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会長CEOメッセージ 富士電機レポート/統合報告書

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経営理念・経営方針の追求により
持続的な企業価値向上と
サステナブルな社会の実現への
貢献を目指します。


代表取締役会長CEO

北澤 通宏

社会における富士電機の存在意義

富士電機は1923年(大正12年)の創業以来、エネルギー・環境技術を徹底的に磨いて進化させ、パワー半導体、パワーエレクトロニクスを中心としたコア技術を強みとして、産業・社会インフラ分野でクリーンなエネルギーの創出、エネルギーの安定供給、省エネ、自動化に貢献する製品をお客様に提供し続けてきました。
その根底にあるのは、地球社会の良き企業市民として、地域、お客様、パートナーを大切にして信頼関係を深め、豊かさへの貢献、創造への挑戦、自然との調和を使命とする経営理念にあります。その経営理念を具現化する経営方針として、エネルギー・環境事業で社会に貢献することを掲げています。
 現代社会の大きな課題である脱炭素化の実現に向け、当社のビジネスチャンスは広がっています。お客様の要望に応える製品を創出し、それを組み合わせたエンジニアリング・サービスを付加し、システムソリューションで提供することで、お客様の価値創造に貢献し、当社の企業価値向上を図ってまいります。これを成し遂げるには、多様な人材によるチームでの総合力の発揮が欠かせません。グローバルな事業拡大により企業の成長を図り、サステナブルな社会の実現に貢献し続けます。

中期経営計画「熱く、高く、そして優しく2026」への想い

2026年度を最終年度とする3カ年の中期経営計画「熱く、高く、そして優しく2026」は、前中期経営計画で宿願の売上高1兆円、営業利益率8%超を達成したことで、改めて経営の原点に立ち返り、高い目標を掲げチームで挑戦するという思いを示しています。
2026年度中期経営計画の重要指標として売上高、営業利益(率)、ROEに純利益(率)とROICを加え、利益を伴った事業拡大を目指すこととしました。私は、不確実性が高まる中で、環境に係る投資は一本調子で伸長するとは考えておりません。数値目標の達成はもちろん重要ですが、この3年間で次なる成長に向けて、2030年以降も見据えた新たな中核となりえる事業の礎を築いていくことが最も重要と考えています。ROICは、当社の加重平均資本コスト(WACC)を上回る10%以上堅持を当面の目標としています。2021年度から事業別ROICを社内管理指標に導入し、売掛金回収や棚卸資産を可視化し資本コストを意識した事業運営を根付かせてきました。資本コストを意識した経営を行い、創出したキャッシュを成長投資に振り向け、強固な事業ポートフォリオによる利益拡大と更なる企業価値向上に取り組みます。そのためにも、人財の育成・確保は不可欠と考えています。多様な人財が活躍する仕組みや処遇制度を再構築し、社員が高い目標にチャレンジする、より一層の活力あるチームづくりにつなげていきます。

