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富士電機レポート2026/統合報告書/事業を支える横ぐし戦略/研究開発・知的財産
研究開発・知的財産
「富士電機の成長戦略を牽引する新製品の創出と新技術の獲得に挑戦します。」
当社を取り巻く事業環境が不確実性を増す中にあっても、脱炭素社会への転換や循環経済への移行、デジタル技術の利用拡大に伴うエネルギー需要の増大といったトレンドは今後も続くと考えます。これらのトレンドに伴って生じるお客様の新たな課題を解決するため、コア技術を磨き、グリーントランスフォーメーション(GX)やデジタルトランスフォーメーション(DX)に貢献する新製品や、グローバル商材の開発を強化しています。さらに、将来の社会課題の変化を洞察し、新たなニーズに応える新製品の創出を目指して、パートナー企業やアカデミアとの協業・共創を通じて革新的な新技術の獲得に挑戦しています。
また、新製品・新技術の競争優位性を確保するための知的財産のポートフォリオ形成や、事業をグローバル展開する上で不可欠な国際標準化活動に取り組んでいます。
中長期的な研究開発の進捗
2026年度中期経営計画における研究開発戦略として、研究開発ポートフォリオに示す現行領域(①)と成長領域(②)の新製品開発を進めるとともに、2030年以降の成長に資する新領域(③)に係る研究開発に取り組んでいます。この研究開発戦略を実現するため、研究開発費は、2025年度、2026年度ともに前年度に対して増額し、当社の成長戦略を支える成長領域および新領域の研究開発へ重点的に投資していきます。
これまでの継続的な重点投資の成果として、2025年度の成長領域の新製品売上高(上市後5年以内)は2023年度の1.2倍に伸長しました。
研究開発費
(億円)
研究開発ポートフォリオと主な進捗
①現行領域 — 現行事業の維持・拡大に向け『次世代機開発、競争力強化、プラットフォーム開発拡充』。②成長領域 — 成長戦略を牽引する『GX、DX、グローバル新製品を2026年までに投入』。③新領域 — 2030年以降の市場拡大を見据えた『GX新技術獲得と新製品創出に挑戦』。
2025年度の主な開発の進捗
2025年度の開発の成果として、世界初や世界トップレベルの新製品を数多く発売するとともに、将来を見据えた新技術の獲得も大きく進展しました。
成長領域(②)では、クラス最高レベルの電力変換効率を達成したデータセンター向けの大容量UPSなどを発売し、さらに電力市場取引収益の倍増が見込める蓄電取引運用システムを開発しています。また、軽・小型車向けに薄型RC-IGBTモジュールの量産を開始し、このモジュールを使ったモータ駆動用インバータを開発しています。さらに業界トップクラスの低損失SiC-MOSFETを搭載した大容量車載用モジュールの開発を進めています。
新領域(③)では、工場設備の排温水を有効活用してエネルギーコストを大幅に削減する150℃蒸気発生ヒートポンプを開発しました。また、データセンターの水冷サーバの冷却費用を85%低減できる業界初のエジェクタ冷却機を2026年度に発売します。これらの熱商材を起点として、当社にとっての新たな市場に参入していきます。
GX新技術獲得の強化
2030年度以降に市場拡大が見込まれている「燃料転換」や「直流配電」、「CO2分離回収」、「次世代パワー半導体デバイス」など、当社にとって新領域となる分野においては、世界最先端の技術を有する研究機関との共同研究などを通じて、GX新技術獲得の強化をしています。
AEM(アニオン交換膜)型水電解水素生成技術
水素への燃料転換に向けた水素製造技術の獲得を目指して、NEDOのプロジェクト「水素利用拡大に向けた共通基盤強化のための研究開発事業」に参画し、「アニオン膜型水電解セルの高性能化・高耐久化とスタック技術の開発」に取り組んでいます。この研究では水素利用技術の分野で世界最先端の技術を有する山梨大学が中心となり、水素製造の高効率化と低コスト化の両立を狙いとしています。この中で当社が担当している「水電解セルの構築とスタック化の検討」では、これまでに小型セルを10層積層したスタックにて、AEM型として業界最高水準の電解効率を達成しています。
縦型GaN(窒化ガリウム)MOSFET
次世代のスイッチングデバイスとして期待されているGaNの研究では、この分野で世界最高レベルの技術を保有し、文部科学省のプロジェクトを牽引する名古屋大学と連携して、縦型GaNパワーデバイスの基礎技術を研究しています。これまでに独自のAlGaN層を導入したMOSゲート構造を考案し、電子移動度を約3倍に向上したことで、縦型GaN MOSFETの実用化に向けて大きく前進しました。さらに、つくばパワーエレクトロニクスコンステレーションとの共同研究では、イオン注入で構造形成した縦型GaNとして、世界初となる耐圧1200V級で電流10Aの大面積素子を実現しています。
研究開発のTOPICS
次世代電源システムの要となる絶縁型DC/DCコンバータで業界トップレベルの変換効率を達成
再生可能エネルギーとして普及が進む太陽電池や、その出力変動を補償する蓄電池、あるいは水素を製造する水電解装置、水素などを燃料として発電する燃料電池など、脱炭素化を担う機器の多くは直流電力で動作することから、これらを効率的に運用する直流バスシステムの実用化が期待されています。
