサービスを行ったほうが効率がよいという考え方になります。

WES(倉庫実行管理システム)はWMSでは管理しきれない物流現場のデータをリアルタイムに把握することができます。マテハン機器やIoT機器の制御を可能にし、作業と設備の稼働を一括管理を可能にします。

ABC分析の場合も基本的な考え方と同じで、前述の例では顧客対売り上げ構成比を8:1:1に分け、それぞれA・B・Cの3つのクラスに分類し、このクラス毎に適切なサービスを実施するという考え方になります。構成比の割合は固定ではなく、用途により変更して使われたり、またABC以外に「売上がない商品」をZとクラス分けしたりすることもありますが基本的な考え方は同じです。

物流業務の場合は「ABC分析によるロケーションの最適化」や「ABC分析による在庫管理の最適化」などに利用されます。このような分析を行い、入出荷検品システムやデジタルピッキング/デジタルアソートシステムなどを効果的に活用することで物流現場の省力化・生産性向上が可能になります。

例:ロケーションの最適化

ピッキングの効率化を検討するためにABC分析を行った。結果、Cランクの商品が出荷通路側に多く配置され、Aランクの商品が倉庫内に分散して配置されていることが分かった。この結果を元に、Aランクの商品が出荷通路側にくるよう保管スペースを見直し、Cランクの商品を倉庫の奥側に配置し、ピッキングの導線を最適化をおこなった。

この考え方はさまざまな事象で応用することができます。

バーコードやRFIDを活用したロケーション管理・棚卸・在庫管理が可能。在庫状況を正確・リアルタイムに把握することが可能になります。シンプルなシステム構成のため、保管倉庫単位で導入できます。

定期的なABC分析とITの活用

ABC分析は一度行えばよいというものではありません。はじめは効率的なロケーション管理をしていたつもりが、環境の変化によりいつの間にか非効率な配置になっている可能性もあるからです。このため、商品の配置や設備が適切かどうかなどの見直しをおこなうためにも、定期的な物流データ分析が必要になります。

ABC分析はExcel等でも可能です。また継続した業務改善を検討する場合は、物流倉庫の最適化を倉庫実行システム(WES)を導入することで簡単にABC分析が可能になります。

ABC分析のポイントは既にある物流倉庫のデータを活用し、合理的に業務改善・効率化を進めることができることにあります。

物流ABC(Activity-Based Costing)について

この他、ABC分析に名前が似ている分析方法に物流ABC(Activity-Based Costing)があります。これは原価計算のための手法であり、ABC分析とは用途が異なる分析方法です。物流ABCについては経産省中小企業庁の「物流ABC準拠による物流コスト算定・効率化マニュアル」等で詳しく説明されています。

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