株主・投資家情報
富士電機レポート2026/統合報告書/社長COOインタビュー
パワエレとパワー半導体の
シナジーを徹底的に追求し、
「成長と還元の好循環」を
実現していきます。
Q2025年度の業績をどのように受け止めていますか。
当社を取り巻く市場環境は、米国の通商政策による影響や地政学リスクの顕在化などにより、世界経済の見通しに対する不透明感が継続した一年でした。また、投資資金の流入やグローバルな需給の逼迫などに起因して、銀や銅をはじめとする原材料価格が高騰するなど、楽観視できる状況ではありませんでした。一方、脱炭素社会の実現に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)投資の加速や、生成AIをはじめとするデジタル技術の活用拡大に伴うエネルギー需要の増大を背景として、電力インフラ、製造業およびデータセンター(DC)などにおける設備投資は極めて堅調に推移しました。
このような環境のもと、当社はエネルギー需要の増大に的確に対応し、再生可能エネルギーや電力の安定的かつ効率的な供給、さらには需要家サイドにおける省エネ・自動化・電化を実現するプラント・システム事業の拡大に注力しました。また、地政学的な問題など外部環境の変化によるサプライチェーンの寸断リスクへの対応、収益力の更なる強化に向けた、開発購買による部材の標準化・共通化やマルチソース化、デジタル技術を活用した生産現場の徹底的な生産性向上と在庫の適正化を推し進めました。加えて、資本効率向上に向けた政策保有株式の縮減など、経営基盤を強固にするための施策を着実に実行しました。
その結果、原材料価格の高騰や、半導体の電装分野における需要減、食品流通における前期の改刷特需の反動減などの影響があったものの、エネルギーおよびインダストリーを中心としたプラント・システム事業の需要増加などが利益を押し上げ、連結業績は、売上高、営業利益、当期純利益のいずれも過去最高を更新しました。営業利益率も11%超と2026年度中期経営計画で掲げた2026年度目標を1年前倒して達成することができました。この成果は、激変する環境の中で、社員全員が日々の業務において地道に付加価値を積み上げ、チーム力を発揮してくれた努力の賜物であると評価しています。
Q2026年度の基本方針と経営目標をお聞かせください。
デジタル技術の社会実装の進展により電力需要は増大し、電動車の需要は地域ごとに強弱があり変化が表れているものの、地球規模の課題である脱炭素化に向けたGXへの投資は拡大し続けています。
このような市場環境のもと、当社は、変化する時代に適応して、持続的な企業価値向上と社会貢献を目指すことを基本方針に掲げ、利益重視の経営を徹底して収益力の向上を図ります。増大するエネルギー需要、GX投資、デジタル化ニーズを捉え、パワーエレクトロニクス(パワエレ)を中核として、4事業セグメント(エネルギー、インダストリー、半導体、食品流通)の相互連携をさらに強化し、お客様の価値を創出するソリューション提案によって差別化を図ります。強いコンポーネントを生み出し、それを適切に組み合わせ、先端のデジタル技術により高付加価値なプラント・システム事業を拡大します。エネルギーを中心とした旺盛な需要に確実に応えるため、国内外での生産能力増強投資と、デジタル技術を活用した生産性向上を一体で推し進めます。また、原材料価格の高騰影響に対しては、部材の標準化・共通化、調達のマルチソース化を図るとともに、中期的には設計仕様の変更を行うなど、サプライチェーンの強靭化を図り、影響を極小化していきます。
資本コストを意識した経営を経営層の掛け声で終わらせないため、現場に足を運び、社員と対話して浸透を図っています。例えば営業部門では売掛金の早期回収、ものつくり部門では棚卸資産の徹底的な適正化といった日々の業務改善について、現場レベルでの改善を進めています。また、事業ごとに資本効率や収益性の状況・変化を確認し、利益の拡大に向けた施策を当該部門と共有し実行しています。
2026年度の連結業績は、売上高、営業利益、当期純利益のいずれも過去最高の継続更新を目指します。創出したキャッシュは、社員の処遇改善、成長投資、株主様への還元に継続的に振り向け、「成長と還元の好循環」による持続的成長を確かなものにします。
成長投資は、設備投資を適切にコントロールしていく一方、脱炭素社会の実現や高度なデジタル社会を支える製品・システムの創出に向け、将来を見据えた研究開発投資や情報投資を積極的に推進します。
株主様への還元については、配当性向30%を基に、2026年度は配当金と合わせ総還元性向50%となる総額210億円の自社株買いを第1四半期に実行しました。
Q持続的な企業価値向上に貢献する富士電機の強みは何でしょうか。
当社の強みは、パワー半導体とパワエレというコアコンピタンスを基軸にして、競争力のあるコンポーネントを自社で開発、設計、製造し、お客様の課題に合わせてコンポーネントを組み合わせ、最適化したシステムとして、ワンストップでソリューション提供できることです。クリーンなエネルギーの創出、エネルギーの安定供給、省エネ・自動化・電化など、エネルギーの供給サイドから需要サイドまで、他社にはない優位性を活かし、お客様・社会の最先端ニーズに常に応え、幅広い業界で独自の価値を提供し続け、その時代の産業やインフラの発展を支えてきました。
当社の競争優位性の重要なファクターとなるのがパワー半導体とパワエレのシナジーです。当社製パワー半導体を搭載したパワーコンディショナ(PCS)はメガソーラー事業者や風力発電事業者をはじめとする再生可能エネルギー市場で広く採用され、無停電電源装置(UPS)はDCや半導体工場といった高度なIT・通信インフラの安定稼働と運用面の省エネに貢献しています。足元では新製品である「小型車載用RC-IGBT」「車載インバータ」の開発において、パッケージングの初期段階からパワー半導体とパワエレの技術者がしっかりと参画し、お互いの技術を最適化する工夫を凝らし小型化・高効率化など高い競争優位性を実現しました。
