株主・投資家情報
富士電機レポート2026/統合報告書/事業を支える横ぐし戦略/ものつくり・調達
ものつくり・調達
「デジタル化・AI技術の活用による生産性の向上とサプライチェーンの強靭化」
当社は、「強い現場力と高度な生産技術力」、「グローバルでの最適生産連携」、「技術・技能者の育成による人財力・チーム力」をものつくりの強みとし、生産性向上による利益拡大を進めてきました。昨今の地政学リスクやコスト高騰、労働力不足、気候変動といった外部環境の変化を、私たちはデジタル化・AI技術を活用した「ものつくりDX」による変革の好機ととらえています。素材・部品については、調達サプライチェーンのマルチ化や国内生産回帰によるレジリエンス強化、代替素材開発や資源循環型設計への転換を加速させ、安定的な調達体制の構築とコストダウンを目指しています。
また、お取引先様との共存共栄を基本とした「持続可能な調達」の実践も経営の最重要課題の一つです。当社のCSR調達ガイドラインに基づく人権・環境への配慮をサプライチェーン全体で徹底し、社会的責任を果たしながらともに成長できる強固な信頼関係を築いていきます。
今後もデジタル化・AI技術を活用した更なる生産性向上と強靭な調達基盤を両輪に、品質向上と収益力向上、そして環境負荷低減を実現し、持続的な企業価値向上を目指します。
富士電機のものつくりの強み
強い現場力と
高度な生産技術力
グローバルでの
最適生産連携
技術・技能者の育成による
人財力・チーム力
ものつくりでの取り組み
環境変化に対応するものつくりの進化
製品ライフサイクルを管理するPLM(Product Lifecycle Management)と、サプライチェーンを管理するSCM(Supply Chain Management)のデジタル連携により、開発から生産までのプロセスを最適化する「つながるスマートファクトリー」を構築します。さらに人とAIの協創による自動化技術を部品加工や組立工程に導入し、製品供給能力を増強するとともに、生産性向上、原価低減、品質向上を目指します。
PLM改革とSCM連携によるコンカレント開発
PLM改革とSCM連携によるコンカレント開発は、設計の初期段階からものつくりの現場知見を入れ、PLMシステムで3Dモデルを共有しAIが解析します。製造部門は「作りやすさ」を、調達部門は「部品の入手性」を仮想上で検証することができ、作業工程の最適化、下流工程からの手戻り工数の大幅な削減により、開発期間の短縮を実現します。また、設計と製造のデータを連携させ、設計変更が直ちに調達・生産計画に反映される仕組みを構築することで、情報の整合性が高まり、管理業務のムダが排除され、間接部門の生産性が向上します。これらの取り組みは、業務効率向上に加え、製品の品質・コスト・納期全体の最適化を自動的に促す仕組みとして機能させていきます。
生産技術の高度化による生産性向上(AI活用)
当社では、生産技術の高度化による生産能力増強、タイムリーな設備投資の実行、グローバル生産体制の強化を推進しています。2025年度は、AIの活用により、設備の故障を事前に察知する予兆保全や外観目視検査の自動化などにより、設備稼働率、生産物量を高めています。
生成AIの活用では、熟練工の暗黙知をデジタル化し、「AIアシスタント」機能を活用した自動補正により自動化を実現しています。将来的にはフィジカルAIを活用した知能的なロボットを設備に実装し、不定形物のピッキングや複雑な組立の自動化を実現します。
これらにより、2026年度には2023年度比で120%の生産性向上を実現し、生産物量増、労働力不足への対応を図っていきます。さらに将来的には、現実空間の情報・データを仮想空間で再現し、AIを活用したシミュレーション・検証結果を現実空間へフィードバックする「デジタルツイン」により、自律同期化した止まらない生産現場の実現に挑戦します。
熟練・難作業をCADデータやAIを活用し自動化
神戸工場:盤装置の筐体のスタッドボルトの溶接をロボットにより自動化。AIが熟練工の暗黙知を学習し、従来プログラミングが困難だった職人技を再現
品質向上に向けた取り組み
品質については、毎年「高信頼性活動方針」を策定し、各事業部門および工場に展開して、改善活動を推進しています。開発・設計段階での製品完成度を向上させるため、工場や開発部門の保有技術に対し、新技術の獲得計画をデザインレビューに組み入れて推進しています。また、設計時に生じる変化・変更点に着目し、検討や検証の見落としを抽出するために、有識者によるレビューに加え、生成AI技術を活用して品質リスクの低減に取り組んでいます。
工程品質では、製造プロセスの管理状況について、各工場での品質内部監査を進めています。これに加え、他工場の有識者による相互診断を実施し、得られた結果や気づきを仕組みやルールに反映させ、品質管理水準の向上を図っています。
持続可能な調達
サプライチェーン上のリスクを特定・評価・対策することで、中長期的に安定した部材調達およびCSR調達を目指しています。