2024年度は、売上高、営業利益、当期純利益は過去最高を更新。営業利益率10%超を達成

2026年度中期経営計画の初年度から、当社を取り巻く環境は大きく変化しました。これまで急拡大してきた電動車市場は欧米顧客の需要が急激に減少し、FA・工作機械関連は新型コロナウイルス感染症収束以降に需給バランスが崩れ、過剰発注に伴う在庫調整の長期化により停滞しました。一方、脱炭素化、デジタル化に向けた製造業やデータセンター投資は堅調に推移しました。
こうした環境の下、2024年度は、売上高、営業利益、経常利益ともに過去最高を更新し、営業利益率も初めて10%を超えました。収益が拡大した背景には、エネルギー部門は、施設・電源分野のデータセンター向けで、重要顧客から継続して受注を獲得し生産性を高めたものつくりができていること、また設備の大容量化に対応した新製品の開発や電源試験設備を導入したことなどがあげられます。インダストリー部門は、オートメーション分野において、既存顧客のアフターサービスで信頼関係を構築してきたことで設備の更新需要が獲得できているほか、インドで地産地消の成果が出始めています。一方でFA分野はコンポーネントの需要回復遅れに対してうち手が遅れたという反省が残りました。半導体部門は、シリコン・カーバイド(SiC)生産ライン構築において、シリコン(Si)の既存設備を有効活用した投資額の大幅抑制など、現場力を活かし利益の最大化に取り組みました。食品流通部門は、超省エネ対応など高付加価値商材の開発や、自動釣銭機の改刷特需に対応して、新しい識別技術を開発するなど、需要を刈り取ることができました。当期純利益は、政策保有株式の圧縮に向け一部を売却し特別利益に計上しましたが、その影響を除いても過去最高を更新し、2024年度はROE 14.3%、ROIC12.9%と資本効率の向上を実現しました。目標達成に挑んだ社員一人ひとりの頑張りとチームの総合力を結集した成果であり、社員には直接的には賞与という形で報いました。
こうした利益体質の強化を基にして、安定的かつ継続的とする配当に係る基本方針を踏まえ、配当につきましては、前年度に対して約19%増となる1株当たり25円増配の160円としました。

2025年度は事業間の連携強化・シナジー創出で成長戦略を推し進め、半導体は逆張り投資を実行

脱炭素社会の実現に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)投資や生成AI・デジタル技術の活用拡大に伴うエネルギー需要が増大する中で、更なる企業価値向上を目指し、事業間の連携強化、シナジー創出による成長戦略を推し進めます。
2025年度にセグメント再編を実施しました。
エネルギー部門は、現場力の向上とプラント・システムの強化に向けて、昨年度に完全子会社化した設備工事を担う富士電機E&Cとの一体運営によるシナジー効果を追求します。インダストリー部門は、FAコンポーネント事業の製販一体運営により経営のスピードアップを図り、お客様のニーズを的確に捉えた製品の提供や、需要動向を踏まえたものつくりと在庫の最適化を進めます。
一方、半導体部門では、電動車市場は足元で踊り場にありますが、中長期的な視点では車の電動化需要は拡大すると考えています。お客様と連携を密にし、需要の変化に対応するタイミングを見誤ることなく、厳しい時こそ逆張り投資を実行し、2027年度以降に向け準備を進めます。

攻めのGX戦略で環境貢献

世界では、限りある資源を有効活用する循環経済を重要課題と捉え、サプライチェーン全体で脱炭素化とサーキュラーエコノミーへの移行に向けた取り組みが始まっています。
2025年4月、執行役員レベルで事業戦略の重要課題を企画・推進する委員会として「SDGs推進委員会」を「サステナビリティ委員会」に改組しました。これまでのサプライチェーン全体を通じた環境に係る取り組みについて、CO₂削減をはじめとする脱炭素化に加えて、製品による環境貢献を目指す、攻めのグリーントランスフォーメーション(GX)製品戦略チームを新たに立ち上げました。
当社にとって大切なことは、CO2削減や欧州から進むエコデザイン規則などさまざまな法規制に対して、お客様、お取引先様との相互理解のもとでグリーンサプライチェーンを構築し、攻めの経営としてビジネスにつなげることです。GX戦略の策定とともに、新製品開発や新事業の創出に資源を注ぎます。
さらに、生物多様性の観点から自然関連財務情報開示タスクホース(TNFD)を活用した自然資本に対するリスク・機会の検討に着手、気候変動対策と一体化して取り組んでいきます。なお、この委員会の内容は、取締役会に報告し、多様な視点から議論を行っています。取締役会の議論では、こうした変化に対するお客様のニーズを掴むこと、またビジネスにつながる可能性があるか意識するようにとご意見をいただいています。

