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財務・資本戦略 富士電機レポート/統合報告書

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当期純利益の拡大と
資本コストを意識した事業運営により
企業価値の持続的向上を実現します


取締役 執行役員専務
経営企画本部長

三吉 義忠

 2024年5月に発表した2026年度中期経営計画では、「利益重視経営」を基本方針に掲げ、2026年度は営業利益率11%以上、純利益率7%以上、ROE12%以上、ROIC10%以上を重要経営指標としました。全事業でROIC管理を強化し、キャッシュマネジメントの徹底および営業キャッシュフローの最大化と資産健全性の向上を推進します。
 財務規律としては、事業の継続や投資機会への対応力に必要な格付けA※以上を維持するために自己資本比率50%程度とネットD/Eレシオ0.2倍程度を基準としています。
 創出したキャッシュの約9割を成長分野であるエネルギー、インダストリー、半導体への投資に充当し、財務レバレッジをコントロールしながら、安定した財務基盤の維持と成長投資の両立を図ります。
 株主・投資家の皆様と適時・適切なコミュニケーションを図りながら、資本コストを意識した事業運営を推進していくことで持続的な企業価値の向上を実現します。

資本効率を意識した事業運営

事業別ROIC管理を徹底し、収益体質を強化

 当社は2026年度中期経営計画の策定時にWACCを8%程度と試算していますが、金利のある世界への移行に伴い1%程度は引き上がっていると認識しており、各セグメントで資本効率を意識した事業運営を推進しています。事業別ROICを管理指標として、事業別に売上債権や棚卸資産の適正化を図るとともに、先々の収益性を意識した投資判断、当期純利益に基づく事業運営による収益体質の強化を図っています。
 当社の事業を取り巻く環境は、成長が期待される半導体の市況は調整局面が続き、成長投資のタイミングの判断など、難しいかじ取りを求められる状況が続いています。一方で、脱炭素化・デジタル化に伴う事業機会は広がりを見せています。
 2024年度は、FA・工作機械などマーケットの需要が戻らなかったコンポーネントの物量・生産減や固定費の増加、原材料価格の高騰などがあったものの、高付加価値商材の提供による製品販売価格の値上げや生産性の向上などにより全セグメントで増益、営業利益率は10.5%となりました。営業利益の改善に加え、政策保有株式の売却益により当期純利益率は8.2%、ROE14.3%、ROIC12.9%、自己資本比率は50%を超え、当初計画より財務レバレッジが低下しています。

主要財務指標推移

2025年度は、エネルギー、インダストリーに積極投資。半導体は将来に向けた投資を実行

 2025年度は、成長分野であるエネルギー、インダストリー、半導体の各部門に資本を投下して利益創出を図り、全社で当社のWACCを上回るROIC10.7%以上を目指します。
 半導体は物量の拡大が見込めず、利益が減少する中でも先を見据えた投資を実行し、中期的なROICの改善につなげていきます。旧型のSiチップ生産設備を活用し、SiCチップ生産設備への置き換えを進めます(半導体P34)。量産設備の本格稼働や8インチ化に向けた開発投資を進め、2027年度以降に投資効果の刈り取りを計画しています。
 プラント・システムビジネスでは売上債権の早期回収、長期滞留資産の適正化に取り組み、キャッシュ・コンバージョン・サイクルを改善します。エネルギー部門では、電力需要の増大やデータセンターの新増設に伴い受注が積み上がってきており、変電システムおよび施設・電源システムの再編・増産投資を決定しました(エネルギーP30)。堅調に受注が拡大する中で増強投資を行い、2026年度以降の一層の売上・利益の拡大を図ります。
 インダストリー部門では、市況変化の影響を受けやすいコンポーネントの事業を製販一体の体制に再編し、お客様や生産に係る情報を集約し、可視化、共有化により経営のスピードアップを図ります(インダストリーP32)。生産計画の最適化や棚卸資産の圧縮を図り、更なるROICの改善を目指します。
 なお、ものつくりでは全社横ぐしでデジタル技術の活用を推進し、PLMとSCMの情報連携を柱とした生産性・品質の向上、原価低減を図ります(ものつくり・調達P42)。

企業価値の最大化に向けたキャッシュフローアロケーション

 2024年度は営業活動によって得たキャッシュをエネルギー、インダストリー、半導体を中心として設備投資に915億円、研究開発に378億円、業務変革に向けた情報投資や新製品・新事業の創出に向けたスタートアップへの出資などに112億円投じました。
 2025年度も設備投資は状況に応じてアクセルとブレーキをコントロールする一方、競争力、優位性の強化に向けた研究開発投資や情報投資は中期経営計画をベースに推進します。
 将来の事業ポートフォリオを念頭に置き、事業、技術のシナジーを最大化する企業との資本提携や海外事業の拡大に向けたM&Aなど、財務レバレッジも活用しながら成長投資をタイムリーに具体化していきたいと考えています。

キャッシュフローアロケーション

安定・継続を基本として増配

 株主の皆様への還元は、中長期的な事業サイクルを勘案し、安定的かつ継続的に実施することとし、配当金額は当期の連結業績、今後の成長に向けた設備投資・研究開発計画、経営環境などを総合的に勘案し決定することとしています。
 2026年度中期経営計画では、成長戦略の推進による持続的な収益性向上と利益の最大化を図り、株主様への還元は配当性向30%を目安としました。
 2024年度の剰余金の配当は、1株あたり年間160円とし、前年度から25円増配しました。2010年度より減配することなく増配基調を継続しています。

配当推移