さらに当社は、創業以来、国内外の社会・産業分野で数多くのお客様に対して豊富な納入実績があり、膨大な経験・ノウハウが蓄積されています。この長年培ってきた経験と技術に、AI・デジタル技術を融合することで、エネルギー需給バランスの最適化に貢献するエネルギーマネジメントシステムなど、リアルの世界でのお客様の更なる価値創出につなげています。お客様の生の声を通じて、お客様が直面している課題をいち早く捉え、技術・経験そしてチーム力を掛け合わせて、新たな価値創出と社会課題解決に挑んでいます。
Q更なる事業拡大に向け、重要テーマは何でしょうか。
2027年度を起点とする次期中期経営計画の策定においては、成長戦略を基軸にして、成長投資、人財戦略、財務戦略、そして株主還元施策などについてもう一歩踏み込んで検討し、ROEは15%を目指す企業体にしたいと考えています。当社の次なる成長に向けて、3つの重要テーマを掲げています。
一つ目は、当社の事業・技術を最適に組み合わせたソリューションによって「新たな顧客価値を創出」することです。複雑化・高度化する社会課題を根本から解決するためには、事業・部門の壁をまたいだトータルソリューションの提供が不可欠です。その象徴的な例が、昨今投資が急拡大しているAIDC向けソリューションです。従来のDCは、UPSを中心としたエネルギーのお客様という位置付けでした。しかし、生成AIの普及によるサーバの高発熱化に伴い、冷却方式が空冷から水冷・液冷へと大きく変わろうとしています。この転換により、食品流通の自販機事業で培ってきた高度な冷熱技術や排熱利用の発想を活かした、インダストリーの新商材「エジェクタ冷却機」の優位性が一気に高まります。また、徹底した省エネに向けてDC内で直流配電が採用されるようになれば、次は半導体や器具事業が持つ高度な遮断技術が極めて重要になってきます。
二つ目は「海外事業の拡大」です。2026年度の海外売上高は3,639億円を計画していますが、次期中期経営計画では高い目標を掲げていきます。エネルギー需要の拡大を背景に、東南アジア、インド、北米市場を中心に、AI・インフラ関係の設備投資が伸長していくことが見込まれ、当社は、電源機器や変電機器の生産能力を増強し、事業拡大させていきます。地設・地産・地消を徹底して経営の現地化を推進するとともに、国内拠点が持つ技術やノウハウなどのリソースを活用して海外現地を支援する体制を構築・強化していきます。
三つ目は「新領域の事業化」です。2027年度以降の本格的な市場拡大を見据え、2026年度はエジェクタ冷却機や蒸気発生ヒートポンプなどを上市しますが、「熱の電化」のほか、その先には変換装置などの「直流配電」、水素製造用直流電源などの「燃料転換」などに積極的に挑戦しています。マーケットの動きを見極めながら、新領域にある開発テーマを着実に成長領域に取り込み事業化していくことが重要と考えています。
Qデジタル技術活用の浸透は。
2025年度から全社的な業務改善活動「Pro-7活動」の共通テーマに、「AI・デジタル技術の活用による業務品質・業務効率向上」を掲げました。私自身が毎年全国の工場を訪問し、現場の取り組みを直接確認し、対話を重ねる中で、生産性の向上にデジタル技術を積極的に活用するという意識が現場の隅々に定着したという確かな手応えを感じています。
成果は数字に表れており、2023年度比で、2025年度売上高が111%となる中でも従業員数は横ばいを維持、生産性は113%へと着実に向上しました。2026年度は、中期経営計画で掲げている「対2023年度生産性20%向上」を達成します。
2026年4月には全社共通の生成AIツールを本格的に導入したほか、統合基幹業務システム(ERP)については、経営リスク低減を図るため段階的に導入を進めています。ERP導入にあたっては、従来の業務遂行プロセスを見直し、事業データを統合し、即時性の高い可視化・分析を実現するとともに生産性向上を推し進めます。
また、デジタル化の進展とともに、セキュリティ脅威への対応は、社会・産業インフラを支える当社にとって重要課題です。2026年4月に、制御システムセキュリティ国際標準規格「IEC62443-4-1」の認証を東京工場や鈴鹿工場など5組織・拠点に加え、新たに筑波工場でも取得し、東京工場においては「セキュアな製品を作るためのプロセス」の継続的な運用が認められ、認証更新を取得しました。2026年度より、新たにセキュリティ委員会を設置し、情報・製品・工場セキュリティの3つの切り口から、多様なサイバー脅威への適切な対処を組織横断的に進めることにしました。お客様へお届けする製品・サービスの品質向上と安定供給の実現に向け、これらの取り組みを推進します。
Qステークホルダーの皆様へメッセージをお願いします。
本年7月、冷凍冷蔵設備の取引に関し、独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会による立入検査を受けました。公正取引委員会による調査に全面的に協力するとともに、私が委員長を務める富士電機遵法推進委員会においては、社内を再点検し、改めてコンプライアンスの徹底を図ってまいります。お取引先様をはじめ、関係者の皆様に多大なるご心配とご迷惑をおかけし深くお詫び申し上げます。
経営体質は強固になってきました。高い目標を掲げ、社員とその目標を共有し、一人ひとりが仕事にやりがいを感じて挑戦し、チームの総合力の下で達成感と自己の成長を実感できる環境づくりに取り組み、「成長と投資」「成長と還元」の好循環により、持続的な企業価値向上を実現してまいります。
