物流倉庫の基礎知識
物流倉庫のデジタル化・IoT

ITの高度化が進んでいます。さまざまな製品・パッケージやサービスが提供されるようになり、AI・IoT・クラウドサービスといった新しいテクノロジーも徐々に普及し始めています。

さらに近年ではITを活用した企業の働き方改革への取り組みが活発です。総務省「ICT利活用と社会的課題解決に関する調査研究」の調査結果では「人手の確保」が47.9%、「労働生産性の向上」が43.8%の回答比率が高く、多くの企業が働き方改革を通じ、必要な人手の確保を考えつつ、さらに業務の効率化で労働力の不足を補おうとしている様子が伺えます。

物流センター・物流倉庫においても働き方改革は重要なテーマです。ITを活用することで「物流コストの低減」「効率化」「生産性の向上」「人手不足への対応」などの課題に対応できる可能性があります。

このページでは、物流センター・物流倉庫向けのITシステム・IoTについて説明します。

物流業務向けITシステム・IoT

ピッキングシステム(デジタルピッキングシステム)

ピッキング作業を補助するシステムです。ピッキングには大きく「種まき式(DAS)」「摘み取り式(DPS)」の2種類のやり方があります。一般的にデジタル表示機、スマートフォンやタブレットなどを活用して、出荷ミスや仕分け間違いを減らす仕組みとして利用されています。

[デジタル表示機の活用]
商品が保管されている棚にデジタル表示器を取り付け、作業者は表示器の指示に従って商品を取りに行くという仕組みを構築できます(デジタルピッキングシステム)。リストピッキングと比較すると、リストピッキングは文字を読まなくてはならず、また、紙のリストを持つ必要があるのに対し、 表示器を使ったデジタルピッキングシステムは文字を読む必要がなく、紙のリストを持つ必要がありません。作業が単純化できるため、初心者の作業者でも表示器の指示に従って正確にピッキングができるようになります。種まき式の場合は、デジタルアソートシステム(DAS)と呼ばれています。

[スマートデバイスの活用]
スマートデバイス(スマートフォンなど)で倉庫作業を行います。主に食品製造業などで利用されています。普段スマートフォンを使っている場合はハンディターミナルより使い勝手がよいというメリットがあります。バーコードの読み取りや文字の入力等が可能なため、 仕分け、入荷検品、賞味期限の確認・登録や棚卸など多業務に利用することができます。

[タブレットの活用]
主に台車(ピッキングカート)等と組わせて活用されます(タブレットピッキングシステム)。デジタル表示機を活用する場合は棚やカゴ台車毎に取り付ける必要がありますが、タブレットの場合は倉庫の棚情報をタブレット上にピッキングすべき部品や商品を表示することができるのが特長です。 製造業や組み立て加工を伴う業種で利用されます。

輸配送管理システム(TMS:Transport Management System)

物流センター・物流倉庫から出荷された後の輸配送を管理するためのシステムです。一般的に実装されている主な機能として「配車管理」「貨物管理」「運行管理」などの支援機能を有しています。人員計画の最適化や積載量の向上などコスト削減効果、トラックの位置情報のリアルタイム取得による運行の最適化などが期待できます。

トレーサビリティシステム

商品の生産・物流の履歴(入庫・保管・出庫など)を追跡することができるようにするためのシステムです。食の安心・安全を守るための仕組みの一つで、バーコードやICタグが利用されることがほとんどです。商品の品質管理の効率化に貢献し消費や向けには商品の安全性(付加価値情報)をアピールすることができます。

倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)

複数の物流センターを統合てきに管理することができ、とくに高度な在庫管理・入出荷管理機能を有したシステムです。3PLなど複数顧客・複数チャネルの在庫を管理する場合に適しています。マテハン機器との連携やロケーション管理などにも対応でき物流倉庫全体の業務を管理することができます。一般にPLC等を活用した機械・機器のリアルタイム制御する機能は持っていないため、目的に応じてWCSやWESとの連携が必要になります。

倉庫制御システム(WCS:Warehouse Control System)

マテハン機器を制御に特化したシステムです。コンベアやソーターなど各種マテハン機器やIoT機器をリアルタイムに統合制御することができ、倉庫の自動化・効率化に役立ちます。マテハン機器がおおく導入されている物流センター・物流倉庫に適しています。一般に在庫管理や労務管理などの機能には乏しく、目的に応じて他システムとの連携が必要があります。

倉庫実行システム(WES:Warehouse Execution System)

倉庫実行システム(WES)とは、倉庫管理システム(WMS)と倉庫制御システム(WCS)の中間に位置するシステムです。マテハン機器やIoT機器のリアルタイム制御に対応でき、また在庫管理、入出荷検品、仕分け・ピッキングなど物流現場のデータをタイムリーに実績管理・分析できるようになります。一般に高度な在庫管理を行う場合は、目的に応じて他システムと連携が必要になります。

在庫管理システム

仕掛品・部品・資材などを適正に管理するためシステムです。在庫切れや欠品を防止したり、過剰在庫にならないようにすることで、企業の利益の最大化に寄与します。倉庫管理システムは倉庫全体の作業を管理対象としますが、在庫管理システムは在庫データの管理に特化しているという特長がありす。

ロケーション管理システム

倉庫内における在庫(仕掛品・部品・資材など)の配置場所・保管場所を管理するためのシステムです。ロケーション管理の種類には「固定ロケーション」「フリーロケーション」「ダブルトランザクション」などがあります。「倉庫のどこに保管してあるか」がハンディターミナルやスマートデバイスを利用して確認することができ、入出庫作業の標準化・効率化を可能にします。

この他代表的なITシステム・IoTには「受発注システム(EDI)」「AI画像認識システム」「需要予測システム」「物流コスト管理システム」などがあります。

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