社員の幸せを追求する従業員ファーストの経営

人財は企業価値向上の源泉です。私は、会社の成長には「従業員ファースト」という経営者の揺るぎない姿勢が欠かせないと考えています。
一方、当社の労務構成や労働力不足などを踏まえると次の成長に向けた課題は、限られた人財リソースの有効活用になります。年齢や経験年数に関わらず、役割に応じた納得度の高い処遇制度を再構築し、更なる生産性向上と業務品質向上を図る仕組み・仕掛けを展開していきます。また、事業環境が変化し、社会や個人の価値観の多様化が進む中で、多様な人財による柔軟で強い組織を構築していくためには、女性社員やシニア社員の活躍拡大などのダイバーシティ推進とともに、ライフスタイルやライフステージに応じた多様な働き方やキャリアパス、キャリア形成支援を強化していく必要があります。こうした改革を通じて、社員の幸せ(ウェルビーイング)と会社の持続的成長の好循環を持続させたいと考えています。
海外事業拡大に向けた人財施策の強化については、取締役会で社外取締役からも課題が提起されており、グローバル人財の育成を再活性化させるとともに、現地オペレーションの自立化に向けた経営人財育成に着手しています。
将来の執行役員になりえる人財については、計画的に育成し、現在50名程をストックしています。これから経営や事業の責任を担う幹部社員には、富士電機をよく理解し、複数の職種や事業部門、あるいは海外拠点など業務を重ね、可能な限り関係会社経営や重要ミッションを経験させたいと考えています。毎年開催される次世代経営人財の研修では、10年後を見据え、事業と事業をつなぐ付加価値の創出、新しい事業の芽、どんな人財が必要になるか、外から見た富士電機はどう見えるのかなど、さまざまな課題を通じて富士電機を見つめ直す機会を設けています。経営の視点、高い視座での能力を獲得するとともに、なんでも相談できる得難い仲間を作り、高みを目指すチームになってほしいと思っています。

長期的な企業価値向上に資するガバナンスの実効性向上

経営にとって、長期的な企業価値向上を図るために重要なことは、ガバナンスの透明性と実効性向上です。昨年、富士電機E&Cを完全子会社化した際には、取締役会では、プラント・システムの更なる事業拡大に資するシナジー創出、人的リソースの活用、親子上場問題と利益相反リスクの解消によるコーポレート・ガバナンスの向上など、意思決定を行う上で忌憚のない議論を深めました。予測困難な社会環境下での企業成長には、社外取締役、社外監査役の多様な経験に基づく見識がより一層重要になると考えています。形式にこだわらず、現場を含めた率直な議論を行う機会を増やし、更に強い経営体質を築いていきます。
また、さまざまなリスクへの不断の備え、レジリエンス向上が重要です。特に、海外子会社を含めたグループ全体でのマネジメント強化や、気候変動による自然災害に対して事業継続計画の策定などBCP視点でのサプライチェーン対策強化、サイバー攻撃を含む情報セキュリティ対策に注力しています。
2024年度から常勤取締役、執行役員の報酬について、株式価値との連動性をより明確にした業績連動型株式報酬制度を開始しました。株式価値に対する意識をより高める経営を行っていきます。
株主の皆様への配当額は、2010年度以降、増配基調を継続しています。中長期的な視点に立った研究開発、設備投資、人財育成を継続し、会社の成長と財務健全性の両立を維持しながら、株主の皆様への配当性向は30%を目安として、安定的・継続的に還元いたします。今後も前年度を上回る水準での配当の実現を目指して、経営にあたる所存です。

富士電機のDNA

経営スローガン「熱く、高く、そして優しく」は社員に大切に引き継いでもらいたい当社のDNAです。「熱く」は、新しい技術・製品を開発し、世の中に貢献するという熱い気持ち。「高く」は、高い目標を持ち、チームで共有する。「優しく」は、これこそが諸先輩方が築き上げてきた富士電機のDNAであり、お客様、仲間、家族に対する優しさや感謝の気持ち。これがあって初めてチームは強くなります。高い志・目標を持ち続けるには、リーダー自身がその姿勢を保ち続け、大きな目標を常にチームで共有することが必要です。エネルギー・環境事業を、お客様やお取引先様とともに進化させ、社会・環境課題の解決やお客様価値の創造に貢献し、持続的に企業価値向上を図ってまいります。
株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆様におかれましては、今後も一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。