CSR調達の取り組み
当社は、お取引先様との共存共栄を基本方針とし、「富士電機CSR調達ガイドライン」に基づき、CSRに関する考え方や遵守・実践すべき取り組みについて理解促進を図っています。これにより、サプライチェーン全体のCSRリスクの低減と事業機会の創出を目指します。
1. 人権・労働
2. 安全衛生
3. 環境
4. 公正取引・倫理
5. 品質・安全性
6. 情報セキュリティ
7. 事業継続計画
8. 管理体制の構築
9. 社会貢献
CSR調達セルフアセスメント
お取引先様のCSRに関する取り組みや改善状況を把握するため、毎年CSRセルフアセスメントを実施しています。また、説明会や面談を通じてお取引先様の課題を共有し、協働での改善活動を推進しています。
2025年度は、直近3年間の購入額の上位80%を構成する893社に対してアセスメントを実施しました。ランクAのお取引先様は前年比25社増の807社となり、成果が向上しています。2026年度は900社を対象に実施予定であり、課題の共有と協働改善を通じてサプライチェーンにおけるCSRの浸透と強化を継続します。
CSRセルフアセスメント結果推移
(社)| ランク | 定義 |
|---|---|
| A | 社会的責任を組織として認識し、具体的に対策 |
| B | 社会的責任を組織として認識し、施策を考慮 |
| C | 社会的責任を組織として認識している |
| D | 社会的責任を組織として認識し、改善いただきたい |
CSR実地監査の取り組み
CSR調達の実効性を高めるため、お取引先様へのCSR実地監査を実施しています。2025年度は、Aランク評価のお取引先様の中から環境項目に課題のある24社を選定し、実地監査を実施しました。監査では、CSR活動の重要性理解や実際の活動状況を確認し、評価基準や改善方法のすり合わせ、課題共有を行いました。実地監査の拡大に向けた当社の監査員の養成も進めており、2025年度は13名増員し合計32名体制となりました。2026年度は実地監査対象のお取引先様の拡大と当社監査員の更なる増員を計画し、お取引先様との直接的なコミュニケーションを強化していきます。
安定調達による事業継続への貢献
有事に備えた複数社購買の取り組み
継続発注する20万点の部材についてリスク評価を実施し、シングルソース品を可視化のうえマルチソース化を推進しています。2025年度は約90%(対前年度+5ポイント)の調達対象品目のマルチソース化を達成しました。2026年度はマルチソース化率95%を目標とし、複数社購買体制の完成を目指します。
| ランク | 定義 |
|---|---|
| A(リスク低) | マルチソース化済(発注済) |
| B | マルチソース化の準備完了(発注可能) |
| C | 部材評価完了 |
| D | 候補選定済/未評価 |
| E(リスク高) | 顧客指定・代替なし・廃型・代替不明 |
自然災害および地政学リスクへの対応
当社は、国内の地震・気象の特別警戒地域に所在するお取引先様を特定できる防災システムを活用し、被災の有無と当社への影響を迅速に把握し、早期の対策を可能とする体制を構築しています。この国内防災システムへの登録範囲を二次お取引先様まで拡大しており、2025年度の登録数は約13,000拠点です。
海外での災害発生対応のため、2025年度に新たな防災システムを導入し、約200拠点を登録しました。2026年度は登録範囲を二次お取引先様まで拡大し、グローバルでのBCP強化、および、有事対応の迅速化と事前のリスク対策強化を目指します。
取適法および受託中小企業振興法(振興基準)の遵守
調達活動に関わる重要な法令である取適法(中小受託取引適正化法、下請法改正により2026年1月1日施行)の遵守状況を、毎月厳しく監視しています。当社および国内連結子会社の検収データに基づき、取引における遵法状況を確認しています。また、連結全従業員を対象としたeラーニングを実施し、法令の趣旨の理解と遵守を徹底しています。
お取引先様との新たなパートナーシップの構築を目指し、「パートナーシップ構築宣言」を2026年1月に内容更新しました。本宣言のもと、受託中小企業振興法の遵守を徹底し、公正で透明性の高い取引を推進します。
※ 取適法:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(略称:中小受託取引適正化法)
調達情報のデジタル連携
お取引先様との調達情報をデジタル連携することで、調達リードタイムの短縮による棚卸残高圧縮、物量変動への柔軟な対応を実現し、生産工程に影響を与えない安定調達と業務効率向上を目指します。
2025年度は、主要なお取引先様10社を対象に運用を開始しました。お取引先様からは「優先品目の早期把握により業務効率が向上した」との声が寄せられています。今後は、デジタル連携を行うお取引先様を拡大し、双方の業務効率化と安定調達を推進します。