当社は、直流バスシステムの要となる絶縁型DC/DCコンバータを開発しています。蓄電池との接続に必要な双方向の電力変換をおこなうデュアルアクティブブリッジ回路を採用し、自社製のSiCモジュールと独自の制御技術を適用した容量200kWのプロトタイプにおいて、定格条件での変換効率として業界トップレベルの98.0%以上を達成しました。さらに許容電圧範囲がDC400V~800Vと幅広いので多くの電源や負荷を制約なく接続できます。また、接続する蓄電池の過充電や過放電を防ぎながら直流バスの電圧を一定に保持する制御技術も開発しています。これらの技術を磨き上げて、データセンター向けなどの高効率な次世代電源システムの実現を目指しています。
知的財産活動の取り組み
当社は、知的財産を重要な経営資源と位置付け、知的財産方針の下、知的財産権の戦略的な獲得と活用を通じて製品の競争優位性を確保するとともに、グローバル市場で遵守が求められる国際標準への対応を進めています。中長期的には、成長分野の事業や製品を対象とした知的財産活動および国際標準化活動を強化するほか、新製品創出に向けた市場分析力向上を目指し、知的財産分析を活用しています。
知的財産の分析による知財戦略の立案と実行
事業ごとの知的財産ポートフォリオの強化とリスクの低減
戦略的国際標準化活動の強化
研究開発戦略と連動した知的財産強化
当社は自社が保有する知的財産権を、事業ごとの知的財産ポートフォリオ(技術や保有年数の観点で整理した知的財産)として構築・運用しており、事業環境に応じて強化・維持・放棄などのメンテナンスを継続的に行っています。知的財産強化として、研究開発戦略と連動した活動を行っており、成長領域および新領域において、戦略的強化や迅速な特許網構築を行っています。
成長領域における戦略的強化
成長領域には、GX(エネマネ、モビリティ、パワー半導体)やDX、グローバルの商材が位置づけられており、それぞれ知的財産強化を進めています。例えばパワー半導体においては、競争環境を踏まえた知的財産強化を長年に渡り実施しています。その成果として、特許の『質』を表す特許価値(PAI)、『量』を表す特許ファミリー数の両面において、2025年には世界の競合他社をリードする実績を築いています。
レクシスネクシス社「LexisNexis® PatentSight+」を用い富士電機にて作成。PAI(Patent Asset Index):LexisNexis® PatentSight+により算出した特許価値
新領域における迅速な特許網構築
新領域には、2030年度以降の市場拡大を見据えた燃料転換や熱の電化に関する新製品が位置づけられており、新しい技術を着実に知的財産権として確保することが重要です。これに向け、新領域における発明提案の全体目標数を2023年度比で2026年度に3倍へと拡大する計画を策定しました。実績として2025年度末時点で既に2.7倍に達し、計画以上のペースで進捗しています。
さらに、重点商材に対しては、迅速な特許網構築を図っています。例えばエジェクタ冷却機では、2024年度までに抽出した多くの発明提案を、発売開始(2026年6月)に向け短期間で出願から権利化まで完了させるなど、事業戦略と密接に連動した活動を行いました。この活動においては知的財産の包括的な取得を支援する「事業戦略対応まとめ審査」制度を戦略的に活用しています。
戦略的な国際標準化活動(事例:セキュリティ認証取得)
当社は、全社レベルで国際標準化活動を統括・牽引するガバナンス体制として「国際標準化委員会」を設置し、規格や規制の動向を先んじて捉え、事業競争力を高めるためのルールメイキングや認証取得を推進しています。
各拠点における認証取得 — 近年、制御システムへのサイバー攻撃急増に伴い、グローバル市場での法規制厳格化や顧客によるサプライチェーンのセキュリティ要件義務化が進む中、セキュリティ認証の取得はビジネスの必須要件となっています。当社は同委員会のもとで、工場単位での取得について2022年より戦略的な取り組みを開始し、2026年度現在、関係会社を含む多くの拠点で国際規格「IEC 62443-4-1」の認証取得を完了しています。
| 拠点 | 取得年度 |
|---|---|
| 東京工場 | 2023年度、2026年度更新 |
| 鈴鹿工場 | 2023年度 |
| 神戸工場 | 2024年度 |
| 富士電機機器制御(株)(吹上工場、大田原工場、ほか) | 2024年度 |
| 発紘電機(株)(電子工場) | 2024年度 |
| 筑波工場 | 2026年度 |
国内認証機関の活用、CBスキームの活用 — 2026年4月の東京工場での更新と筑波工場での新規取得においては、新しく国内認証機関(JQA:一般財団法人日本品質保証機構)を活用し、国際的な相互承認制度CBスキームに基づいて認証を取得しています。JQAを活用したことで、取得の迅速化やコスト削減、および機微情報の国内保持が実現しました。また、CBスキームに基づいて取得したことにより、海外展開時における現地での実機試験が免除または大幅に簡略化され、グローバル展開を加速させる大きなアドバンテージを獲得しました。
※ IECの国際制度に基づき、製品の試験結果を世界50カ国以上の加盟国間で相互に認め合う仕組み
